マーティンと私は帝都の植物園地区に来た。

ここは緑が豊かな区域で、芸術的なオブジェや図書館があり市民の憩いの空間になっている。
「図書館はこっちよ、行きましょう」
中央の道付近を歩いていると、私はどこからか呼ばれた気がした。

「ちょっとアンタ!」
その不躾な呼び声が自分のことを呼んでいると思わず、私が通り過ぎようとすると、また呼ばれた。
「ちょっと、耳腐れてんの?そこのアンタよ、黒の服着てタレたお尻振ってるア・ン・タ!」
な、なんですってー!?
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あまりの酷い言葉に私は怒りながら振り向くと、顔にまだ幼さが残る少女が立っていて、私をジロジロと見ていた。

「ちょっと貴方、他人に向かって今の口の聞き方は無いんじゃないの!?」
私の抗議の言葉など耳に入っていないのか、少女は私の服を不満そうな面持ちで見詰め、ぷくっと頬を膨らませて言った。
「アンタ、得意そうに歩いているけど、その服全然似合ってないわよ。オバサンは歳相応の服を着ておいたほうがいいんじゃない?そういう服はあたしみたいなモデル体型にしか似合わないの」
「オバサンですって!?」
タレ尻の人だとか似合ってないと言われたことよりも、オバサン呼ばわりされたことに私はカチンと来た。
「失礼ね!そりゃあ、貴方より私が年上みたいだけど、そんなこと他人に言われる筋合いは無いわ!貴方に似合うって言われなくても結構よ、まーくんは似合うって言ってくれたんだから!でもオバサンって呼んだのは許せないわ!!!」
「はぁ?どう見たってオバサンじゃないアンタ。ったくあの変態オヤジめ、若い女見たらすぐBAB服着せたがるんだから、ブツブツ。止めて欲しいもんだわ、似合うのはあたしだけってのに」

「なんですって?とにかく私はオバサンじゃないわ。訂正しなさい、謝りなさいっ!こらっ、聞いてるの!?」
「やーだ、オバサンはオバサンだもーん。似合わないったら似合わな~い、ベーだ」
アッカンベーまでされて、何この生意気な子!と、私がキレそうになった時、それまで黙っていたマーティンが間に入って私たちを宥めてきた。
「二人とも止めなさい。大人気ないぞ友よ、そのくらい軽く受け流そうじゃないか」
「でもオバサンって!><」

マーティンは少女の方を見て、やんわりと窘めた。
「こら、君は悪い子だな。人の悪口を言ったり貶すなんて行儀が悪いぞ。言われた方の気持ちを考えなさい。折角可愛い顔をしているのに、そんな悪辣な口を聞いては台無しだよ」
マーティンの言葉を聞いた少女の目がまん丸になった。

少女は、何も言わずにただポカンとマーティンの顔を見ている。
「どうしたのだ?私の顔に何か付いているのか?」
少女は、上目使いにマーティンを見上げながら言った。
「ねぇ、ちょっとちょっと、もう一度今のセリフ喋ってよ」

「セリフって・・・人に悪口を言ったり貶してはいけないと言ったんだ」
少女の顔はみるみる嬉色満面になり、きゃーきゃーと1人で大騒ぎしだした。
「ちょっとなにこのセクスィー声!ちょーイケてるじゃない!!顔はダサいオヤジなのに甘~く渋い声でステキ!!まるであのSean様が囁いてるみたーい!!いやーん、もっと喋って~~!」
「Sean?誰なんだそれは」
「きゃぁぁああぁあ」「ちょっと><まーくんに向かってオヤジって何よ!せめておっさんって呼びなさいよ!」

「友よ、それはどちらも一緒だ。この場合はお兄さんと呼びなさいと言うべきではないか」
「きゃあぁああぁぁ」おかしなことに、マーティンが何か喋る度に少女は黄色い歓喜の声を上げて大喜びしている。
私はその少女の嬉しそうな様子を見ていると、イライラとした感情が体の奥から沸き上がり、カアっと頭が熱くなって、あろうことかマーティンに向かって八つ当たりしていた。
「まーくん!なぜセクスィー殿下やってるのよ!この子夢中になってるじゃない!私は演じて頂戴って言った憶えはないわよ!」

マーティンは私が急に自分に怒り出した事にビックリしたのか、動揺しながら答えた。
「友よ、な、なぜ怒っているのだ?私は何も演じてはいないし普通に喋っていただけではないか」
(おっと、今度は何をヒステリックに叫んでいるんだ、貴公は)

Burdは近くの像の影から、二人と少女の様子をこっそり伺っていた。
(殿下が弁解しているようにも見えるが、何かあったのか?むう、声が聞こえないのが惜しいな。ツッコミ要素満載の状況になっていると思うんだが)
3人の会話を聞きたいという好奇心に駆られたBurdは、気付かれないようにもう少し近づいてみることにした。
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