Sheogorathはヨッコラセ、と椅子から立ち上がり私の前に来た。
「ほっほ、死に顔よりも、生気のある顔のがやはりいいのう」
Sheogorathと私は直接会ったことはなかったが、目の前にいる人物がSheogorathだというのがすぐわかったのは身体に憑り移られた経験の影響だろうか。
私がSheogorathに身体を乗っ取られていた時の出来事はすべてマーティンから聞かされていた。
でもなぜここに突然Sheogorathが現れたのかわからずぼーっとしていると、Sheogorathは呆れた顔をして言った。
[0回]
「呆けた顔しとるの。ワシの予言が外れた副作用でも出とるのか?」
「・・・予言?」
そうだ。
Sheogorathは私の死を予言していた、とマーティンは言っていた。
私だけじゃなく、マーティンの側にいる者すべてが破滅への道を辿る、と。
Sheogorathは急に悔しそうな顔になり怒り出した。
「ワシは見たんじゃよ、先々プリンスの部下やお前に破滅が訪れるのを。それでお前だけでも救おうと迎えに来たが、失敗してしまった。放っておけば破滅するじゃろと見ていたが、なんでかどうしてか、だーれも破滅へ向かう気配がまったくありゃせん!ワシはそこで気付いた。誰か知らんが大バカ者が勝手にお前達の運命を変えおったと!」
立ち去った後もSheogorathは私達を見ていた。
自分の予言どおりに皆が破滅するのを見届けるために・・・。
「おかげでワシはただのホラ吹き爺じゃ、ボケ爺じゃなどと、他の神どものいい笑い者じゃ!予言を的中させるにはどうしたらよい?そうじゃ、間違っておる道を正せばいいんじゃ。あるべき本来の世界へお前を放り込めばワシの予言は必ず成就される!」
Sheogorathの口は止まることなく次々と捲し立ててくる。
「すべて順調じゃった。プリンスの周りにいた者は死んでプリンスも死んだ。だが、最後の最後でお前は死なず予言は外れた。なぜこんな番狂わせが起きた?幸せの黄色いガード服のせいか?それともプリンスのお前を助けるとかなんとかの戯言がお前を救ったのか?」
ブツブツ文句を垂れ、お前はプリンスを失った悲しみから幻覚を見て、最後自害して果てるはずじゃったのに、とSheogorathは忌々しそうに言った。
「あの・・・ここは夢の中なの?夢の中で私が死ななかったから貴方が現れたの?」
聞きたいことは山ほどあったけれど、先に口に出た質問はそれだった。
「何を言うとる、これが夢の世界じゃと?ここも狸がおる世界も現実じゃぞ」
Sheogorathは目を丸くして答えた。
「じゃが、夢にしてしまってもかまわん。この世界はもうお前を必要としてはおらんからの。さあ、爺と元の世界へとっとと帰るぞい」
「か、帰れるの!?貴方は私が生きて予言が外れたから怒っていたんじゃないの?」
Sheogorathは、ニヤリと笑った。
「人間や地族どもには関心はないが、運命を変える力があるオナゴには爺は優しいんじゃよ。それともプリンスが無駄死にしおった世界などにお前は残りたいのかの?」
え?無駄死にって・・・?
「マーティンは世界を救うために犠牲になったんでしょう?無駄になんかなってないわ。Mythic DawnもDagonも消えて世界は平和になったじゃない」
わかっとらんのーとSheogorathはブツブツ言った。
「どの世界でも、世界を支配したがる愚か者がおり、そやつが消えても、またすぐ次の愚か者が現れ、支配しようとする。この世界は特に顕著に良く現れておるようじゃ。まあもう良いではないか。いずれこの世界は破滅するんじゃ。ほれ、もう帰る時間が迫っておるぞ」
Sheogorathは嬉しそうにニコニコしている。
私はその意味を知りたくて尋ねようとしたが、声が出なかった。
辺りの景色が急におかしくなり、奇妙な空間へと変化していった。
世界が消えていく・・・?
周囲が光に包まれ、薄れていく意識の中で、Sheogorathの言葉が頭の中に響いてきた。
・・・お前はプリンスと共に生きる道を選ぶ事が出来た。その道の先に何があるのかはもはやワシにもわからん・・・いずれ機会があればまた会おうぞ・・・
気が付くと、ベッドの上だった。
体を起こし、目を擦って辺りを見回した。
ここ、まーくんの部屋だわ。
立ち上がってベッドを見ると、そこにはBurdのガード服が置いてあった。
あれ?
これって・・・。
服を手に取った時、出し抜けに外から声が聞こえた。
「貴公!・・・っ!殿下が・・・変ですぞーっ!!」
Burdの声だわ!私を呼んでいる・・・!
戻れたんだわ!まーくんやBurdがいる世界に!!
・・・って、今、殿下が大変って言ってた?
まーくんに何かあったら、大変だわ、行かなきゃ!!
私は慌てて部屋を飛び出した。
PR