数日後、再び寺院に押し売りの男がやってきました。
丁度家に居たせがれは、自分に任せるようにとお爺さんに言付け、外に出て応対しました。

「どうもどうもこんにちは。私はMD研究所のCamoranという者です。先日はこちらのおじいちゃんに本を預かってもらいまして、受け取りに参りました。ところで、せがれさんは本をご覧になられましたか?」
せがれは胡散臭いセールスマンを撃退せねばとガンと睨みつけました。
「いいや、見ていない。読むわけがなかろうが。読めば難癖つけて金を取るのが見え見えだからな」

セールスマンは、疑ってかかるせがれの言葉を笑いながら一蹴しました。
「ははは、そんなあこぎな商売は我々はしておりませんよ。あの本は、お客様が期待するような情報は載ってないですからね。排水溝のぬめりをばっちり取る方法や、カビを発生させない方法なんてものしか載ってませんから」
「なに、そんなことがあの本に書かれているのか」

せがれが示した興味深々な反応を見て、セールスマンは目をキラリと光らせました。
[0回]
PR