外に出ると、庭の端の方にブレードが集まっていた。
その集団の中にBurdの姿があった。
いつもの黄色い髪のBurdだった。
「貴公!やっと起きてきましたな!ほら早くこっちに来て来て!」
Burdが焦った様子で私を呼んだ。
私は皆の側に駆け寄った。
ジョフレやBaurusも、まるで何事もなかったかのようにそこにいた。
「・・・ど、どうしたの?さっき殿下が大変って言ってたみたいだけど」
皆と再会出来たのが嬉しくて涙が出そうだったのをぐっとこらえながら尋ねた。
「あれ、あたしさっき大変って言いました?まあ大変でも変でも殿下にとっちゃあまり変わりませんが。とにかく殿下の暴走を貴公の力で止めて下さいよ」
そう言ってBurdはマーティンを見た。
目で追うと、変な構えをしたまま微動だにしないマーティンがいた。
「まーくんは何をしてるの?」
私が聞くと、Burdは困った様子で言った。
「寺院の日照権を奪った浮遊塔を倒すために殿下ご自身が犠牲になって戦うおつもりらしいですよ。Akatoshフユージョンを発動するとかワケわからないことをのたまいだしたのでどうしたらいいのかと」
「Akatosh・・・」
帝都でAkatoshの化身となってDagonと戦い、果ててしまったマーティンの姿が脳裏に浮かんだ。
まさか、あの時と同じ事をしようとしてるの!?
[2回]
「まーくん」
「おお、友か、おはようさん。Burdからすでに聞いたと思うが、私は寺院を守るためにAkatoshフユージョンを発動することになった」
「な、なぜ?発動させてどうするつもりなの?」
「私はAkatoshの神の力を借り、奪われた洗濯物たちを取り戻す。そしてこの浮遊塔を撃破して日照権をこの大地に再び取り戻さなければならん!」
「ちょっと殿下、洗濯物は奪われてないでしょ?被害妄想と現実がごっちゃになってませんか?」
私の後ろからBurdがツッコミを入れたが、マーティンの耳には届いていなかった。
「さらばだ、友よ。洗濯物が私を呼んでいる」
これって、あの時の状況とそっくりだわ。
私は全身から血の気が引いていった。
「だめよ!!まーくん、早まらないでえっ!!うわああん!」
「おっと、こらこら離しなさい」
マーティンを止めなければ!と私は抱きついたまま離さなかった。
「竜になるとか、そんなの絶対私が許さないからー!>Д<。」
「離してくれ友よ!私は行かねばならんのだ!」
「だめったらだめえー!!絶対離ざないー!>皿<。」
「ううむ、起きて来たばかりだというのに即、状況を把握し空気を読んで、殿下を必死で止めようとするこの姿勢・・・さすが貴公ならではですな」
BurdはMiariがワアワア泣いてまでマーティンを止めようとしているので感心してしまった。
「フ・・・これでドラマティックなクライマックス度が168%にアップしちまった・・・さすが陛下とご友人・・・恐れ入ったぜ」
「うむ、Baurusよ。こんなノリノリな陛下たちを我々はそう見れるものではない。記念によく目に焼き付けておけ」
背後でブレードたちが生暖かい目で見守っているのもつゆ知らず、Miariはマーティンを失いたくない一心で必死になって引き止めていた。
「友よ、赦してくれ。私は守らねばならん大切な洗濯物があるのだ。ほら、離さないか、くすぐったいぞ、ははは(^^」
「洗濯物と私とどっちが大事なのよ!まーくんのぱかー!!>皿<」
「私が行動しなければ、この浮遊塔の脅威を消すことは出来ん!年中陰干しされることになる洗濯物の気持ちを考えたことがあるか!?黒い服はもちろん陰干しの方がいいんだが」
「もう!まーくんたらどうしてそんなに天日干しにこだわるの!?わかったわよ!浮遊塔が邪魔だったら私が別のトコに動かしてくるから、そこで待ってて!!」
周囲にはただのぱかっぷるな痴話喧嘩にしか聞こえない口論を中断させ、Miariは寺院の階段を駆け下りていった。
「やれやれ、何だかよくわかりませんが、貴公のおかげで殿下の暴走は止められそうですな・・・と」
Burdは足元に自分のガード服が落ちているのに気付いた。
Miariが持っていたが、マーティンの変な様子に動揺して思わず手から落としたらしい。
しかし、Miariは寺院の中から出てきたはずなのに、いつ外へ行って拾って来てくれたのだろう。
拾い上げて服を確かめると、確かに自分のガード服だった。
「ああ、無事に戻ってきてよかった。放り投げられた時はどうなるかと思いましたよ」
Burdはほっとして安堵の笑みを浮かべた。
「おや、どうして黄色ミサイルがそこにあるのだ?外に飛ばしたはずなのに」
マーティンが近寄って来て不思議そうに眺めた。
「ご友人が気付いて取って来てくれたんでしょう。いやあ、いろいろ彼女には面倒かけてしまいますなあ。このガード服は一度壊れたんですが、あれが修復してくれたお陰で前より丈夫になったので重宝してるんですよ」
「なにぃ?友が愛情こめて繕った大事なガード服だと!?」
マーティンはあからさまにむっとした。
「ははーん、嫉妬とはみっともないですな殿下( ̄ー ̄)」
Burdはニヤニヤしながらマーティンをからかった。
「嫉妬ではない。ただ、友の愛情がこもった物をお前が持っているのが許せんだけだ」
「それを嫉妬というんですよ殿下」
「ううむ、だからその服をお前は大事にしていたのだな?それをよこせ、次は寺院の外などではなく、Anvil沖まで飛ばしてやる!」
マーティンは手を出して服を奪おうとした。
「何言ってんですか!だめですよ!もう二度と殿下のおもちゃにはさせませんからな!!」
二人が言い合っていると、ぱあっと光が差し込んできた。
空を見上げると、さっきまで空を覆っていた浮遊塔がなくなっていた。
「おおっ、空が見えるようになりましたぞ!」
「さすが友だ、あれを動かせるとは・・・Akatosh神拳の出番は今回はお預けだな」
西側を見ると、上空にあった塔がそちらに移動していた。
遠くに移動したことで、塔の上部が見えていた。
「こりゃ壮観ですなあ、しかしあれはなんだったんですかね」
「さあな、私にはわからん。友がどこかから持ってきたんだろうから本人に聞いてくれ」
「なるほど、ご友人がどこかから持ってきて・・・って、え?」
Burdはマーティンの言葉にはっとした。
「殿下、まさか最初からあの塔はご友人の仕業だと気付いていたんですか!?」
「知っているも何も、こんなことをするのは友しかいないではないか。恐らく友は私達をびっくりさせたくて、昨夜ここへ帰ってきた時に寺院の上空に置いていたのだろう。せっかくだから私もノリ良くびっくりしてあげないとな(^^」
日頃からノリの良さこそ我が命だと公言していたマーティンの言葉を思い出し、ここでようやくBurdは自分がおちょくられていたことを完全自覚したのであった。
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