「なんだここは・・・」
扉の向こうにあったのは、広い空間と噴水のオブジェが中央に飾られた大浴場だった。

石像から流れ落ちる水音だけが静かに聞こえる。
マーティンは厳かな浴場の雰囲気に圧倒されて息を飲んだ。
「言葉を失ってるようじゃが、如何したかねプリンス」
後ろに待機していたMiari爺はマーティンに嬉しそうに聞いた。
「風呂場というより大浴場になってしもうたが、プリンスならこれくらいの贅沢は軽くせんか。お前は身分に似合わず質素すぎじゃからのう」

「友よ、私は質素にしようとも贅沢したいとも考えたことはないよ」
マーティンは振り向きながらMiari爺に言った。
「君には礼を言いたいのだが、頼んでもいないのになぜここまでしてくれるのだ。見合うような礼は私は何も出来ないぞ」
Miari爺は立てた杖に両手を添えて、身体を前後にゆらゆらと揺らしながら答えた。
「お前はそう思っていても、それなりのモノをワシに与えることになるじゃろう、まあそもそも非力な人間風情のチンケな見返りなどワシは期待しておらん。与えられるまま受け取ってくれればそれで良い」
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