「さっきはすまなかった、君を泣かせるなんて私はどうかしてたよ。愚かな私をどうか許してくれ・・・」

Miariを連れて部屋に戻ったマーティンは、側に寄り添って囁いた。
「ううん、いいの。辛かったことなんてもう忘れちゃった。私の方こそ逃げてばかりでごめんね。私、もう逃げないから・・・」
「ではずっと一緒に居てくれるのか」
「・・・はい」
Miariは俯いたまま恥ずかしそうに、か細い声で答えた。
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「殿下、自分もご一緒しますぞ」
マーティンの背後から、の太い声がした。
「なぜお前がこの部屋にいるのだ、招き入れた憶えはないぞ!」

「そりゃ勝手に入らせてもらいましたからな」
喰ってかかったマーティンに対してBurdは悪びれる様子もなく答えた。
「ではすぐに出て行ってもらおう。私は友と二人だけで確かめたいことがある」
「二人きりにはさせません」

「私はもう友とは仲直りしたのだ。後はどうしようが別に構わないだろうが」
「殿下、貴方はついさっきまでご友人を勝手に誤解して疑い、挙句は悪態ついていたのに、その変わり身の速さは何ですか。非常に自分は信用できません。先ほど申し上げたとおりご友人には近づかないで頂きたい」
そしてBurdはMiariに向き直って言った。

「貴公、貴方は殿下を怖がってましたな。すぐに仲良くするのは嫌でしょう?」
「・・・え、私・・・」
Miariは顔を赤らめ、両手で顔を覆った。
「わわわ私、まーくんに甘えたいよぉー!><もうさっきのことはいいから、いっぱい甘えたいー!ぴえーん!>△<」

「ぴえーん!>△<って、貴公らしくない可愛い泣き声上げんで下さい!あああ、すっかり骨抜きにされちゃって!!自分が知っているいつもの鬼貴公は一体どこへいったんですか!?」
「だってーだってー!><私まーくんのこと好きー!一緒にいたいーぴぇええぇえん!>Д<」
「ぴーぴー泣いてないでしっかりして下さい、今の貴公は我を忘れて一時的に混乱してるだけですっ!伯爵をお連れして目を覚まさせたいですよ!」
「Burdよ、お前が私に気があるから友と二人きりにしたくないというのはわかるが、友は私を好きだと言ってくれるし、私も正直お前より友の方が・・・」

「殿下、なぜそう思い込んでるのか自分には理解できませんが、はっきり申し上げますと、自分がそういった目で殿下を見たことは一度もございません」
「照れて嘘を付かなくても良い」
「照れてません、全然照れてませんし嘘も付いてません」
「ではなぜ私達の邪魔をするのだ。・・・まさかお前は友のことが好きなのか?」

「・・・さっき言ったでしょ、彼女は大事な友人だと。好きとかそういう感情はございません。自分の想い人はBrumaにいることをお忘れで?」
「だったら好きな相手といるのを邪魔されたくない気持ちはわかるだろう?私と友を二人きりにさせてくれ」
「嫌です」
「Burd、お前・・・」
「何とでもいいなさい。自分はテコでもあなた方から離れませんからな!」

Burdとマーティンは無言で睨み合い、気まずい空気が三人を包んだ。

先に沈黙を破ったのはマーティンだった。
「嫌だ嫌だ、何だこの陰気臭い空気は。折角の旅が台無しではないか。ふむ、こういう時はぱーっと気分転換に飲みに行くのが良さそうだな。君達、外にちょっと出よう」
Burdは急なマーティンの申し出に、はぁ?と拍子抜けして聞き返した。

「友よ、近くに酒場はあるかな」
「え、ええ、あるけど・・・」
「では案内を頼む」
「殿下、勝手な行動はとらんで下さい」
「Burd、お前とは1度酒を飲み交わしたいと思っていた。良い機会だから行こう」
「行こうって、そんな気軽に言われましてもな。貴方の正体がバレたりでもしたら・・・」

「派手な行動はせんから大丈夫だ。寺院に戻ればもう自由はなくなる。私が一個人として楽しめるのはもう今しかない。頼む、どうか私のわがままを許してくれ」
哀しげな表情を浮かべ、懇願するマーティンにBurdは情が湧いてしまい、渋々承諾した。
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