AM 8:25 -Cloud Ruler Temple Great Hall-Burdはブレード達を広間に集め、席について待機していた。
ブレードを集めておけと言っていた肝心のマーティンは、どこへ行ったのやら中々広間に姿を現さない。
[0回]
初めは緊張して待っていたブレードたちは退屈してきたらしく、ガヤガヤと世間話を交わしだした。
「まったく、この緊急事態に何をのんびりされているんだ殿下は」
Burdはイライラしながら眉をひそめた。
ちらりと横を見るとジョフレが懸命にノートを見ている。
「ジョフレどの」
「・・・・」
Burdの呼ぶ声が耳に届いてないらしく、ジョフレはノートを凝視している。
「ジョフレどのっ」「あぁん?なんだ」
少し大きな声で呼ぶと、ようやくジョフレが顔を上げた。
「ああもう、私が呼んでいるのが聞こえないとは何を夢中に読んでいるのですか」
「これか?これは記録帳だ。大事な会議の内容はいつもこれに書き記しておってな。前回はどんな内容だったか見直していたのだ」
「ほう、なるほど。さすがジョフレ殿は心構えが違いますな」
Burdは感心した。
「ところで、会議とおっしゃいましたがいつされましたかな?自分は会議に参加した覚えがないのですが」
「最近はしとらんな。最後の会議は・・・」
ジョフレは見辛そうに目を凝らしてノートを見た。
「特命ー・・・」
ジョフレはタイトルを読み上げたが、すぐ口を噤んでしまった。
「今なんと?」
「間違えた、今のは違うページだった。ふむ、最後に書かれているのは3週間前だな。寺院の今月の少ない予算について陛下と相談した内容が書かれているが、まあ皆にとって重要な話ではない」
寺院の予算はブレードらにとって最重要問題ではないかと思ったが、ジョフレがそういうのなら気にしなくてもいいの・・・だろう。
でも今、特命とか言いかけなかった?
もう一度ジョフレに確かめようと口を開いた時、先にジョフレが真剣な顔をしてBurdに言った。
「Burd、今日は史上空前の稀な1日になるだろう。心しておくことだ」
「は、はあ・・・」
言っている意味がイマイチわからなかったが、外の異変はすでにジョフレも知っているはず。
だが、妙に落ち着きすぎている気もする。
彼はここの一番の年長者で、様々な場数を踏んできた分、大抵のことでは驚かない胆の据わった人物なのだろう。
しかしBurdはさっきからずっと落ち着かなかった。
それは、この会見場のセットのせいだった。
誰かがいつの間に用意したのか、広間には青いカーテンに寺院のマークが飾られ、前には演説台が設けられている。
"トップの会見場"としては間違いないバックグラウンドなのだろうが、緊張感より余裕を感じさせられるのはなぜだろう。
「ジョフレ殿・・・なぜこの様なセットがこの寺院にあるんですかなぁ・・・」
Burdはぽつりと疑問を口にした。
「君は知らんかっただろうが、実はこの寺院には歴代の皇帝をお守りするためのありとあらゆる設備が整っていて、緊急時にいつでも対応できる様になっている」
ジョフレはノートに書き込みながら淡々と答えた。
「フフ・・・」
二人の横から突然不敵な笑い声が聞こえた。
「陛下の可能性は無限大ってワケだ・・・こいつぁいつもより120%ワクワクしていいってことかよ・・・」
Baurusは背を屈ませ、ブツブツと奇妙な独り言を呟いている。
それを見ていたジョフレが唸った。
「おお、Baurusが呟きながら一人で笑っているじゃないか。彼が口元を弛め謎の言葉を発する時は幸運が近づいている証だ」
「・・・・」
Burdはこの場所から急に逃れたい衝動に駆られた。
しかし、今ここで逃げてしまっては、敵前逃亡となり男が廃る。
ジョフレやBaurusとなんとなく目を合わせないようにして、マーティンが現れるのを待つことにした。
心細い気持ちでマーティンが戻るのを待っている自分にちょっと気恥ずかしさを感じながら。
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