マーティンを捜して外に出ると、右手の場所に居るのを見つけた。
「いたいた、殿下よ。洗濯物干してたのね」
「ぼーっと突っ立ってますな。というか本当に洗濯物干してたのか、あの方は(汗」
「まーくん、どうしたの?戻ってこないから散歩に行ったのかと思ったのよ」
私が側に近づいて話しかけると、マーティンは気付いて振り向いた。
「ん?友か。何でもないよ、今日はいい天気で何よりだ」
マーティンは再び干された洗濯物に向き直り、眺めつつしみじみと呟いた。
「爽やかなカラーリングの物干し竿に、一着の洗濯物が干されている、この光景こそ私にとって和みであり癒しなのだ。Kvacthにいた頃は毎日洗濯物を干すのが日課だったな・・・」
マーティンの後ろで、Burdがブツブツと言った。
「帝都で殿下が物干し竿を見つけて買って帰ると騒ぎ出した時は呆れ・・・いえ、如何に殿下が本気で洗濯物好きかがわかりました。ついでに自分が物干し竿を担いで持ち帰させられた思い出は一生忘れないでしょう」
「うむ、あの時はお前がいてよかったと思った。荷物持ちを快く引き受けてくれたお前に感謝している」
「似合うからお前が持てと笑顔で押し付けてきたの誰でしたっけ!?とても恥しかったんですぞ(泣」
「そうかそうか。しかし今日はいい天気だが、風がないのが惜しいな」
「なぜ風がないと困るの?」
私が尋ねると、真面目な顔をしてマーティンは答えた。
「洗濯物をふんわりサラサラに乾かすには、天気の良さに加え、風が大事なのだ。少しでいい、心地よい程度の風が吹いてくれれば、午後1時にはカラリと乾いて取り込めるのだか・・・」
「殿下が独自の洗濯物理論を熱く語っておられますぞ貴公。殿下の為に風を呼んでやってはいかがですか」
「無茶言わないでよ、いくらなんでもそんなこと無理よー」
「貴公、好きな人の為には何でもするって言ってませんでしたっけ~?貴公なら風どころか嵐を呼ぶことも簡単でしょ~」
「もー、どういう意味よそれ><嵐を呼んでふっ飛ばすわよっ!?」
その時だった。
どこか遠くからキーンという甲高い音が聞こえた。
「・・・変な音が聞こえない?」
「ええ、聞こえました、どこから・・・」
音はすぐに大きくなり、何事かと振り向いた私たちの目の前を、見たこともない奇妙な飛行物体が横切っていった。
その瞬間、ものすごい突風が吹き込んできた。
「きゃあああっ!」
「うおっ!」
突風で干されていた洗濯物が舞い上がり、物干し竿もろとも風に飛ばされてしまった。
「ああ!私の洗濯物が!!!」
マーティンは吹き飛んだ洗濯物を掴もうと慌てて手を伸ばしたが、紙の様にヒラヒラと寺院の外に飛ばされていった。
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