軍曹はサングラスを外し、Miariの顔を見た。
そこにはいつもの冷たい将軍の表情はなく、悲しげな顔をしている女性が目の前にいた。
「軍曹、お前がいなくなるのは辛すぎる。頼む、私に寂しい思いをさせないでくれ」
「そんな言葉が聞けるなんて俺は・・・」
今まで見せることなどなかったMiariのか弱い言葉と姿に軍曹の心は揺れ動いた。
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だが、軍曹の決意が変わることはなかった。
「俺が今回の任務を受けた理由の1つに階級があるんだ。軍曹と将軍じゃ差がありすぎることが俺は気になっていたんだ。昇格して少しでも君に近くなれば一緒に居やすくなるだろ」
「階級の差など私は気にしていない、構わないじゃないか今のままで・・・」
「俺たちは良くても周りの目がある。階級が下すぎる俺と付き合うのは君のためにも良くはないし、何しろいつの間にか婚約者候補にされてしまっていたからな・・・」
Miariは俯いて少し照れながら言った。
「そのことに関しては私に責任がある。私が元帥にお前の話ばかりしていたから親しい仲だと思われ、お前を気に入って勝手に話をまとめてしまった」
「年頃なのに君に男の噂がまったく立たないから元帥閣下は心配していたぞ。俺が将軍を1人の女性として好きだと打ち明けた時、怒るどころかすごい喜ばれてしまったからな」
「・・・お父様が人前で、そんな感情を見せるなんて」
Miariは滅多に笑わない元帥が笑顔で喜んでいる姿を想像できなかった。
「もう1つは、好奇心さ。俺は異次元の自分がどう生きているのか知りたいし会ってみたい。俺だけじゃなく、君や俺の友人がどうしているのかも興味がある。こんなに面白そうな任務は滅多にお目にかかれないだろ」
「もっともだが、もし異次元にいる別の私が、お前に好意を持ったらどうするんだ?」
「好かれるのは拒まないが、惚れられたら俺には婚約者がいるとはっきり断るさ。女に泣かれるのはもうこりごりだがHAHAHA」
「まったく、女たらしを婚約者にされた私の身にもなってみろ」
「俺はまだ君の婚約者として力不足だと感じていた。だから俺は今回の任務で男を上げて、無事戻れたら俺は正式に君にプロポーズする。それまで待っていて欲しいんだ」
「酷いな。いつ戻るかわからない男の帰りを私に待っていろというのか」
「ああ、待っていてくれ。俺は必ず君の元へ戻る」
強い調子で軍曹は言った。
その言葉に偽りはなく、自信があることを、彼の真剣な眼差しが語っていた。
Miariは真剣な顔で臭いセリフを言う軍曹がおかしかったのかくすっと笑った。
「フフ、そんなセリフを真面目な顔で言われると照れるな。どうだ、場所を変えて落ち着ける所で話をしないか」
「いいぜ、どこに行く?」
「そうだな、ゆっくり話が出来るような・・・私の家に来ないか」
「い、家に!?」
家へ誘われたのは初めてだった。
「嫌なら別の場所でもいいが・・・」
「いやいや!行くよ、行きますよ!」
軍曹は二つ返事で答えた。
酒代を払い、Miariと外に出ようとすると、三人の男が角の隅に折り重なるように倒れていた。
「なんだなんだ?酔っぱらって倒れたのか」
「・・・かもな」
Miariは軍曹の背中越しに3人組をちらちらと見ながら言った。
「店員に教えておくか。よく見るとガラの悪い兄さん方だな。こういうのには気をつけろよ。もし君が絡まれたら俺がすぐに助けてやるからな」
「ふふ、軍曹はあしらい方が上手いものな。こういう輩は簡単に撃退できるだろ?」
「喧嘩はせずお手柔らかに、が俺のモットーだからな」
私はどうも口より先に手が・・・とMiariは言いかけたが、いや、なんでもないと話を止め、倒れている3人組の保護を店員に頼んで、早く店を出ようと急かした。
「おや、随分積極的だな・・・よしよし、伝えてくるから待ってろよ」
酒も入ってすっかり上機嫌な軍曹は3人組のことを手短に店員に伝えると、2人は仲良く寄り添い夜の街に消えていった。
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