Mythic Dawnの正体を探っていたBaurusと帝都で合流し、湖の側にある教団の神殿の場所を突き止めた私は単身乗り込んで、鍵となるMysterium Xarxesを入手したが、アミュレットの奪還には失敗し、所持していた装備品の殆どを回収不能にしてしまうという手痛いミスをやらかしてしまった。
大した武器防具は持っていなかったのが幸いだったけど、やっと貯めた少ない所持金までガッポリ失ってしまったのでガックリしてしまった。
あーあ、こんなだから私は鈍くさいとかアフォかっておじさんたちにからかわれていたんだろうなあー。
暁のローブ姿のままだったので、周囲の目を引かない様にこそこそと寺院に戻った。
教団のローブをずっと着ているわけにはいかないので、何か別のに着替えないと。
そういえばジョフレが武器庫にある装備品を自由に使っていいと言っていたわね。
借りとこう、ブレードの鎧なら防御力もあるし、重装備の割りに動きやすい。
私は鎧一式をお借りした。
武器も、と刀に手を伸ばしかけたけど、借りない事にした。
攻撃は最大の防御っていうし、慣れない長剣類を無理に使うよりダガーで通したい。
お金を調達して後でBrumaに行ってダガーを買ってこよう。
[0回]
寺院の広間に戻ると、私の帰還に気付いたマーティンが声をかけてきた。
「おかえり!友よ、無事でよかった。王のアミュレットは取り戻せたかな」
マーティンは明るい声で迎えてくれたが、どこか無理をして元気に振舞っている感じがした。
「ごめんなさい、取り戻せなかったの。Camoranが持ったまま消えてしまって。でも代わりにこれを手に入れたわ」
Mysterium Xarxesを渡すとマーティンはいきなり大きな奇声を上げたので私はびっくりした。
「っと、驚かしてすまなかったね。あまりに凄いお土産だったから嬉しくてつい・・・これがあればこちらにも勝算が出てくるだろう。おや、ブレードの鎧に着替えたのか。鉄鎧より似合っているよ」
「ありがとう」
「武器はどうしたんだい?他のブレードたちはみんな刀を持っているが」
私は刀の扱いは慣れてないので後で街に言ってダガーを入手してくると話した。
「ダガーか、それだったらいいのがあるよ」
マーティンは椅子から立ち上がった。
「私についてきてくれ」
どこに行くのだろうと付いて行くと彼は寝室に入っていった。
「待ってて、確かこの辺りに・・・」
ベッドの下に手を入れてゴソゴソ探っていたマーティンは何かを取り出しベッドの上に置いた。
それは今まで見たことがない形の刃を持つダガーだった。
「な、何これ?なぜこんな物がここにあるの?」
私がびっくりして訪ねると、マーティンは首を傾げて答えた。
「さあね、私にもわからないんだよ。昨夜寝る前にベッドの下を確認していたらこれが出てきたんだ。護身用かと思ったんだが、それにしては重すぎる短剣だったから怖くなって戻したんだ。私に使いこなせるとは思えないから君が使ってくれないか」
「貰っていいの?護身用なら側に置いていた方が・・・」
と謙遜しつつも、そのダガーに私は一目惚れしてしまった。
Daedricダガーよりも強そうでかっこよかったし、ダガーマニア(Skingradの家でダガーコレクションを飾っていたぐらい)の私としては欲しくなる珍しい品だった。
「いいよ。元々所持していたのがあるし、寺院内で武器を私が使うことはないだろう。使い易いかどうかはわからないが、何も持たないよりはマシだろう?君さえ良ければ受け取ってくれ」
「ありがとう、それじゃお借りします」
手に持つと、ずっしり重量感があった。
眺め回すと刃がキラッと綺麗に輝いた。
これすごい!どんな敵でもこれがあればITIKOROじゃないかしらっ。
今までずっと憂鬱だった気分が新しいダガーを手にしたことで晴れてウキウキしてきた。
「戻るのはちょっと待って!」
礼を言って私が部屋を出ようとした時、マーティンが引き止めた。
「何かしら」
「君の事でずっと気になっていたことがあってね」
「君と最初に会った時、私の顔を見てすごく驚いていたのはなぜなんだ?皇子と聞いて若いと思っていたのが実際は老けた男だったのでショックを受けたのか?」
「そ、そんなことで驚いてはいないわ!誤解させたのならごめんなさい。マーティンがおじさんだという事は私知っていたのよ」
「・・・知っていた?」
マーティンはふうむ、と唸った。
「ではもう一つの質問も答えてくれるかな。君はなぜ私に対して初めから親しく接することが出来た?相手が年上でしかも皇子だと知っているのなら普通は恐縮して親しく話すことなど出来ないと思うんだが」
も、もしかして礼儀知らずだって怒られてるのかしら。
急いで私は謝った。
「きゃーごめんなさい!そうよね、マーティンは皇帝になる人なんだから私も礼儀をわきまえないといけないのよね、慣れ慣れしくって申し訳ありません殿下><」
マーティンは手を振って違うよ、と言った。
「いや、怒っているわけじゃないんだ。余所余所しくされるよりは親しく接してもらった方が私も安心できる。だが、君の振る舞いはまるで昔から私を良く知っている親しい友人の様な雰囲気があるからなぜなんだろう、と。過去に君と会った記憶はないんだが・・・」
「私は会ったことはあるけど、貴方は私に会った事はないわ。Kvacthで会ったのが初めてよ」
「どういうことなんだ?私にはわからない、良かったら話してくれないか」
言っても理解してもらえないだろうけど、と言葉を付け加えて私は話し出した。
「私、マーティンのこと知ってる。でも私が知っているマーティンと貴方は同じだけど同じじゃないの。マーティンは、家事が大好きで、洗濯物を干すのが楽しみで、いつも友人をブレード達と総出でおちょくっていたわ」
マーティンは案の定私の話を聞いて苦笑いしていた。
「洗濯物だって?私は家事は苦手だからいつも人任せだよ。それに大事な友人をおちょくるなんて考えたこともない。しかもブレード達と一緒にだって?ははは、とんでもない私だな。君が知っているそのマーティンと私はどう考えても別人だよ」
「ある程度先のこともわかるのよ。Kvacthの様にBrumaもDaedraの攻撃を受けるわ。そこで私はBurdと一緒にゲートを閉じて、それがきっかけで彼もブレードに・・・」
マーティンはBurdって誰だい?と返してきた。
Brumaガードキャプテンよ、とだけ答えたが、Burdをおちょくることを生きがいにしているようなマーティンとそんな彼と友達のように接していたBurdを知っている私は、その言葉ですごく複雑な気持ちになった。
「きっと君は予知能力があるんだね。だから先のことがわかる。私のこともその延長で知っていたから、初対面から親しく接してしまったのだろう」
マーティンはやっぱり信じてくれなかった。
こんな話、すぐ信じてくれる方が無理があるけど。
「そういえばジョフレが君にスパイのことで頼みがあると言っていた。ずっと部屋に篭って他のブレードに誤解させても大変だから広間に戻ろう。今の話は他の人には話さないようにな」
あーあ・・・・。
変な女だときっと思われたわ。
これは全部夢じゃないか、とはさすがにマーティンに向かって言えなかった。
そんな言葉は、私以外の存在をすべて否定してしまう事になるのだから。
PR