「それじゃあ、多めにおみかん上げてみますね。これならすぐに食べてしまうことないでしょうから」

「そうですな、それだけ渡せばさすがに満足するでしょう」
女はバッグから取り出したみかん4個をキツネの前に置いた。
キツネは喜んでみかんを食べ始めた。
[1回]
「さあっ!今のうちに!!」
突然女は叫ぶと、ものすごい速さでその場から走り出した。

「ま、待ってくださいっ!!」
Burdは慌てて女の後を追いかけた。
「はあはあ・・・」

「ふう・・・ここまでくればもう追いかけてこないわよね」
一気に坂の中腹まで走ってきた女は、キツネがいた辺りを見下ろしながら胸をなでおろした。
「ご婦人は足が速いですなあ。まるでエルフ並です」
Burdが息を切らせながら言うと、女は照れ気味に笑いながら答えた。

「私、人よりも背が高くて足が速いせいか、よくエルフと間違えられるんですよ」
女は背が高く、Burdと目線がほとんど同じだった。
その艶っぽい目に見られると、Burdはドキドキした。
「え、えーとですな、ご婦人はどちらまで行かれるのですか?」

「もうすぐそこなんですよー」
「では自分がそこまでお送りいたしましょう」
二人は「今日は涼しいですねー」などと他愛のない会話を交わしながら、坂道を登っていった。
「着いたわ」
女は坂道の上まで上がってきたところでBurdに向かって小さく頭を下げた。

「見ず知らずの方にわざわざお手間取らせてしまいすみませんでした」
「いえいえ滅相もない。こちらは楽しい時間をすごさせていただきましたから謝ることなど、ははは」
Burdは女性がどこへ来たのだろうと顔を上げた。
クラウドルーラー寺院だった。

「えっ、どうしてご婦人はこちらへ?」

Burdがここへ来た理由を問おうとした時、女がきゃあ!と悲鳴を上げた。
「さっきのキツネ!追いかけてきたのね!!」
女は慌ててバッグから大きな袋包みを取り出した。
「すみませんが私はもう行かなくてはならないので、キツネのこと宜しくお願いします!!」

「え、あ、あの」
「それにみかんがたっぷり入ってますから、好きなだけあげてください!それでは失礼しますー!」
女はみかん袋をBurdに押し付けて、寺院の中に慌てて駆け込んでいった。

Burdの後ろでキツネがみかんちょーだいーとおねだりしている。
いったいあの人は何の用事で、誰に会いに寺院に来たんだろう。

袋から、甘酸っぱいみかんの香りが漂ってきていた。
PR