「まーくん、とぼけないでよ><普通に喋ったぐらいで女の子がキャーキャー喜ぶわけないじゃない!!」

「何を言っているんだ、私はいつもの話し方で喋っているだけだぞ」
「だったらキャーキャー言われる度に嬉しそうな顔なんかしないで!わわわ私だって、まーくんの声好きなんだから!!」
感情が抑えきれなくて、言いたくもない言葉が口を吐いて出てくる。
「友よ、私は嬉しい顔もした憶えはないのだが・・・一体どうしたんだ、君らしくも無い。頼むから落ち着いてくれないか」
マーティンの顔を見ているとなぜかジンワリと目が潤んできて、私はあわてて顔を背けその場から離れた。

「なぜだ・・・私は怒らせるようなことはしていないぞ。何がそんなに気に入らないんだ」
自分でも何でこんな態度をマーティンにとっているのかわからなかった。
[1回]
背を向けたまま黙っていると、コツコツとヒールの音がして、すぐ後ろから声がした。

「ちょっとアンタ、何そのガキっぽい態度。この程度で嫉妬なんかするんじゃないわよ」
・・・嫉妬?
振り向くと少女が呆れ顔で私を見ていた。

「嫉妬じゃないわ」
「どうみたって今のは嫉妬じゃない、みっともなーい」
「嫉妬じゃないって言ってるでしょ?貴方がキャーキャー騒ぐから、腹が立っただけよ」

「それ嫉妬じゃん。あんた、それくらいで振り回されるようじゃ、中身は相当ガキね」
「失礼ね><そりゃあ、自分でも子供っぽいと思ってるけど、貴方に言われたくないわよ!」
「アンタさ、やっぱその服着る資格無いわ。ガキのアンタがお尻見せて男誘おうなんて500年早いわよ」
「さ、誘ってないわよ!なんで500年なのよ!この大胆すぎるスリットはね、着て初めて気付いたんだから!!」

「ていうかさぁ、なんでエルフが人間の男に嫉妬してんのよ。声以外は、ただのおっさんじゃない。アンタも変わってるわね。とにかく、嫉妬深い女はすぐ嫌われるわよ。気をつけることね」
「まーくんはただのおっさんじゃないし、嫉妬なんかしてないって言ってるでしょ!」
「アンタほんとにバカじゃないの!?」
口喧嘩がヒートアップして取っ組み合いになるかと思ったその時、マーティンが私と少女の間に割り込んできた。
「友よ、いい加減にしなさい」

「・・・まーくん」
「こんな所で喧嘩している場合じゃないだろう?私に非があるのなら謝るから、なぜそんなに怒ったのかきちんと話してくれ」
話せと言われても、何も言えなかった。
「おじさん、話せと言ったってこういうコトは感情で言ってんだから説明はムリよ」

少女は静かに言った。
「女はね、感情で動いてしまいやすい性質なの。特に恋愛してる子ほど、その傾向が強いのよ。アンタってさ、感情で動いて勝手なことしたりして周囲を困らせているんじゃない?」
私はその言葉に思う部分があってドキリとした。
何も答えられずにいると、少女は不敵な笑みを浮かべた。

「あれ、テキトーに言ったのにもしかして図星?」
「う、うるさいわねっ!そこは素直なのねぐらいに言ってよ><」
「普通、エルフは人間の男に嫉妬したりしないから珍しいわアンタって。どこまで親しい関係かは知らないけど、先じゃ前途多難になるのが目に見えてるわね」
「前途多難だと?なぜだ」
マーティンが聞き返したが、少女は大きな目を楽しそうにくりくりさせただけだった。
「いずれわかると思うわよ。じゃああたしは用があるから行くわ。素敵な声聞かせてくれてアリガトね、おじさん。バイバイ」

そう言い残して、少女はどこかへ行ってしまった。
「・・・さっきはごめんなさい」
時間が経って落ち着きを取り戻した私は、怒り散らしていた自分が恥ずかしくなって、俯いて謝っていた。

「怒るのも無理はない。初対面の子にオバサン呼ばわりされれば、誰だって同じように怒り出すさ」
「違うの、そこじゃなくて、私がまーくんに八つ当たりした事よ」
「そっちか。まあ怒られたのは驚いたが、素の友が見れたからいいよ」
えー、さっきのが私の素と思われても><と思ったけど、あまり余計なことを言っても拗れそうな気がしたので何も言わなかった。
「旅の疲れが出ているのかもしれないな。図書館に行ったら少し座って休むといい、さあ行こうか」

「そうね・・・そうしましょ」
図書館はすぐ目の前だった。

(市民図書館か・・・)
「どこへ入って行くのかと思ったら図書館ですか。なんという真面目かつ健全なデートコース。殿下は本を読み出したら止まらないのに大丈夫なのか?」
Burdは図書館の入口に目をやりながら呟いた。

「それにしても今回はツッコミネタが豊富に入手出来そうで心躍りますな。あの二人にはいつもおちょくられているから、ネタを掴んで後で反撃してやりますぞ、ふっふっふ」
本来の目的を忘れかけているBurdであった。
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