部屋には私たち以外に女性が二人居て噂話をしていたが、気になる程でもなかった。
マーティンは椅子に座って読書を始めたので、私も向かい側の椅子に座った。
目の前に本が置かれていたので、それを読んでも良かったのだけど、真剣な表情で本を読んでいるマーティンを見ていることにした。
あれ・・・
何だかいつもより素敵に見えるのは、眼鏡掛けて読んでいるせいかしら。
カッコイイわね・・・とすっかり見蕩れてしまった私の表情は緩みきってしまった。
「?」
私の視線に気付いたらしく、マーティンは顔を上げた。
「どうしたのだ、私の顔をジロジロ見て」
「まーくんが眼鏡かけてるの珍しいなって思って」
「ああ、眼鏡を見ていたのか。これがないと本を読むのが辛くてね」
「辛い?なぜ辛いのかしら。あ、わかった、老眼鏡なのね!」
「ははは、まさか!これは老眼鏡ではないぞ。ただ最近小さな文字が読み難くてね、これを掛けると見易くなるのだ」
「それが老眼鏡じゃない。別にいいのよ、まーくんは眼鏡が似合っててカッコイイのは間違いないんだし」
「・・・格好いい?では読書する時だけでなく、これからは一日中眼鏡をかけておくことにしよう」
「まーくんたら、もう、やだー。寝る時も眼鏡はずさないつもり?そこまでしなくてもいいのよ、あははっ」
「友よ、それはあんまりだ!寝る時も眼鏡していたら、夢までクッキリ見えてしまうじゃないか、はっはっは!」
(なんなんだ、あのバカっぽいどうでもいい会話は!殿下ときたら腹抱えて笑ってるが、そこまで笑える内容か!?)
Burdは物陰から二人の様子を見ていたが、あまりの下らない会話に呆れてしまった。
(まーくんまーくんって、可愛く呼んでいるが殿下は子供じゃないんだから止めて下さいよ、ったく。でも、自分もたまには優しくそんな風に呼ばれてみたい・・・)
自分の名前はいつも呼び捨てにされているので、可愛がられている(ように見える)マーティンが羨ましいと思ってしまったBurdだった。
(Brumaガード時代のモテモテだった頃が懐かしいな・・・スチュワードや伯爵婦人は元気にしているのだろうか)
機会があったら1度Brumaに帰って様子を見に行かねばならんなと、Burdはぼんやりと考えた。
「ねえ奥様、この国はいつまで皇帝の不在が続くのかしらね。先が心配になってきたわ」
側で会話をしていた女性二人の噂話がBurdの耳に入った。
(うおっ、その話題を今ここでされるのはまずいんじゃないか?)
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