拾い上げたダガーを、ぐっと握り締めた。
今となっては、マーティンの形見になってしまった、お気に入りのダガー。
最後にこれで、自分の命を絶ってしまうことになるなんて考えもしなかった。
ごめんなさい、マーティン。
諦めるなって、必ず戻る方法はあるって言ってくれたけど、元の世界に私は戻れなかった。
だから・・・マーティンの側に逝かせて下さい。
ダガーを逆手に持ち握り締めた手をゆっくりと上げ、刃先を自分の咽喉元に向けた。
[0回]
目を閉じて、腕を引こうとした時だった。
バシッ!「きゃっ!」
何かが手に当たり、持っていたダガーが弾き飛ばされ、カシャン!と音を立てて床に転がった。
何が起きたのかわからないまま床を見ると、そこにはダガーと黄色い服が落ちていた。
・・・見覚えがある服だった。
これは、Brumaガードの服?
しゃがみこんで、それを拾い上げた。
どうしてこれがこんな場所に?
いったいどこから落ちてきたの?
不思議に思いながら服を眺めていて、はっとした。
こ、これ、Burdの服だわ!
それもこの世界のBurdではなく、前の世界のBurdのガード服だった。
以前Burdのガード服が壊れた時、私が修復したので、その修理痕でBurdの服だとわかったのだ。
我に返り、服を抱えて辺りを見回すと、今までいたマーティンのゴーストが消えてしまっていた。
このガード服があるということは、マーティンもBurdも、私が知っているあの世界は夢じゃないんだわ。
彼らがどこかにいるのなら、私はこんなところで死ぬワケにはいかない。
生きて、皆のところに戻りたい!
「なんじゃ、死なんのか?つまらんの」
「!?」
驚いて振り向くと、さっきまで誰もいなかったはずの長椅子に老人が座っていて、私を見ていた。
「あ、貴方は・・・Sheogorath!?」
「お嬢ちゃん、ワシを憶えてくれとったんじゃな」
その老人・・・いや、Sheogorathはひょひょひょと嬉しそうに笑い声を上げた。
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