Burdは一人Brumaへと向かった。

長い間離れていたBrumaがどうなっているのか、かつての仲間たちの現況、そして自分はガードとして戻るべきかブレードとしてマーティンの元に残るか、それを確かめる為に。
Burdはクラウドルーラー寺院での待遇に不満があった訳ではなかったが、Brumaにいろんなことを置き去りにしてきたことが心残りだった。
時には戻って顔を見せていれば、もしくははっきりとガードを辞めていればこんな複雑な気持ちでBrumaに戻ってこなくてよかったかもしれない。

城内に入り以前と変わらない懐かしい雰囲気に少しほっとし、伯爵婦人に会う前にCariusに会って行こうとガード詰め所に立ち寄ることにした。
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扉を開け、中に入ると見慣れないマント姿の人物が目に入った。
(???ガード鎧にマントなんて付いていたか?)

「おや?」
人が入ってきた気配を感じて振り向いたのはCariusだった。
「わっ、Burd隊長じゃないですか!急に現れるからびっくりしましたよ」
「Cariusだったのか。そのマントはいったいどうしたんだ?」

「これですか?あはは、これはですねー、ガード専用のマントなんです。先に隊長クラスから装着が許されるようになったので、ボクがつけてるって訳ですよ。かっこいいでしょ」
「う、うん、かっこいいぞ」
Burdは内心羨ましいなと思った。
自分が隊長として残っていれば、自分がつけていたに違いない黄色いマントだ。
「ところで、今日はどうしてここへ?もしかしたらBruma市見物ですか?」

Bruma市って何よ?と思いつつ、Cariusに自分が来た理由を話した。
「伯爵婦人に話があってな・・・今どちらにお出でかな」
「謁見の間に居られますよ。婦人に会われるならボクもお供しますね」
伯爵婦人に面会するだけなのにCariusが付き添いをするのは自分が部外者扱いだからだろうか。
「おお、誰かと思いきやBurd前隊長ではありませんか!」

隊長の名に前、と付けられて呼ばれたことに、Burdは物悲しさを憶えた。
「やあ、久しぶりだな。元気にしていたか」
「前隊長!おかげさまで我々は皆元気ですよ。前隊長がいなくなった時は皆覇気が無くなったのですが、皆で乗り越えようと頑張った結果、前よりも結束力が固まりました」
「そうか、では自分は伯爵婦人に用事があるのでこれで」
自分がいなくなって前よりチームワーク良くなったってどういうことよ・・・と複雑な思いで謁見場へ向かう途中、今度は横から声をかけられた。
「そこにいるのはBurd?Burdじゃないの?」

振り向くとスチュワードのYvaraがこちらを見ていた。
「おお、Yvanaじゃないか!」
「二人で話された方がいいでしょう。ボクは離れておきますね」
Cariusが気を利かせてその場を離れた。
すぐにYvaraはBurdの側に駆け寄ってきて笑顔を見せた。

「もう、長い間留守にしていたからすっかり忘れていたじゃないの。あれからどうしていらっしゃったの?」
自分のことをすっかり忘れていた?その言葉を聞いてBurdは顔には出さなかったが酷くショックを受けた。
「殿下のお側にずっと仕えていたよ。まあいろいろあったが・・・楽しく過ごさせてもらっていたよ。君はどうだった?」

「ええ、私は大丈夫。ステキな人との縁もあって今はもう結婚してるの。毎日がとても幸せで・・・」
「そうか、君が幸せになれてよかった。結婚・・・おめでとう」
かつての恋人は自分がいない間に前よりも幸せになっていた。
「ありがとう。貴方も幸せそうで良かったわ・・・それじゃ、私は外に用があるのでこれで失礼するわね」

「ああ、またな」
久々の再会も素っ気無く終わってしまった。
ぼんやりしているとCariusが側に戻ってきてBurdにそっと尋ねた。
「どうでした?Yvaraは」

「ん、ああ、幸せそうだったな・・・」
Burdは苦笑するしかなかった。
Yvaraからは自分が幸せそうに見えたのか・・・。
ここに来た時よりもずっしり重くなった足で謁見の間に入り、Burdは伯爵婦人と対面した。
「伯爵婦人、ご無沙汰しておりました」

「Burdではないか、久しいな。向こうでは元気であったか?」
伯爵婦人は現れたBurdの姿にそう驚く様子もなく淡々と挨拶の言葉を述べた。
「こちらに長い間戻れず申し訳ありませんでした。あれからBrumaはどうなったのか気がかりではあったのですが・・・」
「ああ、お前が心配せずとも、Brumaは上手くいっている。お前のガード引退後は、そこのCarius隊長が皆をまとめてくれているので何も問題はないのだ」

「そう・・・ですか」
自分はガードを引退したことになっていたようだ。
「Yvaraも縁があって結婚したことは聞いただろう。何も心配には及ばん」
「わかりました、伯爵婦人。Brumaが良き方向へ進んでいるのならもう私は何も未練はありません」
そしてBurdは携えて来た大剣と、ある大切な物を床に置いた。

「伯爵婦人、これを貴方にお返しせねばと思い、本日ここへ出向いた次第です」
Burdが置いたものは鋼の両手剣とBrumaガード服だった。
「Burd隊長、それを手放すなんてまさか、本当にBrumaガードを辞めるつもりでは・・・」
Cariusは驚いてBurdに詰め寄った。

「ははは、Cariusu、何を今更言ってるんだ。もう自分はガードでも隊長でもないんだぞ。だから隊長と呼ぶ必要はもうない」
「それを返すのか?返せばお前はBrumaガード隊長の全権利を失うのだぞ」
伯爵婦人に問われ、Burdは確然と答えた。
「お話を伺ったところ、もはや私はBrumaには不要です。これがある限り私はガードとしての自分の幻影に縛られたままになります。だからお返しするのです」
「・・・そうか、お前はガードとして非常に優秀であった。望めば再び隊長として受け入れるつもりであったが、皇帝陛下のブレードとして生きる道を選ぶのだな」

「はい、それが天が私に与えた使命ならば、それに従うのみです」
Burdの意思はもう伯爵婦人の言葉に揺れることはなかった。
「私はこれで失礼致します。皆に宜しくお伝えください」

深々と一礼し、Burdは謁見の間を後にした。
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