無事揃った良質の材料や燃料のお陰で、物干し台の部品作成は順調に進んでいた。
地下室の中は溶炉の放射熱の影響で暑く、黙って立っているだけで汗がジワリと滲み出てくる。
軍曹も朝から休まずずっと作業を続けていたので、さすがに疲れを感じてきた。
[0回]
「ふう・・・疲れた。少し休憩しますか」
「うん、私も疲れてきちゃった。今何時なのかしら」
「もう夜でしょうな。自分は外に行って涼みつつ休憩してきます」
「待って!Burdが外に行くなら私も行くわ」
二人で外に出ると、辺りは暗くすでに夜になっていた。
降り頻る雪と夜の空気でとても寒かったが、ずっと火の側で作業をしていた二人にとっては丁度良い心地良さに感じた。
暗い灰色の夜空を見上げながらMiariが呟いた。
「あーあ、早く雪止んでくれないかしら・・・まーくんに外で洗濯物干させてあげたいのに」
「止まないのはきっと、殿下が私をおちょくるから罰として天が殿下をおちょくっているのかもしれませんぞ」
「あはは、そうかもね・・・ねえBurd、貴方にちょっと聞きたいことがあるのよ」
「何ですかな?」
「Burdから見て、軍曹の世界にいるもう一人の私ってどういう感じに見えるのか教えてくれない?」
「将軍のことですか?」
「うん、そう」
「そうですな、隙がなく怖くて強い女に見えます」
「じゃあ私は?やっぱり隙がなくて怖くて強く見える?」
「貴公も強い女です。怖い時もありますが、将軍の方がよほど怖いです」
Miariはそれを聞いてにこっと笑った。
「そう、私の方が怖いって言われなくて良かった。ふわ・・・あ、欠伸が・・・私はもう寝るわね。また明日お手伝いに行くわ。じゃ、おやすみなさーい」
「おやすみ、また明日」
Miariと別れ、地下室へ戻った軍曹が葉巻を懐から取り出し一服していると、Burdが戻ってきた。
「遅くなって申し訳ない。殿下と話し込んでいたら長くなってしまいましてな」
「何かあったのか?」
「いえいえ、大した事では。殿下はもう寝るとおっしゃられていたので自分は戻ってきました」
「マーティも寝ちまったのか。寺院が静まりかえってるのを見ると他の人らも就寝の時間らしいな。騒音をたてては迷惑だから今日の作業はこれで終わりにするか」
終わり、という言葉を聞いてBurdが嬉しそうな顔をした。
「ということは我々の入れ替わりもこれで終わりですな!軍曹殿っ」
「おいおい、嬉しそうだな兄弟。俺になるのはもう飽きちまったのか?」
「飽きた訳ではないのですが、どうも自分ではない自分を演じるのは疲れます。戦っている方がまだ気分が楽ですな」
「そうか、俺はブレードのBurdを演じるのは楽しかったんだが、自由に葉巻を吸えないのだけは参ったぜ、HAHAHA!」
二人は服を交換し、元の軍曹とBurdに戻った。
「はああ~これですよこれ!やはりこの格好が一番落ち着きますな」
「うむ、今日はいろいろとご苦労さんだった!」
「軍曹殿こそ、お疲れ様でした。また明日頑張りましょうぞ」
軍曹とBurdは互いに労いの言葉を掛け合い、作業場の後片付けを済ませ、休息を取る為に地下室を後にした。
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