「わー、いいお天気!」
寺院の外は雲一つない青空が広がり、さわやかだった。
こんな天気がいい日はどこかへ行きたくなる。
散歩に行って来ようかと考えていると、背後で扉が開く音がして、誰だろうと振り向くとマーティンが現れた。
マーティンは腰に武器を携えて手袋もはめている。
どうやら外出するつもりらしい。
「まーくん、どこか行くの?」
「ああ、外の天気があまりにいいから、気分転換に散歩に行ってこようと思ってね」
そういうマーティンの側にお供はいない。
まさか一人で寺院の外に出るつもりなのだろうか。
マーティンは私が心配になったのがわかったらしく、笑いながら言った。
「寺院の裏手にちょっとした散歩道があるんだ。すぐそこだし心配はいらないよ。そうだ、君も一緒に行かないか」
「いいわね、行く行く!着替えてくるからちょっと待っててね」
マーティンと散歩に行くことになったのが嬉しくて、着替えるために急いで中に戻った。
・・・あれ?寺院の裏に道なんてあったかしら?
[0回]
「おまたせー」
もしものことがあってはいけないので、念のためにいつでも戦える服装にしておいた。
「ははは、散歩なのに気合が入ってるな。これなら何があっても大丈夫そうだ。じゃあ行こうか」
マーティンは寺院の坂道を下っていく。
「まーくん、どうして寺院の裏に道があると知ってるの?」
「実はね、周りの目を盗んで、時々外に出て散歩していたんだ。道はその時に見つけたのさ。1人の外出は危ないとジョフレに怒られたが、それを大人しく聞いてじっとしているのも嫌でね」
「1人は危ないわよ><まーくんは普通の立場の人じゃないのよ!」
私は怒ったが、マーティンは悪びれることなくケロッとして言った。
「いざという時の護身術ぐらいは心得てるし、私もそれなりに安全には気を配っている。それに今日は友も一緒だから誰も止めなかっただろ?近頃のブレードたちは理解力があって助かるよ」
そういう問題ではない気がしたが、マーティンの表情がとても明るく元気なので、まあいっか・・・と私はそれ以上怒るのは止めておいた。
坂を下りきったところに教会があった。
その前を過ぎると北の高い山へと伸びる階段が見えた。
「あれ、いつの間にこんなトコに道が・・・」
「友が気が付かないなんて珍しいな。この道を辿っていけば山の頂上まで登れるよ。さあ行こうか」
「はーい」
マーティンは先頭に立ち歩き出した。
二人で横に並んで登っていくにはちょっと道幅が狭いので、私はマーティンの後ろから付いていった。
階段がなければ登れないほどの急峻な山坂が続く。
マーティンはこの道を歩きなれているらしく、すたすたと階段を登って行く。
かなり登って来たかな?と後ろを振り返った。
前方に寺院が見えた。
随分登って来た気がしてたけど、まだそんなに高い所には来てないみたいだ。
「まーくん、頂上まであとどれくらい?」
「あと10分ぐらい歩けば頂上だよ。さあ頑張ろう」
「10分ね、がんばりまーす」
10分後。
そろそろ頂上かなー?と思ったけど、まだ頂上は見えなかった。
階段が途切れ、辺りは雪に覆われた道になってきた。
柵にそって歩いていくと、北の国Skyrimが見渡せる眺めの良い場所に出た。
ここが頂上かと思ったけど、まだだった。
どうやら柵は、崖の下に誤って転落しないよう設けられているらしい。
先を見ると、再び長い階段が山肌に沿って伸びているのが視界に入った。
「まーくんー、さっき10分で頂上に着くっていってたのに、30分たっても着けてないー><」
疲れてきた私がぶつぶつ言うと、マーティンは楽しそうに答えた。
「すまんすまん、今度こそ頂上まで10分だぞ。遠足気分で行こうじゃないか」
あ~、これは散歩じゃなくて遠足だったのね><
「さあ友よ、どっちが先に頂上に着くか競争しようじゃないか!よーいドン!!はははー」
マーティンはまるで子供の様にはしゃぎながら階段に向かって走り出した。
「まーくんー!まってー!こんなとこで走ったら危ないわよー!」
私が止めるのも聞かず、マーティンは階段を駆け上がって行ったので慌てて後を追った。
「ゼエ・・・ゼエ・・・い、息が苦し・・・・」
「ほらもー><、まーくんは若者じゃないんだから無理しちゃだめよ!倒れたらどうするの」
案の定マーティンは息切れしてしまっていた。
「友からはおじさんに見えるだろうが私はまだまだ若いんだぞ・・・はーはー」
苦しそうな呼吸とは裏腹に、表情はすごく嬉しそうだった。
マーティンは、ふう~と大きく深呼吸をして満足げに言った。
「というわけで友よ、この階段を登った先が頂上だ」
階段を登りきった所には一軒の家があった。
「この場所は国境を見張るための砦らしいよ」
マーティンは、この建物の中に居る人物はNord系の人間だが、訛りがひどく自分とは話が通じない、Burdならわかるかもしれんな、と苦笑いした。
砦の上が、この山の頂上だった。
驚くことに先にはまだ階段が続いていた。
その階段は、Skyrimの森に向かって伸びていた。
「ここから先へは行ったことがない。散歩ではなくなってしまうからね」
マーティンは北の大地を眺めながら言った。
「友は冒険が好きだったな。この先に何があるのか探検に行ってみるといい。でもくれぐれも迷子にならないよう気をつけるんだぞ」
「大丈夫よ、そういうことは得意だから任せて!今度探検してみるわ」
頂上には砦以外何もない。
でも私はマーティンと二人で綺麗な景色や、空に浮かぶ月を眺めているだけで楽しかった。
何もなくても、どんな場所でも、マーティンと一緒に居られるだけで幸せな気分になれるだろう。
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