マーティンをトイレまで連れてきたBurdは、ドアの前で待っていた。
「殿下、大丈夫ですか?」

マーティンは中々出て来ず、返事も返ってこない。
Burdは心配になって、少し大きな声で呼んでみた。
「殿下、返事をして下さいよ!まさか倒れてたりしないでしょうな」
「・・・ふ」

中からかすかに声が聞こえた。
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「殿下?」
耳を澄ますと笑い声が漏れてきた。
「ふははーBurdー見てみろー私の目の前に面白い物があるぞー」

「は?なんですと」
「これは面白い!絶対面白いぞ~!」
「大丈夫ではないようですな。とうとう幻覚が見えてきましたか殿下」

「Burd、ちょっと中にこいー」
マーティンが中から呼んだ。
「なぜ中に(汗」
「いいから入れ~(^^」
Burdは仕方なくトイレに入った。
入ると、中でマーティンが鏡に見入っていた。

「殿下、具合は大丈夫なんですか?」
「来たか、これを見てみろBurd、鏡の向こうのタヌキが私に微笑みかけているだろう?なので私もスマイルで返しているところだ」
Burdが鏡を覗き込むと、笑顔のマーティンが映っていた。
「・・・はいはい、それは鏡に映った殿下ですから。しっかりしてくださいよ、御自分で認めてしまうとは相当酔ってますな・・・はぁ」

「あら、誰か入ってるみたいね。早くしてくれないかしら」

「動けそうですか?体が揺れてますぞ」
「うむ・・・ちょっとだけフラフラしておる」

「あんな飲み方するから悪酔いしたんですぞ!しっかりしてくださいよ、殿下とあろうお方がこんなみっともないお姿をさらして!」
Burdが怒ると、マーティンは悲しそうな顔をした。
「Burdよ・・・大体お前が私を苛めるから、自棄になって飲んだんだ。私だって思いっきり飲んで忘れたいことだってある・・・んだ・・・良いではないか・・・Zzz」

マーティンは眠気を催してきたのかBurdに寄りかかってきた。
「うお、殿下!眠いんですか?こんな所で寝てはだめですよ、目を覚まして下さいっ」
「Burdよ・・・私はもうダメだ~枕を持って来てくれ・・・・」

「殿下、しっかりしてー・・・」
Burdがマーティンに呼びかけて起こそうとした時、唐突にドアをノックする音がして、迷惑そうな女性の声が聞こえた。
「ちょっとー、トイレ入りたいんですけど、まだかかりますかぁー?」

「うおぉ!すみません、今すぐ出ますから!」
Burdは急に他人から声をかけられて驚き、マーティンを突き放した。
「Burd~枕を・・・」
マーティンは目を閉じ笑顔で立ったままフラフラと揺れた。

「殿下、もう戻りますぞ。ご友人がきっと待ちくたびれてます」
「うむー、そうだった、戻らねばな。戻ろう・・・友よー今戻るぞ~」
Burdは酒の影響で動きがだんだん鈍くなってくるマーティンをトイレから連れ出した。

「すみませんな、ささ、どうぞ」
女性はトイレから男二人が出てきたことに驚いて目を丸くした。
「え、あ、あらヤダワ、私お邪魔しちゃったのかしら、ごめんなさいね」
「ご婦人、誤解されておりませんか?彼が酔い潰れてしまったので自分が面倒を見ていただけです(汗」

「うむ~ご婦人・・・こやつの尻はまるで鋼鉄で・・・触るとカチカチでこれは本当に尻なのかと・・・私は抗議したい・・・」
「え、お尻!?あら、もしかして、貴方達カウンター席にいた・・・」
女性が好奇の目で自分達を見始めたので、慌ててBurdはマーティンの袖を引っぱった。
「尻の話を今するのは止めて!(泣)ほら行きますよ!」

Burdはおぼつかない足取りのマーティンの体を支えてやりながら、階段の方へと歩き出した。
「お願いですからしっかりして下さいよ殿下。このお姿をブレード達に見られたら信頼を失いかねませんぞ」
「見せはせんよ・・・ここでだけだ、お前達だけ・・・」
「戻ったら、もう飲んではいけませんからな!もしこれ以上無理なー」
Burdが説教しかけた時、階段の扉の向こうから悲鳴が聞こえた。

「!?」
(うお、な、なんだ今の間の抜けた悲鳴は・・・まさか貴公?何かあったのか!?)

マーティンはすっかり酔い潰れてしまったのか、悲鳴が聞こえても俯いたまま反応がない。
Burdは迷ったが、Miariのことが心配だったので、マーティンから手を離して階段に座らせた。
「殿下、自分は上の様子を見てきますのでここで待っていてください!すぐに戻りますから!」
マーティンをその場に残して、Burdは急いで階段を駆け上がった。
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