「はぁ~姐御は相変わらず帰ってこねぃにゃ~・・・」
ネコミミは部屋に飾られたこの家の主のポスターを見ながら溜息をついていた。
ポスターの中で微笑んでいる主は、もう長いこと家を留守にしている。
「ネコミミちゃんたら~暗すぎよ~元気出しなさいよ~」
「にゃ、スケルたん先生」
声がした方を見ると、いつの間にかスケルたん先生が呼んでもいないのにカタカタと音をたて立っていた。
[0回]
「姐御、全然帰ってこねーにゃ~、ミーはつまらなくてストレス溜まって昼寝する気もしないにゃ・・・」
ネコミミはガックリと肩を落とした。
「アラアラ~アタシがいるじゃない~って、アタシも全然呼ばれなくなっちゃってサビシかったけど~アタシが呼ばれないってことは~戦いを忘れるほど~恋とロマンスに夢中になってるとか~おっさんたちが帰してくれないとか~アハン♪」
スケルたん先生は、嘆く割に寂しがってないように見える。
「ミーが直接出向いて連れ戻すしかないにゃかね。ほっといたらいつまでも帰って来ない悪寒がするにゃ」
「ダメダメ~無理にそんなことしたってMiariちゃん帰って来ないわよ~。ここは本人が~帰って来たくなる様な工夫をすべきだと思うわ~」
「ほほう、工夫と来ましたにゃか。何かいい考えがありますにゃか先生」
スケルたん先生は首をカクリと傾けしばらく考えていたが、突然閃いて両手をコツン!と叩き合わせた。
「名案思いついたわ~伯爵に協力してもらえないかお願いしてみましょ~」
「はっさくて、城のおっさんにゃか?」
「はっさくじゃなくて~伯爵~。Miariちゃんてさ~伯爵と仲良かったのよね~だからぁ~Miariちゃんのことで相談したら伯爵どうするかで~想いがわかっちゃうかも~ウフフ~」
いつもなら2分で消えてしまう先生が10分経っても消えない。
ネコミミは、スケルたん先生はロマンスな話を聞きつけると、派遣召喚時間を無視して居座ってしまうのよね、といつかMiariが困った顔をして話していたのを思い出した。
そういえばSkingradに住んで長く経つが、ネコミミは伯爵の姿を一度も見たことがない。
Miariが惚れこんでいた伯爵というおっさんがどんな人物なのか確かめに行くのもいいにゃね、とネコミミはスケルたん先生を連れてSkingrad城に向かうことにした。
「城に来たにゃ!ここが伯爵がいる城にゃね先生」
「そうね~あ~でも~伯爵会ってくれるかしら~よく考えたら~アタシたちアポなしで会おうとしてる~ヤッダ~ウカツ~」
「伯爵に会うの難しいのにゃけ?」
「ええと~Miariちゃんどうやって会ってたって言ってたかしら~う~ん思い出せないわ~若い娘が尋ねて来たって執事に取り次いでもらえばなんとかなるかしら~」
それを聞いたネコミミさんの目が鋭く光った。
「それはダメにゃ。ミーは若い娘っこじゃにゃーよ、熟女にゃ、家事に関してはプロフェッショナルの色気ムンムン熟女家政婦にゃよ」
先生はどこが?という顔をしたが、下手に言うと引っかかれるので口をつぐんだ。
「ハイハイ~じゃあ熟女が来ましたって執事に取り次いでもらいましょう~」
2人は門をくぐり城に入ると、ホールにいた執事に『Skingrad切っての美人熟女が尋ねてきたと伯爵に伝えて欲しい』と頼んだ。
執事はおかしかったのか吹き出したが、すぐに了承して奥へと消えた。
しばらくして高貴な身なりの中年男性が眠そうな顔をして現れ、ネコミミをじーっと見て不満そうに一言つぶやいた。
「・・・なんだ、美人熟女が来たというから出てきてやったのに、しっぽ付きの小娘ではないか」
ネコミミは頬を膨らませて言い返した。
「うにっ、おっさん、ミーは小娘じゃないにゃ、こう見えても立派なおばちゃんで熟女にゃ」
「とても熟女には見えんが・・・」
「ミーの顔をよく見るにゃ、ほれ、この目の横の小ジワ・・・年期が入って味ある熟女にゃん」
伯爵は目が醒めない顔のまま、ぼーっとネコミミの顔を見ていたが、適当にあしらっていた方が無難だと、ウンウンそうか、と頷いた。
「お前が熟女なのはわかった。それでどちらさまかね?私に用があるそうだが」
「お、伯爵でしたかにゃ!ご無礼しっつれーしましたにゃ!ミーはMiari姐御の家で家政婦やってるネコミミいいますにゃ。今回は姐御のことでちとお願いがあって来ましたにゃ」
Miari、という名前を聞いた瞬間、伯爵の眉がピクリと動いた。
「お前はあのエルフの知り合いなのか。しばらく見らんがあれはどうしておるのかね?」
「姐御は北国にいるおっさんとこ遊びに行ったまま帰ってこないのにゃ」
「北?Brumaにでも行ったまま帰ってこんのか」
「そうにゃ、そっちのおっさんとこ遊び行ってずーっと帰ってこにゃーのですにゃ」
なので、Miariに戻って来てもらう為、伯爵の力を借りることができないかとネコミミは訴えた。
しかし、伯爵は顔をしかめただけだった。
「なぜ私が彼女を連れ戻さなければならんのだ。ここ最近静かに眠れて安心していたところなんだぞ。あれがここへ戻ってきたら、私の平穏な日々がぶち壊されてしまう」
「うにゃ?姐御は伯爵と仲が良かったと聞いたにゃ、寂しいと思わないのにゃ?」
ネコミミが尋ねると、伯爵は小さく唸り、間をおいて答えた。
「まあ・・・少しはな。だが私が束縛するより、Burd隊長と自由に行動させている方があれにとっては良いのではないかね」
「にゃ?」
ネコミミはそこでMiariがタヌキ似のおっさんを好きだということを伯爵は知らないことに気が付いた。
説明しようかと思ったが、スケルたん先生が当事者以外の自分達が話すのは辞めといた方がいいわよ、とホネ語で慌てて忠告してきたので話すのは止めた。
「それでも姐御には帰ってきて欲しいのにゃ・・・伯爵、姐御がこの街に帰って来たいと思うようなアイデアはありませんかにゃ」
「あのエルフの為に私がどうにかしろと?君も主と似て突拍子もない言動をするのだな」
言葉は迷惑そうに言ったが、別に気を悪くした風でもなく、微笑んでいた。
「そうだな、ではあれが戻ってきたくなるような美しい街にSkingradを作り変えてみるというのはどうかね」
「にゃにゃ?」
伯爵は兼ねてから構想していたというSkingrad改造計画をネコミミに語った。
「Skingradが美しい街になったと聞けば彼女も帰ってくるだろう、如何かね私の考えは?」
「素晴らしいですにゃ!きっとそれなら姐御戻ってきて大喜びしますにゃ!伯爵に惚れ直すと思いますにゃ!」
「ふふ、そうか。少々時間がかかるかもしれんが、早めに工事にかかれるよう手配をしておこう」
伯爵はMiariが帰ってきたら、城に顔を出すように伝えてくれとネコミミに伝えて、奥へと消えた。
ネコミミは見違えるように美しくなったSkingradの街を想像すると、胸が高鳴り心躍るのであった。
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BC Skingrad REDUCED・・・というわけで前置きが長くなりましたが、BBCシリーズ(Bananasplit Better Cities)のSkingrad編を別の作者が翻訳&シンプルに作り直したMODで話を考えてみました。
街全体に木々が生い茂り、とても美しく、お気に入りのMODです。
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