「『元気を取り戻す簡単な方法』・・・いいわね、この本は参考になりそう」
気晴らしになればとマーティンに話しかけても、浮かない顔をして暗く返事を返されるだけなので、何か元気回復のための手がかりをとMiariは本を読んで探していた。
[0回]
本は、ブレードの一人が良さそうな書物を倉庫から探し出してきてくれた。
熱心に読み耽っているMiariの側で、Burd(入れ替わった軍曹)がじっと見ていた。
(ふうむ、彼女の場合、似ている部分と似ていない部分の差があるな。人間ではなくエルフだからというのもあるんだろうが、気性はまるっきり正反対らしいな)
軍曹は婚約者である将軍を思い出し、Miariと比べつつ思った。
(あいつもこれくらい穏やかで女らしくしてくれれば可愛げがあるんだが)
以前よりは優しい面を見せ接してくれる様にはなったが、極稀にすぎず、軍曹にとってはこの世界のMiariがとても優しく穏やかな女性に見え、この世界のBurdに羨ましさを感じていた。
恋をすれば女は変わるというが、将軍の場合、互いの愛を確かめあった後でも、自分に対する態度は大して変わらなかった。
将軍のシャイな性格が邪魔をしているのだろうが、軍曹としては好きな女にはやはり優しくしてもらいたいという想いがあった。
「?」
MiariはBurdが自分をずっと見ているのに気付いた。
「なあに?」
軽く笑いながらBurdを見た。
「失礼、邪魔をしてしまいましたか」
Miariは本をテーブルの上に置いて顔を上げた。
「Burd、どうしたのよジロジロ見ちゃって。あ、私が本読んでるのが珍しいからからかおうとしてるのね」
「とんでもない、勉強熱心だなと感心していたんですよ」
「やあねえ、褒められる程のことはしてないわよ。まーくんを元気にする方法がわからなくて本に頼っているだけなんだから。ほらほら、Burdも読んでみて。参考になりそうなことがいっぱい書かれているのよ」
Miariは椅子から立ち上がり、Burdの側で本を開いて中を見せた。
軍曹は本を覗き込み、目に留まった文章を読み上げた。
「どれどれ?『日光浴しましょう』『趣味を見つけて没頭しましょう』・・・おや、これはどうかと思いますな。本来なら簡単だが今は難しいことばかりだ」
「あらやだホントだわ、困ったわね。雪は止みそうにないし、お洗濯物は干せないし。次のページ見てみましょ」
ページをめくっていると『恋をしよう』『プレゼントをしよう』というタイトルが目に入った。
「恋と来ましたぞ、これは貴公の出番ですな」
Miariは照れ笑いを浮かべて答えた。
「出番があればいいけど、まーくんは私より洗濯物にゾッコンなのよ。ね、Burd、まーくんが元気になるプレゼントって何かないかしら」
その時、扉が開いて外の冷たい空気が流れ込み、マーティンと軍曹が戻ってきた。
「ただいま」
「まーくん、おかえりなさい!外は寒かったでしょ?」
「軍曹が私を助けてくれるそうだ」
マーティンは開口一番、嬉しそうに二人に報告した。
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