「伯爵を寺院に呼ぶ理由はなんだ」
テンプルマスターはマーティンに問いかけた。

「Skingradはシロディールの中で唯一、地場産業の地域活性化や街おこしに成功し、黒字化した街です。観光客の大幅増加の秘訣を聞き参考にしたい。伯爵とコミュニケーションをとることで過疎化しているBruma経済問題や、寺院の有名観光地化への土台が作れるのではないでしょうか」
マーティンは真面目に説明したが、テンプルマスターはフン、と鼻で笑った。
[3回]
「公私混同も甚だしい」

「え」
テンプルマスターの軽蔑した口調に、マーティンが固まった。
「小難しいことを言ってそれらしく理由を作っているが、所詮はMiariをSkingradへ行かせない為の口実ではないか。却下する」

「い、いえ、決してそんな私情で企画部を利用したりはいたしません」
マーティンは恐々否定した。
「そうです、陛下は自分の利益ではなく地域のためを思ってご提案されたのです」
ジョフレが横から助け舟を出したが、マスター相手には敵わないらしく、目を伏せたままだ。
しかしテンプルマスターは受け入れなかった。

「そもそも部外者を招くこと自体間違っている。この企画部の存在はBruma周辺と帝都のごく一部の限られた人間しか知らない。我々の存在を知られずに伯爵を呼ぶのは無理な話だ」
「・・・確かにその通りでございます。我々の組織は基本ローカル活動であることを忘れておりました」
マーティンのローカル発言にツッコミしようとBurdが身を乗り出すより先に、Miariが発言した。

「ねえねえ、その案すごくいいと思うんだけどー?寺院に伯爵を呼ぶなら私Skingradに帰らなくてすむし、まーくんと伯爵が対面っていうイベント自体すっごく面白そうよ。却下はもったいないなー☆」
Miariは男性陣ほどテンプルマスターを怖がっていないようだ。
テンプルマスターはMiariに視線を向けた。

「おお、貴公ならガツンと言えそうですな。殿下の代わりにビシっと言っちゃいましょう!何かいつもとキャラ違ってますけど」
Burdにとってかつては鬼にも見えたMiariならあのマーティンたちを怯えさせているテンプルマスターとやらに互角に立ち合えるに違いない。
テンプルマスターの態度の大きさに少々腹が立ってきていたBurdはMiariの活躍と逆転を大いに期待した。

しかし、テンプルマスターは更にウワテだった。
「偉そうな口を叩く前にまずお前の演技力をなんとかしろ。エルフらしさがまったく出せない大根役者が。お前の代役もいくらでもいるのだ。気をつけろ、耳がずれているぞ」
「えっ!やっだー、マジでー!?ちゃんとくっつけたはずなのにー☆」

Miariはあわてて自分の耳を両手で押さえた。
「ええっ!貴公の耳って付け耳!?ということはエルフじゃないの!?って代役ってまさか!」

通りでエルフらしいスタイリッシュさとかわいさがなかったワケだと一瞬Burdは納得しかけたが、そんなことはないはずだと慌てて頭を横に振った。
殿下が殿下でないとか、Miariが実はエルフではなく役を演じていただけだったというのはさすがに信じたくない。
主演クラスが撃沈され、後がなくなったところで、それまで一人冷静を保っていたBaurusが手を上げた。
「テンプルマスター、恐れながらBaurus役の私めにも発言許可をいただけるでしょうか」

「よかろう、話せ」
「陛下の提案された件、試す価値はあるかと存じます。クラウドルーラーイベント企画部では、かつてから陛下と伯爵の対談は水面下で計画されておりました。しかし、これといったきっかけがなく実現までこぎつけることはがありませんでした」

Baurusの話し方は、通常の挙動不審な言動はなく、とてもしっかりしていた。
いつものBaurusと違いすぎている。
言っている内容はまともだが、いつも取ってつける謎な%つぶやきがないため、Burdは逆に違和感を覚えた。
まさか、本当に皆演じているのだろうか・・・まさかね。

「確かに伯爵殿は部外者でありますが、ここは我々の能力を測るよいきっかけになるのではないでしょうか。ドッキリ企画は一見安っぽく見えますが、それを実行するには企画部スタッフの長年の積み重ねと経験、そして優れた個々の能力がなければ実現不可能です。つまり今回の企画を成功させることは高度な企画技術を有しているか試す良いきっかけなのです」
「ふむ・・・失敗する可能性はいくらほどある?」
「もちろん失敗の可能性は0ではありません。しかし、この壮大な企画をやり遂げることができれば、我々企画部の偉大さを世界に知らしめることになるでしょう」
あれ?企画部の存在ってごく一部の人だけ知ってるんじゃなかったっけ?世界に知らしめたらまずいんじゃ?そこおかしいよ!とBurdは喉までツッコミが出かかったが、周りがあまりにもBaurusの演説に聞き入っているのでそのまま飲み込んだ。
「・・・なるほど。そこまで言われれば、却下するわけにはいくまい」

テンプルマスターはBaurusの説明に納得したようだ。
「おお、みごとだBaurus!」
「さすが全ブレード内で一番出番が多い役を射止めた男だけはある!」
マーティンとジョフレの二人は感嘆し、Baurusを賞賛した。

「先輩方、そしてみなさん、ご清聴ありがとうございました」
Baurusのおかげで場は再び落ち着いた雰囲気になり、テンプルマスターが次の議案を打ち出した。

「では、Skingrad伯爵を寺院に招致する企画提案を進めていくことにしよう。どうすれば伯爵を疑われることなく寺院に招くことが出来るか各自の考えを述べよ」
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