寺院の外は雪がちらつき、肌を刺すような冷たい風が時折吹き抜けていく。
クラウドルーラー寺院を訪れた軍曹は、旅の疲れをここで癒してはどうかとマーティンに勧められ、しばらく滞在することになった。
[0回]
平穏な寺院での変化というとBurdが二人になったことだけ。
あとはいつもと変わらない風景がそこにあった。
「今日は涼しいですなあ」
半裸姿のBurdは雪が舞い落ちてくるねずみ色の空を楽しそうに見上げていた。
寒さに強いNord族のBurdにとって、これぐらいの気温は寒いうちに入らなかった。
「冬と言えば乾布摩擦が欠かせない季節!さて、今日も気合を入れるためにやりますぞ!!」
Burdは冬が、特に雪が降る日が好きだった。
雪は飽きるほど見てきたが、天から舞い落ちてくる白い雪を見ると、気分が高揚してくるNord男の中の男なのである。
「よぅオトコマエ!いい体してるじゃないか!」
外の様子を見に出てきた軍曹が声をかけてきた。
「これは軍曹殿!」
半裸で雪景色の中にいるBurdを見て軍曹は感心しながら言った。
「兄弟、寒くないのか?」
「まったく寒くありませんぞ。軍曹殿は寒さには強いですかな?」
「HAHAHA、実は俺も寒さには強い方なのさ兄弟。-50℃になる冬のシベリアに駐屯していた時に比べればここは常夏同然よ」
「ほう、さすが自分の分身です。どうですかな、一緒に乾布摩擦でも」
「乾布摩擦!なつかしい!新兵の頃、軍隊式乾布摩擦を叩き込まれた時期があってな。あれほど、体や心が鍛えられる技はないよな」
「おお、軍隊式ですか、それは興味深い。是非自分に教えてもらえませんかな」
二人が乾布摩擦話で盛り上がっていると、Miariが中からひょこっと現れた。
「Burd、まーくんが・・・きゃ!」
用事があって外に出てきたMiariは、Burdが裸になっているのを見て驚き、用件をすっかり忘れて叫んだ。
「何で裸になってるのよ!びっくりしたじゃない」
「私の肉体美に驚いて見惚れましたか貴公( ̄ー ̄)冬と言えば乾布摩擦ですぞ。御一緒に如何ですかな?」
「おいおい兄弟、レディに乾布摩擦を勧めるのはデリカシーがなさすぎだぞ」
ふぅ~っと葉巻の煙を吐き出しながら軍曹はBurdをたしなめ、Miariを見た。
軍曹と目が合ったMiariは、あわてて顔を背けた。
「そ、そうよ。私のこと男だと思ってるんでしょBurdはっ>Д<」
どうしてもMiariは軍曹になじめず、警戒心を解けずにいた。
同じBurdなのに、軍曹は苦手だった。
なぜかMiari将軍との恋仲を知ってからは、ますます近寄りがたくなってしまった。
「・・・・」
軍曹は自分がMiariに嫌われているのがわかっていたが、強引に打ち解けようとしたり仲良くしようとはしてこなかった。
その時、寺院の中からマーティンが出てきた。
「皆、寒いところで何してるんだ」
マーティンは袖の広い厚めの着物のような服を着込み、寒そうに腕を交差していた。
「あ・・・まーくんごめんなさい!私が戻ってこないから出てきちゃったのね」
「うむ、友も誰も戻ってこないからどうしたのかと思ってね、外は寒いな、ブルブル」
マーティンは唇を震わせながら、半裸のBurdを目撃するなり呆れて叫んだ。
「Burdよ、なんだその寒さをナメきった格好は!服はどうした服は!!」
「はっはー、殿下、Nordは寒さに強いのをお忘れになりましたか?」
「だからといって裸で外をうろつくな!ただでさえ寒いのに見るとますます寒くなるだろうが!」
「殿下は寒がりですなぁ。どうです、ご一緒に乾布摩擦を自分とやりませんか?体がホカホカ温まりますぞ」
「この寒空の下で私に服を脱げというのか?一枚たりとも脱がないからな!」
マーティンは体を丸め両腕で着物の裾を握り締めた。
「寒いならなぜ外に出てこられたのですか」
「なぜだと?そうそう、用事を思い出した。ぜんざいを食べようと思って作ったのだが、お前たちも食べないかと聞きに来たのだ」
「それはありがたい!ぜひ頂きます。大好物なんですよ」
「好きか、良かった。餅はいくつ入れておこうか?」
「私は5個で」
「軍曹は?」
「俺の分もあるのか?サンキュー、マーティ。俺も5個でOKだ」
「Burdコンビは5個ずつ・・・と。友も5個でいいね」
「待って、私5個も食べられませんっ!><私は1個でいいわ」
「そうかそうか、では今から温めておくから早く皆と中に戻ってくるんだぞ」
マーティンは寒そうに腕をさすり背中を丸めたまま寺院の中へ戻っていった。
その後姿を見てますます殿下のタヌキ度がアップしていると思った一同だった。
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