「頭を打った覚えはないが、なぜお前がここにいるのかが理解できん。寺院に残ったはずではなかったのか?」

マーティンは夢でも見ているかのような、焦点の合わない虚ろな目でBurdをぼんやりと見つめている。
「あのですな殿下、こんな遠い所まで二人っきりで行かせるはずないでしょうが。本来は護衛を連れて行動すべき大事な存在のお方なのですぞ貴方は」
Burdが窘めてもマーティンは相変わらず浮かない顔をしたまま力なく答えた。

「大事?私のどこが大事だ。友は私を部屋に残して出て行ってしまったぞ。二人きりどころか、今は一人きりだ・・・」
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