「謝ることはありませんよ。軍曹殿がもう一人のあれと良い仲なのなら気になって当然でしょうから」
Burdが気遣いの言葉をかけると、軍曹は照れくさそうに言った。
「俺が旅立つまでの一ヶ月間、じっくり付き合ってみてわかったが、あいつは本当にいい女だよ。他の世界でいろんな女と出会ったが、俺にとってはあいつが一番だし忘れられん」
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「そうですか・・・」
Burdはふっと急に暗い顔をした。
「なんだ兄弟、しけた顔して。ははあ、やっぱり彼女が気になるんだろ」
軍曹が茶化すとBurdは慌てて顔をプルプルと振った。
「いえいえ違いますぞ!軍曹殿はいろんな場所に赴いて経験豊富ですから羨ましいと思いましてな」
「俺が羨ましい?兄弟は旅はしないのか?」
Burdは切々と打ち明けた。
「しないというより出来んのです。自分はBrumaガードを長年勤めましたが、基本的にBruma領地内での任務ですから外部に出ることはほとんどなかったのです。あれと出会ってからはまあ、旅をする機会に恵まれましたが、ブレードになってからは正直手持ち無沙汰な毎日で・・・」
「でも楽しんでいるんだろ?気の許せる仲間と一緒に平穏な毎日をすごせるなんてことほど幸せなことはない」
「ええ、もちろんそれはわかっています。が、退屈な日々が続くと張り合いがなくなってしまって。殿下をお守りする大役を任せられながらこのような罰当たりなことを言うべきではないのですが・・・」
現状に不満があるなどと誰かに相談するわけにもいかず、Burdは一人で悩んでいた様子だった。
軍曹はしばらく考え、手をポンと叩いて言った。
「よし、俺がいい退屈しのぎを思いついたぞ」
「おお、なんですかな?」
軍曹は葉巻の煙をすぱーっと吐き出し、ニヤっと笑った。
「俺と入れ替わるんだ」
「えぇ!?」「兄弟は異次元を股にかけるエースパイロットを演じるわけだ、どうだ面白いだろ」
「面白いも何もどうやって!?大体あたしは軍曹の乗り物を動かすことはできませんぞ!」
「HAHAHA、そこまでやる必要はない。ただ服と武器を交換して、お互いになりきってマーティや寺院の皆をどこまで信じさせられるか試すだけさ」
「待ってくださいよ、それでは仲間を騙すってことでしょう?とんでもない、良心が許しませんよ!」
「これくらいの悪戯はどうってことないさ兄弟。ワルな面もある一筋縄ではいかない男だと思わせるのも面白いぜ?」
「むう・・・」
おちょくってくる殿下に対しておちょくりかえしたいと今まで心に思ったことがないわけではない。
Burdは考え悩んでいるうちに、これぐらいならいいのではないかと思えてきた。
話に乗って別人を演じるのも面白そうだ。
「しかし軍曹殿は私になってどうされるおつもりですか」
尋ねられた軍曹は、手入れをするため机に置かれていたBurdの大剣を手に取って、眺めながら答えた。
「そうだな、中世の騎士宜しく剣で狩を楽しんでみるのもいいな。なんにしろ兄弟や周囲に迷惑は絶対かけないと誓う。俺が信用できる輩かどうかはは言わなくてもわかっているはずだ」
懇願する軍曹にじいっと見据えられ、自分の分身である軍曹を信じることができないとはとても言えなかった。
しぶしぶBurdは折れて軍曹の提案を受け入れてしまった。
「では一日だけ入れ替わるという条件付きでなら・・・」
Burdの言葉を聞いて軍曹は嬉しそうに目を輝かせた。
「よし!よく言った兄弟!!お互い楽しもうぜ!」
手始めにこいつの扱いを教えてやるからな、と軍曹は意気揚々とBurdに銃の使い方を説き始めた。
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