寺院までようやく戻ったBurdは、さっきの女性はどこにいったのだろうと周囲を見渡した。

すでに姿はなく、中に入ってしまったようだ。
(名前だけでも聞き出したかったんだが・・・)

あれっきり会えないままとは思いたくなかった。
寺院に来た客なら、マーティンに会いにきた可能性が高い。
とにかくもう一度会って、名前をお尋ねせねばとやきもきしていると、マーティンが寺院から現れた。
「Burdよ、友は見つかったか?」

「ああ、すみません殿下。いくら探してもいないんですよ。この辺りにはいないのでは?」
「ううむ、ちょっと外に行ってきますと言って出て行ったのだが、その辺ではないのだろうか。どこだろうな・・・」
それより、さっきの美女の手がかりを掴む方が先決だ。
「そのうち戻ってきますよ。ところで殿下、美人が尋ねてきたようですが、あの方とはいったいどんなご関係ですかな?」

Burdはさっきの女性のことをマーティンに尋ねた。
[1回]
「美人?私を訪ねに美人が?」
「ええ、あの美人さんはどなたさんですか?婚約者がいるのにあんな美女とお知り合いだなんて殿下もやりますなあ( ̄ー ̄)」
「美女だと?」

マーティンはきょとんとした。
「すらっとした、ブロンドの綺麗な髪の若い美人さんが訪ねて来られたでしょ?」
「ははは、Burdよ、こんなド田舎にスラッとしたブロンド美女などいるわけないだろうが」
マーティンは笑いをこらえながらBurdの言葉を一蹴した。
「こんなDO田舎に若いブロンド美女がいるわけがなかろう。こんなど田舎に若いブロンド美女がいるわけがないじゃないか、こんなド田舎に若いブロンド美女がいるなんてちゃんちゃらおかしいぞ」

「なんで同じ言葉繰り返すんですか?だいたい田舎田舎ってそりゃBrumaは帝都に比べれば田舎かもしれませんが露骨にドをつけてど田舎扱いせんでください」
「しかし実際、そんな美女などこのあたりで見たことないぞ。私は美女を前にすると緊張して何もしゃべれなくなるから美女は苦手なんだ」
「あの・・・悪気はなさそうですが今のお言葉はご友人やブレードの女性たちの前では発言されませんように、刺されますよ。で、美女はどこですかっ!」

Burdにはどうしてもマーティンの態度がわざとらしく感じた。
さっきの美女は絶対マーティンに会いに来ていて、それを隠しているのに違いない。
「殿下、いい加減に白状してくださいよ!美女はどちらにいらっしゃるのですか!」
「だから知らんといってるだろう、美女がこんな田舎の山寺になんの用で来るというのだ」

「殿下、貴方はBrumaとクラウドルーラー寺院をどこまでコケに・・・おっと、話をそらそうったってそうは行きませんぞ!確かにさっきあたしは美女とそこまでご一緒してたんですっ!そして寺院に入っていったんですっ!!」
「ねえ、美女がどうかしたの?私のことなら今帰って来たわよ~」
「貴公はすっこんでてください!今は殿下とー」
Miariの声がしてBurdが勢いよく振り向くと、そこには棒人間がいた。
「のうわぁあああッ!!」
「ただいまー」
棒人間がMiariの声でしゃべっている。
「だれ!!!!?????」
「私よ私。見ればわかるでしょ」
「わかりませんっ!あたしの知り合いに棒人間はいませんっ!」
「ははは、こんな笑える格好するのは我が友ぐらいしかいないじゃないか。まだまだ観察眼が足りんなBurdよ」

「普通こんなのが横にいて話しかけてきたら驚くのが当たり前です。観察眼があろうがなかろうが普通の人は心臓が飛び出るほど驚きますよっ」
「Burd、なんで怒ってるの?面白い姿に変身できる秘宝があると聞いてBravilまで取りに行ってきただけなのに」
「Bravilですと!?全然近辺じゃないじゃん!殿下もどこにいるかぐらい把握してもらわないと!!」
何かよくわからないけどごめんねーとMiariはBurdに謝り、着ぐるみを脱いでマーティンに改まって言った。

「そうそうまーくん、実はね、今度Skingradにちょこっとだけど帰ることにしたのよ」
「Skingrad?家に戻るのか?そういえば長い間帰ってないからな・・・」
「それもあるけど、Hassildor伯爵に会ってこようかなって」

「Hassi・・・」
伯爵の名前を聞いたとたん、ほがらかだったマーティンの表情がアライグマの様に険しくなった。
「ダメ、帰るのはいいが伯爵に会うのはダメ」
「ダメって、元気にしてるかどうか様子見て、ついでにお話してくるだけよ?」
「伯爵はダメだ。危険だ」
「なにが危険なのよ」
Miariは不満そうに口を尖らせる。
「殿下、こっそり会うってわけじゃないんですから別にいいんじゃないですか?自分もHassildor伯爵とは何度かご縁がありましたので近況は気になります」

Burdの助け舟に今度はマーティンが口を尖らせた。
「なんだ、お前はブレードの身分でありながら伯爵の味方をするのか?ブレードは私のことだけ見ていればいいのだ、ブレードも友も私のものだ」
「殿下、嫉妬か何か知りませんが勢いですごい恥ずかしいこと口走っていますよ」
「とにかく友が伯爵に会うのはダメだからな。会うというのなら絶対帰らせないぞ!」

マーティンはすっかり機嫌が悪くなってしまったようだ。
寺院に戻る途中、ちらりと振り向いて二人に言った。
「もうすぐしたら会議が始まるから二人とも時間までに席に着いておく様に」

「はーい、わかりましたー」
Miariはぶっきらぼうに返事をした。
「もー、なにあのまーくんの態度。伯爵に会うって言っただけでなんであんなに怒るのよ」

「まー、貴公を伯爵に会わせたくないという殿下の気持ちはわからんでもないんですがねえ」
マーティンのどうもおかしな態度からすると、さっきの美女のことは知っていて、自分に会わせまいとしているのではないだろうか。
寺院の中にいるのは間違いない。
必ずマーティンを問い詰めて彼女のことを聞き出さねばと、Burdは強く心に決めた。
PR