館内はただでさえ広いのに、通路や階段がまるで迷路の様に配置されている。

そして、いくつあるのかわからない多数の部屋が、更に私を迷わせた。
目的の物を捜し回っていると、テーブルの上に整然と食事が用意されたまま残っている食堂があった。

近くの棚には高価で貴重なワインが何本も置かれたまま放置されている。
・・・人が居ないようにはとても思えない。
変だった。
生きている人間がこの町に居ないとしても、ゾンビ以外の人間・・・元々居たはずの住人たちの姿どころか遺体さえも、どこにも見当たらない。
すべてゾンビになってしまったのだろうか。
余計な事を考えている場合じゃない。
早く武器庫を捜さなくては。
上の階よりも地下を捜した方がいいかもしれない。
私は地下室への扉を捜し回り、次の部屋へ行こうとドアを開けたとたんゾンビと鉢合わせした。

もう気付かれて押し寄せて来たのかとギョッとしたが、いるのはこの一体だけのようだ。
私は攻撃を避けナイフで倒すと、すぐにその部屋を後にした。
館内は広く、自分が今どこにいるのかわからなくなる。
一階の角の部屋で、ようやく地下へ続く階段を見つけた私は周囲の気配を伺いながら下りていった。

背後の部屋・・・今来たばかりの扉の向こうから物音がした。
まずいわ、奴らが屋敷に入り込んで来たのかもしれない。
どうしよう、この先に武器がなかったら・・・。
私は胸を締め付けるような不安な気持ちと恐怖感に押しつぶされそうになったが、慌てて頭を振って雑念を払いのけた。
階段を下りた先には広い部屋があった。

矢を射る的や木の人形が置かれている。
訓練場なのかしら・・・。
訓練場がここにあるのなら、武器庫はきっと近くだわ。
入ってきた向かい側に扉があったので、開けて先へと進んだ。

扉の先の通路は真っ暗だった。
何も見えないので、持っていた松明を灯した。

暗闇をぼうっと照らす松明の火の明かりを頼りに、恐る恐るゆっくりと階段を下りていった。
キラリと何かが反射した。
なにかしら。
近づいて見てみると、それは大量の剣だった。

これがあれば、あのゾンビ集団に勝てる・・・?
いえ、剣では無理よ。
もっと強い武器が無いとこの町から出ることは出来ないわ。
私は周囲を見回すと、更に先の部屋に続く扉を見つけた。

この先に必ずあるはずよ。
扉を開けて真っ暗な通路を奥まで進むと、行き止まりの棚の上に見慣れない武器が置かれているのが目に入った。
これだわ・・・。

彼女の仲間が言っていた強力な武器。
それは一丁の銃だった。

やった、これなら、奴らを蹴散らせられるわ!
私はそれを手に取り、元来た部屋へ引き返した。
暗い通路を抜けて広い訓練場に戻ると、とうとうゾンビが入り込んできていた。

私の気配を追って来たらしい。
呻き声を上げながら、こちらへフラフラと歩み寄ってくるゾンビに狙いを定めて、私は銃の引き金を思いっきり引いた。

ドキューーン!とけたたましい銃声が部屋中に響き渡り、弾を受けたゾンビが派手に後ろに吹っ飛んだ。
次々飛び掛ってくるゾンビを私は無我夢中で撃ち、気が付くと、部屋に居たゾンビをすべて倒してしまっていた。

私はその銃の威力に驚いた。
・・・すごいわ!
これなら奴らも怖くない!!
ここにゾンビが居るということは、先の部屋にもいるわね。
数が増えないうちに外へ脱出して、Juliettaの待つ礼拝堂に戻らなくては。

私は銃を携えたまま急いで階段を駆け上がった。
扉を開けると、思ったとおり部屋にはゾンビが徘徊していた。

フラフラと部屋を歩いていたゾンビの一体が私に気が付いて襲い掛かってきた。
私は銃を構えゾンビに向かって撃った。

軽々とゾンビは吹っ飛んでいく。
そして倒れた後は、もうピクリとも動かない。
他のゾンビも倒してしまってから、私は部屋を見回した。
ここの扉から屋敷の裏口へ抜けられるようだ。

私は、取っ手を握り、様子を伺いながら、そっと扉を開けた。
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