帰ることになった軍曹に土産を持たせたいと、マーティンは寺院中を探し周り珍しい物を集めてきた。
広間に軍曹を呼び、マーティンは改めてMiariとBurdと共に礼の言葉を述べた。
「軍曹、短い間だったが、君と同じ時を同じ場所で過ごせた奇跡を与えてくれた神に感謝している。私の我侭を嫌な顔一つせず聞いてくれたうえに、すばらしい物干し台を作ってくれた恩は一生忘れず良い思い出となるだろう」
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「いや、俺の方こそ突然の訪問だったのに、厚くもてなしてくれて感謝している。マーティだけじゃなくここの皆にはとても世話になったな」
改まった雰囲気は得意ではないらしく軍曹は照れ笑いを浮かべていた。
「お礼といってはなんだが、贈り物を用意したんだ。気に入ってくれればいいが」
マーティンはテーブルの上に置かれた贈り物の説明をはじめた。
「Sigil Stoneや魔法の石、Daedricアーティファクト、珍しいワイン、その他どれもすべて貴重な品ばかり集めたんだ。全部持っていってくれ(^^」
軍曹は並べられた品々を見て嬉しそうに叫んだ。
「おお、Sigil Stonを貰えるのか!これは欲しいと思っていたんだ。サンキュー!マーティ、愛している!」
「Sigil Stoneは友からのプレゼントだ。まだ大量にあるそうだから欲しければ遠慮なく言ってくれ」
「Sigil Stone取り過ぎたのよねえ・・・沢山余っちゃって」
「ええ、今頃Daedraは泣いてますよ・・・っておや」
Burdはテーブルの上の見覚えのある黄色い服に目が止まった。
「殿下、ちょーっと宜しいですかな?」
「なんだ、Burdよ」
Burdは服を指差し、にこにこと引きつった笑みを浮かべて聞いた。
「この黄色い服、もしやBrumaガード服ではございませんかな~?」
「ああ、多分そうだろう」
「ああ、多分って・・・しかもあたしのBrumaガード服のような気がするんですが」
「気がする、ではなくお前のだ。質もデザインもお土産品として特に問題はない」
Burdは目を丸くして悲鳴っぽい声で叫んだ。
「だだだ大問題ですっ!あたしのガード服を勝手にお土産に持たせんでくださいっ!」
怒るBurdに対しマーティンはめんどくさそうに答えた。
「もうガード服はいらんだろうが。押入れに入れたまま虫に喰われるより、軍曹にBruma土産として渡した方がリサイクルになるし、軍曹ならサイズもぴったりで服も喜ぶ」
「変な屁理屈捏ねんで下さい。この服は私の大切なガード服なんですから断固として手放すわけには参りません。人に渡すぐらいなら返して下さいっ!」
Burdがあまりに必死なので、ついMiariも面白がって口を挟んだ。
「Burd、いいじゃないの。もう貴方はブレードなんだから、ガード服必要ないでしょ」
「ブレードかもしれませんが、ガード服は永遠に手放せないんですっ!」
「使うことになったらお城で借りればいいじゃない。記念に軍曹にプレゼントしたら喜んでくれるわよ」
「あなた方には同じ様に見えるかもしれませんが、私のガード服は特別製なんですぞ!他のBrumaガード服とは一味違うんですっ!」
「どこが違うのよー。どう見ても他のガード服と変わらないじゃない。まーくんが洗っても落ちない汚れが付いちゃってるし、もう新調したら?」
「どんなに汚れてもシワになろうと、これは絶対に手放せない世界に一つだけの大事なMyガード服なんです!絶対ダメッ!!」
二人がワアワア言い合っている側で軍曹はマーティンに笑いながら言った。
「本当にここは楽しい所だな。君らの会話を聞いていると帰るのが惜しくなりそうだ」
「だろう?いっそのこと将軍が捜しに来るまで居たらどうだ」
「そんな状況になったら俺の命が危険だ!あいつを怒らせたら寿命がいくらあっても足りんよ!」
二人は顔を見合わせ笑いあった。
荷物の積み込みも終わり、軍曹の出発の時が迫ってきた。
「皆、今までありがとう。ここでの思い出は一生忘れない」
軍曹が挨拶をすると3人とも次々と別れを惜しみながら言葉を送った。
「軍曹殿、どうかお元気で」
「道中気をつけてな」
「早く将軍さんの所に戻って元気な顔見せてあげてね」
「マーティ、この頼もしい友人や仲間たちといつまでも達者でな」
「軍曹、ありがとう。君がこれからも幸運に恵まれる様、私は祈っているよ」
軍曹はMiariとBurdに向き直り、じっと見つめながら言った。
「・・・幸せになれよ」
「貴方もね。将軍さんによろしく伝えて」
「兄弟、彼女とマーティの事を頼むぞ」
「承知しましたぞ。軍曹殿が無事に任務を全うされることを自分も祈っております」
情に厚いBurdはついホロリと来たのか目頭を指で押さえていた。
マーティンと軍曹は向き合い、固く握手を交わした。
「軍曹、さようなら、元気でな」
「マーティも元気でな。結婚式には呼んでくれ、披露宴には戻る」
軍曹が乗り込んだ戦闘機はゆっくりと上昇し、一気に加速して空中に飛び出した。
機体はぐんぐん高度を上げていく。
夕暮れの空色に染まりながら、軍曹の戦闘機は大空に吸い込まれ消えていった。
軍曹が去った後も、しばらく3人はその場に立ち止まったまま、暮れていく空を見上げていた。
次第に空は暗くなり、ぽつぽつと星が瞬き始める。
深い夜の闇の訪れと共に輝きを増していく星々の光は、軍曹が去り寂しい気分になった3人の心を優しく慰めてくれている様に見えた。
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