軍曹は荷物をまとめ、戦闘機に積み込んでいた。
予定よりもこの世界に長居してしまったのは、居心地が良すぎたせいだろう。
ここに来るまで数ある世界を旅して来たが、この世界ほど平和に寛げた所はなかった。
[0回]
軍曹は葉巻の煙を燻らせながらここでの出来事を思い出していた。
唯一、Miariのことが彼には心残りだった。
最初の挨拶のつもりで軽く撃った空砲で怖がられてしまい、すっかり敬遠され、軍曹としてMiariとほとんど話せなかった。
(まあ、ここのBurdとして彼女と話すことが出来たからいいか・・・)
「軍曹さん」
ぼんやりと考えていると突然声を掛けられた。
「お?」
いつの間にか側にMiariが来て一人立っていた。
Miariは怖がる様子もなく、普通に話しかけてきた。
「ちょっとお話がしたいんだけど、いいかしら」
「俺と?二人きりで?」
軍曹はMiariの言葉が信じられず思わず聞き返した。
「ええ、二人でね。むこうの見晴らしがいい所に行きましょう」
「あ、ああ・・・」
軍曹は言われるままMiariに付れられて小高い丘の方に歩いていった。
山々の間から遠くの町や遺跡が霞んで見える。
「いい眺めだな」
軍曹は景色の美しさに溜息をついた。
戦闘機から見慣れた上空からの平面的な眺めよりも、こうして地上から眺める景色の方が今の軍曹には何倍も美しく見えた。
景色に見とれている軍曹の横顔を見ながらMiariはそっと尋ねてきた。
「軍曹さん、私ね、貴方に確かめておきたいことがあるの」
「なんだ?」
「・・・貴方とBurd、入れ替わっていた日があったでしょ」
軍曹は思わずくわえていた葉巻を落としそうになった。
はぐらかそうと思ったが、じっと自分を見つめるMiariの目が将軍の鋭い眼光を思い出させ、あっさり白状してしまった。
「・・・気付いていたのか」
「やっぱりね」
Miariはくすくす笑った。
「入れ替わっていたのは物干し台を作ると言い出した日ね」
「ああ・・・しかし、なぜわかった。話が噛み合わなかったからか?」
「お話していて変だなとは思ったけど、話題が昔のことだったから忘れたのねぐらいしか思わなかったわ」
「じゃあどこで気付いたんだ」
Miariはじっと軍曹を見つめた。
「Sigil Stoneを持ち帰った時、私を抱きしめたBurdから煙の匂いがしたの。そう、貴方が咥えてる葉巻の煙と同じ匂いが、あの時のBurdからしたのよ」
「それでわかったのか。だとするとなぜあの時逃げなかった?俺のことを君は怖がっていたじゃないか」
「貴方達が入れ替わってるっていう確信が持てなかったのよ。私より将軍の方が怖いと言われた時に確信したわ。Burdだったら絶対私の方が怖いだ鬼だって駄目出しするはずだもの」
それまで二人が入れ替わっていた事に気付けなかった自分に力が抜けてしまい、怒る気にも騒ぐ気にもなれなかったとMiariは話した。
「君が鬼だって?よほど将軍の方が鬼だぞ。俺を送り出す時あいつ何て言ったと思う。『死ぬ時は私の許可を得てから死ね』だったんだぜ。婚約者なんだから少しは優しい言葉で送り出してくれりゃいいものを・・・」
「絶対に死なせない、戻ってきて欲しいってことを彼女なりに言いたかったのよ。素敵じゃない」
心の中ではそうだったのかと嬉しくなったが、軍曹はMiariに弱音を漏らした。
「そうか?俺はあいつを愛しているが、優しくされたことがほとんどない。将軍とって俺は必要な存在なのかわからなくなる時があるんだ」
Miariはちょっと考えて軍曹に言った。
「貴方の自信に繋がるかわからないけど、私にとってBurdは頼れる人よ。彼女と同じで私もあまりBurdに優しく出来ないからきっと貴方達も同じー・・・」
「おいおい待ってくれ、兄弟を頼ってるなら優しくしてやってくれよ。見た目は屈強でも心は繊細なんだからあまり苛めるとあいつ泣くぞ、HAHAHA・・・」
「ごめんなさい、Burdがいい人すぎてつい・・・彼女は口は悪いかもしれないけど貴方をきっと頼っているわ。だから大事にしてあげてね」
「了解、君も兄弟を大事にしてやってくれよ!」
Miariは気になっていたことを軍曹に尋ねてみた。
「軍曹さん、向こうに戻ったら彼女と結婚するの?」
「もちろんそのつもりさ」
「そう、幸せになってね。そして今度は二人でここに遊びに来てちょうだいな」
軍曹は笑顔で頷いた。
「ありがとう。最後に君と二人で話せて良かったよ。最初に会った時、粗野な行動で君を脅かして悪かった」
「いいのよ、私の方こそ避けたりしてごめんね・・・でもどうして貴方達入れ替わることになったの?」
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