ある日のこと。
私は用事があって寺院をしばらくの間離れていた。
戻ってきたこの日もいつも通り「ただいま~」なんて呟きつつ寺院の門をくぐった。
建物の前まで上がってきて、なんだか周囲の空気がいつもと違うことに気付いた。
そう、いつも寺院の周囲を警邏しているブレードたちが見当たらなかった。
すごく静かだった。
寺院の周囲をぐるりと見回してみた。
一人の見張りだけを残し、他には誰もいない。
まさか私がいない間に何かあったのかしら。
心配になって寺院の中に駆け込もうとした時、別棟の扉が開いて出てきた人物に呼び止められた。
[0回]
「おお貴公じゃありませんか!戻っていたんですな」
声の主はBurdだった。
焦った様子はまったくなく、いつもと変わりがない。
「Burd、外に誰もいないんだけど大丈夫なの?」
「おや、貴公、今日何があるか知らないんですか?皆、中に篭って勉強してますよ」
「えっ、勉強?」
今日は何かある日だったっけ?考えても見当が付かず、Burdに聞き返した。
「そう、勉強してるんです。なぜ勉強かって?それは貴公がご自分の目で見ればすぐわかりますよ。かく言う私も勉強中でしてな(照」
こっちの東棟に皆集まっていますよ、と教えてくれたので行ってみることにした。
寺院の東棟、『休憩所』に入ると、本棚の前に集まったブレードたちが皆熱心に本を読んでいた。
Baurus以外のブレードが兜を外しているのを見るのは初めてだった。
おかげで誰が誰なのかわからない。
「うわー、皆熱心に勉強してる。でもなぜ?」
私が全然わかってないのが不思議らしく、Burdは変な顔をしながら説明してくれた。
「今日はブレードの昇進試験があるんですよ。貴公本当に知らなかったんですか?ランクアップ希望者は年に一度の昇進試験を受けることになっているそうです」
「ほへー、そうだったのね。Burdも勉強中ってことは試験を受けるんだ」
「ええ、もちろん!殿下から試験を受けろと指示されたのもありますが、当然下のランクより上がいいじゃないですか。昇給も期待できますしな( ̄ー ̄)」
ブレードの昇進試験があるなんて知らなかった。
なぜマーティンは試験のことを話してくれなかったのだろう。
私も一応ブレードなのにー。
「試験では恐らく殿下を護るブレードとしての技量をみっちり試されるのではないかと自分は予想しています。いやあ、これは頭と腕の見せ所になりそうですな」
「諸君!!」突然声が響き渡り、振り向くと休憩所に入ってきたジョフレが皆に向かって大きな声で叫んだ。
「注目!諸君、お待たせした!これより第82回ブレード昇進試験を開催する!」
勉強していたブレードたちは一斉に本から目を離し、緊張した面持ちでジョフレに注目した。
「手始めに試験についての説明を陛下ご自身がされるそうだ。皆、拍手で陛下をお迎えするように!」
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