「失礼します」
Burdが扉を開けると入り口側の椅子にマーティンが座っていた。
「軍曹、良いところに来てくれた。相談に乗ってほしいことがあったのだ」
マーティンは浮かない顔をしてBurdを見上げた。
[0回]
立ち上がってBurdを部屋へ招き入れ、見張りのブレードに下がるよう指示し、外に誰もいないのを確認すると扉を閉めた。
「そこの椅子に座って話をしよう、楽にしてくれ」
「ありがとう、で、どうしたんだマーティ」
軍曹のフリをしてマーティンの相談を聞くことに戸惑いを感じたが、このまま軍曹としていることにした。
マーティンは前を見据えたまま話し出した。
「・・・軍曹、君の世界とこの世界は一見、差が大きく違う物に見えるが、我々が好意を持つ対象はそう変わらず同じではないだろうか」
「どういうことだ?」
Burdはマーティンの言葉の意味が理解できず、思わず首を傾げた。
「マーティも私も洗濯物が好きなのは変わらん。軍曹は将軍に惚れていて将軍とは仲がいい。同じ様にBurdも友の事を好きだったのではないかと・・・」
Burdは自分の話になりドキリとした。
「例え同じだとしても臆することはないだろ。俺から見ても彼女が惚れているのは君の方だ。なのに自信がないのか?」
「自信か、普段ならあると言えるんだがな。今の私は弱気になって周りに迷惑をかけている様だ。こうなったのは慣れない環境のせいなのかそれとも私が歳をとったからなのか・・・」
「周りは迷惑だとは思っていないさ。ここの連中はマーティの為ならなんだってやると張り切ってるじゃないか」
マーティンは暗い顔をした。
「ブレード達は私ではなく、皇帝の私の為に従事しているだけだ。任務の一環で彼らの意思ではあるまい」
「言っておくが、ブレードはそんな薄情じゃないぜ。最初はそうだったとしても、今は皆、君の人柄に惚れて尽くしているんだ、俺にはわかる」
「我侭ばかり言っているような情けない男の人柄にか?私は特にBurdには申し訳ないと感じているのだ。親しみ易い分、どうしても頼りがちになってしまって。何でも嫌な顔せず受け止めてくれる彼の寛容さには感謝せねばな」
「はは、それはちょっと大袈裟すぎるんじゃないか?」
Burdは照れながら笑った。
「いや、Burdがいてくれた存在は大きい。彼がいなければ今の私や友もいなかっただろう」
マーティンは立ち上がり、苦笑いしながらBurdを見た。
「時間を取らせてすまなかったな軍曹。いやな、先ほどBurdが友を抱きしめているのを見てしまったのだ。それで本当は友のことが好きなのに私のせいで無理をしているのではと思ってな。話を聞いてくれて気分が落ち着いたよ」
(うお!やはり見ていたのか!あれは自分じゃなく軍曹なのに)
Burdは驚いてあの時の状況を説明した。
「あれを気にしていたのか?彼女がオブリビオンゲートから無事に帰ってきたのを喜んでつい抱きしめてしまっただけだ」
「・・・抱きしめてしまうほど友の身を案じていたのか。Burdはなんだかんだ言って友を好きなんだろう」
Burdは心の中で問答し考えていた。
自分はMiariのことは好きだった。だが同じ好きでも、マーティンが彼女に抱いているような恋愛感情が伴ったものとは違うと感じていた。
しかし、そのはっきり出来ない自分の気持ちが、マーティンに戸惑いを生み出させていたのだろうか。
「ああ・・・そうかもな」
無意識にBurdは呟いていた。
「あいつはBrumaガードとして一生をBrumaに捧げる気でいた。だがブレードになる道を選んだ。恋人がいるのに離れる運命を選んだんだ。永遠に側にいたいとあれほど強く願っていた相手がBrumaにいたのにな」
あの時、未練をあまり感じずBrumaを後に出来たのは、こういうことだったからかとBurdは頭の中でぼんやりと思った。
「Burdはやはり友を・・・」
「ハハハハハ!」Burdは突然出し抜けに大きな声で笑いながら立ち上がった。
「マーティ!今のは俺の憶測に過ぎないんだぜ!?これくらいで不安になってたらやっていけないぞ!」
Burdは今の自分の話がマーティンを動揺させたのではないかと思った。
しかしマーティンはほっとした表情を見せていた。
「いや、いいんだ、言ってくれて助かった。私はBurdのことが心配だったのだ。Burdはガードを辞めたくはなかったのに私の頼みを断れず渋々ブレードになったのではないかとね。友と一緒にいる為にブレードになる道を選んでくれたのなら私も気が楽になるよ」
マーティンはMiariの事は気にしていても、自分の事は気にもとめてないとばかり思っていたBurdにとってその言葉はとても嬉しかった。
「渋々ってのは考えすぎだ。ブレードを選んだのはマーティの人柄を気に入ったからさ。もしかしたらあいつはマーティと下らん話で盛り上がったり腹を割って話し合ったり喧嘩してみたいと思ってるかもな」
「Burdと喧嘩か、いいな。それで仲直りして酒を酌み交わせればもはや親友以外の何者でもない。そうなるほど怒らせてみたいのだが、おちょくっても中々怒ってくれんのだ、どうしたものか」
「あいつは肝が据わっているからちょっとやそっとでは無理だぞ。まあマーティならとんでもないネタ探し出してやっちまいそうな気がするけどな、ハハハ」
内心は今以上いじって泣かすのは止めてほしかったが、マーティンを元気付けようとついつい調子良く乗ってしまう人のいいBurdだった。
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