(しかしながら軍曹の乗り物は、見れば見るほど心をくすぐられますな)
「軍曹」
勇ましく乗り回し、周囲から羨望の眼差しで見られているであろう軍曹がBurdは羨ましく思えた。
[0回]
(今度乗せて貰えないかコッソリ聞いてみよう。この乗り物には男のロマンを感じますぞッ!)
「軍曹、聞こえんのか、軍曹ー?」(うおおおっ!殿下!?)Burdは背後からマーティンに呼びかけられ驚いた。
(なんで外に!一人で出てきたのか?誰か止めろよ!!)
マーティンは沈んだ声でBurdに尋ねてきた。
「軍曹、なぜここにいる?まさか帰るつもりか?(´・ω・`)」
Burdは急いで軍曹から借りたサングラスを掛け、言葉使いを心の中で反復しながら振り返りマーティンに答えた。
「HAHAHA、マーティ!心配をかけてすまない!ちょっと様子を見に来ただけさ!君こそどうしたってんだ、寒いのに外に出てくるなんて」
マーティンは少し明るい顔になってBurdを見上げた。
「急に軍曹と話がしたくなってな。何の話題でもいいからしばらく私の話相手になってくれないか」
(えぇ!?なんでよりによって入れ替わってる時に!軍曹やご友人とお話しされればいいじゃありませんか!)
Burdは動揺しそうな心を落ち着かせ、平常心を保ちつつ軍曹になりきって言葉を続けた。
「Burdやエルフの彼女には相談しないのか?」
「相談しても愚痴しか出なくてな・・・これ以上Burdや友に私の嫌な面を見せたくはないのだ。軍曹には申し訳ないんだが、助けると思って私の話し相手になってくれないか」
「なるのは構わないが、俺よりBurdがマーティとは長い付き合いなんだし、いい話し相手になるんじゃないのか?」
マーティンは懇願するように小さな声で言った。
「・・・今は軍曹と話がしたいんだ」
「は、はあ、そうなのか、OK。で、どんな話をしたいんだ?」
Burdにぽつりとマーティンが言った。
「・・・軍曹、いつになったら私は洗濯物が干せるのだろうか」
(殿下の頭の中は洗濯物のことしかないのですかっ!?)
ツッコミたくてたまらないが、口に出すわけにはいかないので心の中でつっこんだ。
マーティンは手を口の前にやり、はぁ~と息を吹きかけ擦りながら言った。
「洗濯物が干せないのも辛いが、寒さもかなり堪えてな。ここに来てから初めてあかぎれや霜焼けを体験したよ。水が冷たすぎて洗い物が大変だ・・・」
(洗い物なんて殿下がされずにブレードに任せてくださいよっ!)
大空を見上げ、主夫は大変だぞ・・・と呟いたマーティンにBurdは思わず吹き出してしまい、慌てて咳き込んでごまかした。
(主夫になってるッ!?貴方は殿下です、皇帝陛下なんですぞっ!もしかして自分を見失ってるっ!?)
「この空と雪はいつまで私を困らせるのだ?お日様が見たいぞ私は、そしてたまった洗濯物を早く干したい」
突然マーティンは顔を両手で覆い、唐突に泣き出した。
「軍曹、軍曹っ!私を助けてくれ!このままではどうにかなりそうだ!私に洗濯物を干させてくれぇ~干さなければ私は私は・・・!・゚・(ノД`)・゚・」
「マ、マーティ、泣くな!いつか天気は回復するさ、それまでの辛抱だ!」
Burdが慰めてもマーティンは泣き止まない。
予想以上にマーティンの鬱状態は深刻なようだ。
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