
(友の日記・・・)

マーティンは1人残った部屋で、投げつけられた後、床に落ちたままになっていた日記を見下ろしていた。
あれだけ見せたくないと言っていたのに、捨てるように手放して・・・。
大事な物ではなかったのか?

私に内容を知られたくなかったのではないか?
落としていけば、誰かが見るかもしれないと言うのに。
そんなことを考える余裕もないほど、友は我を忘れ、動揺していたのだろうか。

触れることに一瞬躊躇したが、落ちたままにしておくわけにもいかないので、マーティンは日記を拾い上げた。
[0回]
・・・友が私のことどう思っているか、これに書かれているのか。

マーティンは手に持った日記の表紙をじっと見詰めた。
さっきまであれほど読んでみたいと思っていたのに、中を開く気がしない。
Miariは見せられないと言っていたのだから、無理に見ない方がいいだろう、とマーティンは心の中で呟いた。
中を見て、自分が思った通りの悪いことが書かれていたら、仲直りする気にはなれないだろうし、彼女を二度と信じることが出来なくなるだろう。
本当に終わってしまう・・・。

・・・まて、ということは私はまだ友を信じようとしてるのか?
友があれだけ自分を避け、嫌がっていたのだから、自分のことなど友の意中にはない。
友は仮面をかぶって、私とここまで無理をして付き添っていたんだ。
なのに、私は裏切られても、友を信じようとしているのか?
マーティンは自分の心にMiariへの未練が残っていることが無性に腹立たしくなってきた。

結局読むことなく、そのまま日記を側の机の上にそっと置いた。
Miariは部屋を飛び出して行ったが、日記を置いたまま去ることはないだろう。
その内思い出して取りに戻って来ると思うが、自分がいると戻りにくいかもしれない。

しばらく自分も外に出ておくか、とマーティンは部屋を出ることにした。
Miariが突然どこかへ走り去ってしまった後、Burdはどうしようかと迷っていた。
「参ったな、あれは泣きながらどこか行ってしまうし、殿下は警備も無く御一人というわけか・・・ああもう、貴公申し訳ありませんが、自分は殿下の様子を先に伺わせて頂きますっ」
Miariのことも心配だったが、マーティンを1人にさせて何かあってはまずい。

彼らには見つからないように行動するつもりだったが、もう放っておくわけにはいかないと、Burdは意を決してマーティンがいる部屋に向かった。
部屋の前まで来て、どう説明して姿を現そうかと焦って考えていると、扉が開いて中からマーティンが現れ、意表を付かれたBurdは驚いた。
「うおおおおっ!」

「?」
あたふたしているBurdをマーティンはきょとんとした顔でBurdをじっと見ていた。

数秒経ってから、マーティンは呟いた。
「・・・ああ、さっきの・・・この世には1人の人物にそっくりなのが2人はいると聞いたが、見れば見るほどBurdという男にそっくりだぞ、君は」
「はい?い、いや、自分がそのBurdですが」
「名前どころか声もそっくりとは・・・旅行から帰ったら私が知っているBurdに土産話として話させてもらおう」

「だから私だって言ってるでしょ殿下。とぼけるのもいい加減に・・・って大丈夫ですか?目が虚ろになってますぞ(汗」
「ああ・・・BrumaガードのBurd隊長だったか。久しぶりだな」

「は?今更、私がBrumaガードって、で、殿下、どうしたんです。記憶がぶっとんでやしませんか?頭をどこかで強打されたのですか?」
いつもと違う雰囲気で、ふざけているのか、本気で言っているのかわからないマーティンの反応にBurdは不安を憶えた。
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