Bruma防衛戦の勝利で、Camoranの領域、パラダイスへ入る鍵は揃った。
マーティンはパラダイスへの扉を開く為の儀式を始める準備をしていた。
Great Welkynd StoneとGreat Sigil Stoneを広間に描かれた魔法陣の上にセットし、後はパラダイスへ入る人物が来るだけだった。
しかし来るはずのMiariはいつまでたっても現れない。
ゆっくりしている時間はないんだが・・・とマーティンは呟き、側にいたブレードにMiariの居所を知らないか尋ねた。
ブレードは心配そうな顔で答えた。
「あの方でしたら、泣きながら地下の武器庫に入って行くのを先ほど見ましたが」
「地下室か、ありがとう」
Bruma防衛で勝利したというのに、Miariはすっかり元気を無くし、酷く憔悴していた。
マーティンにとってはなぜそんなにガードキャプテンの死を彼女が悲しむのか理由がわからなかった。
それほど親しい関係でもなかったはずなのに。
だが、Miariの消沈ぶりは、親しい人を失ったのと同じぐらい酷かった。
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マーティンはMiariを探して、地下室へ降りた。
静かな武器庫の奥の方からすすり泣く声が聞こえてきた。
「友よ、そこにいるのか?」
マーティンが声をかけると一瞬声が止まった。
しばらく静かになったが、すぐにこらえきれなくなったらしく、嗚咽が漏れ、すすり泣きが聞こえてきた。
マーティンは近寄って、言い難そうに声をかけた。
「友よ、こんな事をいうのは辛いんだが、今は泣いている時間はないんだ。急がなければ、大変なことになるのはわかるだろう?」
Miariは声を震わせながらうわ言の様に言った。
「どうして・・・どうして覚めないの・・・うう・・・ぐすっ・・・」
「・・・?」
「もうやだ、こんな夢・・・うう、Burdが死ぬなんて、やだやだ、早く覚めてよう・・・」
「夢だって?何を君は言っているんだ、ほら、こっちを向きなさい」
Miariは嗚咽を漏らしながら言った。
「夢よ・・・夢なのよ。こんなこと・・・皆が死ぬなんて嘘よ・・・早く覚めてよう・・・」
「私も夢だと思いたいさ。だが、これは現実なんだ。彼らは戦う為に居たのだからこうなることは覚悟していただろう」
「・・・現実?」
Miariは顔を上げてマーティンを見た。
「これが現実?そんなワケない。現実なら私が知っているマーティンやBurdやHassildor伯爵はなんだったって言うの?ネコミミさんやおしゃべりなスケルたん先生は?私が出会った人たちは皆夢だったとでもいうの?」
Miariの捲し立てる言葉はマーティンにはどうしても理解できなかった。
きっとBruma防衛でのショックが大きすぎて頭が混乱しているのだろうとマーティンは考えた。
「逆に聞くが、これが夢だったら私はいったいなんなんだ?君の夢の幻か?そうじゃない、私はここに居るし、自我も過去もある人間だ」
「違う・・・絶対夢よ、これは全部私が見ている悪夢なのよ」
マーティンは話が通じなくなっているMiariに苛立ちを感じていた。
「夢でも悪夢でも君がそう思いたいなら思うといい、だが今はやるべきことをやるしかないんだ」
「嫌、もう嫌よ、早く覚めてこんな酷い夢・・・」
「いい加減にしろ!!」とうとうマーティンは怒り出し、Miariに大声で怒鳴った。
「私を失望させるな!残っているのは私と君だけしかいないんだぞ!なのにメソメソ泣いている場合か!?もういい、今日はさっさと寝て休め。儀式は明日再開させるから目覚めたら必ず私の所に来るんだぞ、いいな!」
「マーティン・・・う、うう・・・」
Miariは顔をくしゃっと歪ませ、座り込んでわっと泣き出した。
マーティンは大きく溜息をつき、Miariを残したまま無言で地下室から立ち去ってしまった。
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