写真の中で微笑んでいる女性は私に似ていたが、どこか違和感を覚えた。
髪型が違うわよね・・・あと眼帯してるトコも。
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「貴公によく似ていますなあ。軍曹殿の世界に居る貴方ですよきっと」
横からBurdが絶対そうだと言い張るが、私はどうしても写真の女性が自分の分身という感じがしない。
この眼帯の女性がもう1人の私?
似てるけど何か、どこか違うのよね・・・。
「顔は貴公なのに、Hassildor将軍と呼ばれているそうですよ。伯爵と同じ姓ということは、もしかするとあちらの貴公は伯爵と結婚したのかもしれませんなぁ、はっは~」
Burdに茶化され思わず頬がポッと熱くなった。
マーティンの眉がピクリと動いたが、何も言わずに食事を続けている。
・・・Hassildor将軍?ということは伯爵もあちらの世界にいるのね。
その時、写真を見ていた私はようやく大きな違いに気が付いた。
「わかった!この女の人、違和感があると思ったら耳が私と違うのね!エルフじゃないなら私とは別人・・・他人の空似じゃない?」
いやいや、そうじゃないと軍曹は首を横に振った。
「それは君だよ。俺の世界にエルフ族はいない。君は俺の世界では人間の女性として存在しているんだ、そして・・・」
軍曹は穏やかな口調で、自分が育った世界と仲間達の事を話し始めた。
「もっと側に寄って下さいー!あ、いいです、そのままそのまま・・・待って、もう少し近くにお願いします、はいOK、笑ってー!」
「Carius伍長、ちゃんと撮れただろうなー!」
軍曹はカメラを持った伍長に念を押しつつ聞いた。
「イエッサー!ベストショットであります!Hassildor将軍閣下はクールに、Burd軍曹殿は男前に撮れたであります!」
伍長は緊張気味にカメラを見せながら答えた。
「男前か・・・フッ。わざわざこんな雑用のために時間をとらせてすまなかった、伍長」
Hassildor将軍が微笑を浮かべ声をかけると、伍長は背筋をピンと伸ばし将軍に向かって敬礼した。
「将軍閣下!何をおっしゃられます!自分の様な者がこのような大役に抜擢されるとは光栄の至りであります!どのような雑用でも命を懸けて遂行しますので遠慮なく酷使し下さいであります!」
「おいおい伍長、大袈裟すぎだぞ。写真撮るだけの事にそこまで気合を入れるなって。緊張してるんだったら肩の力を抜けよ」
「お2人の前では力を抜きようにも抜けませんであります!」
「2人の前だからじゃなく、将軍の前だからだろ。俺といる時は肩の力を抜くどころかタメ口吐きまくりもいいところだよなあCarius伍長」
軍曹は葉巻を吹かしながら伍長をからかった。
「いえいえ、自分はノリが良いのが取り柄ではありますが、上官にタメ口きくなど何のことやらであります!しかしながら急にお2人が並ばれた写真を撮りたいと言われて自分は驚きました。お2人は何か特別な関係であったりするのでありますか?」
目を輝かせ興味深々に尋ねる伍長の問いに、軍曹は口元をニヤケさせた。
「ああ、それなりの仲かもな。だが今は詮索するな。いずれお前にも話さねばならん時が来るからそれまで待ってくれ」
「ははぁ、もしやお2人は・・・おっと」
将軍が顔をしかめたのを見て、伍長は慌てて口を手で押さえた。
「サー、撮影した写真の現像は、2枚で良いのでありますか?」
「ああ、俺たちの分だけ欲しいからそれでいい。今日か明日中には頼む。出来上がったら俺に届けてくれ」
伍長は敬礼して、元気よく叫んだ。
「イエッサー!了解しました。では自分はさっそく作業に取り掛かります!!」
伍長は回れ右をして、基地内の隊舎へと足早に去っていった。
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