「気に入った女性なら・・・って、それってもしかしてまーくんが私のこと気に入ってるってこと?」

私は思わず目が真ん丸になった。
マーティンは照れくさそうに笑いながら答えた。
「なんとも思わない相手と二人だけで、こんな所まで来たりしないよ。おや?私としたことがヒントになってなかったな、ははは」

「まーくん・・・」
私も照れ臭かったけど、気にかけてくれてるというその言葉が嬉しかった。
それなら、着てみてもいいかなという気になってきた。
[1回]
「嫌なら・・・無理して着なくてもいいんだ」
マーティンがチラリと見せた寂しそうな表情を見て、私の心は即座に決まった。
「ま、待って、着る!私、着てみるわっ!」
「おお、お嬢さん、ワシの頼みを聞いてくれるのか」
「はい、おじさん、セクスィー服貸して下さい。まーくんが喜んでくれるなら、私着ます!」

おじさんの顔がみるみる満面の笑顔になった。
「そうかそうか、じゃあ早速部屋を借りて試着してみようね。ではダンナもご一緒にお願いしますよ、どうぞこちらへ・・・」
「おいおい、なんで3人仲良く宿に入って行くんだ」

Burdは3人が入っていった宿の扉の前に慌てて駆け寄った。
「会話が聞こえないから何があったのかさっぱりわからん(泣。自分も中に入りたいが、鉢合わせして見つかるわけにはいかないし」

「何かあっても貴公が本気になれば男二人蹴散らすぐらいどうってことないだろうが・・・いやまて、それで殿下が蹴散らされたら洒落にならないぞ(汗」
Burdは悩んだ末、外で3人が戻ってくるのをこの場で待つことにした。
私たちは二階の部屋を借りて、そこに入った。
おじさんは上機嫌で鼻歌を歌いながら、二種類の服が入った箱をベッドの上に置き、説明した。

「デザインは同じなんだけど、白と黒の色違いがありましてね。好きな方を着るといいよ。ああ、露出度は抑え目なBAB服を用意したから安心して着てね」
「それなら友も大丈夫だろう。では私たちは外で待っているから、着替えたら教えてくれ」

「慌てなくていいからね、お嬢さん。ゆっくり好きな方を選んでね」
そう言って、二人は外へ出て行った。

(どっちにしようかな・・・)

私は並べられた二種類の衣装を見下ろながら考えた。
とりあえず白を着てみようかしら。
どんな服なんだろうとちょっと気分を高揚させながら、私は鎧を脱ぎ捨てた。
「試着したわよ、どうぞ入って下さいな」
扉の向こうに呼びかけると、扉が開いて二人が現れた。

私を見たマーティンの表情がハッとなったのがわかった。
「白の方を着てみたんだけど、どう、似合うかしら?」
よく見てもらおうと体を左右に振りながら尋ねた。

「これは上々だな。良く似合ってますよお嬢さん」
「・・・」
マーティンは何も話さなかった。
話さないというより、言葉を失っているという感じだったが、二人の視線が、私の身体のある部分に釘付けになっているのに気付いた。
どこを見ているのだろうと、視線を追うと、右のウエスト部分から開いているスリットから、下肢が露になっていて、どうやらそこを・・・。
「ちょっと、二人ともどこ凝視してるのっ!おじさん!このスキマ開きすぎじゃない!?もしかして私のおしり横から見えてるんじゃないの!?」

「だからそれセクスィー衣装って言ったでしょお嬢ちゃん。でもね、このくらいまだまだ序の口なのよ?ワシとしてはもっと露出高いの着てもいいと思うんだけど、ダンナが困ってるからそれくらいで止めとこうかね」
マーティンは黙って背を向けてしまっていた。
「どうしたの、まーくん」
「すまない、思っていたより・・・・・・ったから驚いたんだ」

・・・ったから?
な、なに?なんて言ったのかしら。
肝心な部分をボソボソとわかりにくく言われ聞き取れなかったので、私は聞き返した。
「まーくん、今何て言ったの?」
マーティンは、なぜか笑ってごまかし教えてくれなかった。
「とにかく、よく似合っているよ。さっきの格好も良いが、私は個人的にこちらの方が好きだな。友が良ければ、その格好でいてくれないか」
「う、うん、まーくんがそう言うなら・・・」

「ちょっとアドバイスさせてもらっていいかね?」
おじさんが私を見ながら言った。
「二人で街を歩くつもりなら、黒を着た方がいいと思うんだ。ダンナが全身黒だからね、お嬢さんも黒で合わせたらどう?」
「でも、まーくんこれが気に入ったんじゃ・・・」

「友が好きな色を選ぶといいよ。私はどちらでも構わないから」
「じゃあ、黒に着替えるわ。私、まーくんに合わせたい!」
Burdは1人、宿の外でひたすら待っていた。
「3人とも戻ってこないな、何をしているのだろう。入ってみるべきだったか?いやいや、私は殿下を守るブレードであって、アレを守る為に居るわけではないんだ、自分の身ぐらい自分で守れるはずだ」

「でも悲鳴が聞こえたら助けに・・・お、話し声がする、戻ってきたらしいな」
3人に気付かれないよう建物の陰に急いで隠れた。
そっと覗き込んで様子を伺うと、Miariの服装が変わっているのに気付いた。

(な、なんだありゃ!!なんでさっきと違う服装になっているんだ!?しかもなんだ、ケツ、いや、足なんか見せて!あんな姿の貴公なんて見たこと無いぞ自分は!)
「おじさん、どうもありがとう。服をただで譲ってくれた上に二着ともプレゼントしてくれるなんて・・・ホントにいいの?」

「いいんだよ。おじさんはBAB服を普及させるのが仕事だからね。こちらこそ素直にお願い聞いてもらって嬉しかったよ。声をかけてもいつも無視されたり痴漢呼ばわりされたりと散々な目にばかりあってたから、今回上手くいっておじちゃん大感激さ」
「よくわからないけど大変なお仕事なのね。この服は大事に使わせてもらうわ。本当にありがとう」
「それでは私は失礼するよ・・・お二人さん、Imperial City Dateを心行くまで楽しんでいってね」

BABオヤジは一礼するとその場を足早に去っていった。
次は、どこに行こうかな・・・
私は少し考えて、そうだ、あの場所にマーティンを連れて行こうと思いついた。
「まーくん、帝都には植物園があるんだけど、そこには図書館があるから行ってみない?」

「いいね、帝都なら蔵書も多そうだ。どのような本が置かれているのか興味があるから、ぜひ案内してくれ」
(貴公、その格好で街中を歩くつもりですかっ!目の毒だからやめて下さいっ!!)

Burdは大声で叫びたい衝動を必死で抑えながら、心の中で突っ込んだ。
(殿下もそんな格好を友人にさせなくても・・・実は殿下はムッツリなんじゃないか?あれで余計に人の目を引かなければいいが。うう、頼むからどうか面倒起こさないように行動して下さいよ)
「おい、そこの男、ちょっと待て」

「な、なんしょうかガードさん」
「胡散臭いオヤジが若い女を宿に引きずりこもうとしているという通報が市民からあったんだ。やったのはお前だな、お前だろ!間違いなくお前だ!」
「ん?貴様、以前1度逮捕された奴ではないか、またやったのか!呆れた奴だな」
「待ってくださいよ、ワシは何も・・・」

「言い訳は詰所で聞く、さあ来い」
「簡便して下さいよ。ワシはただ、仕事で声をかけていただけですよダンナ方」
「黙れ黙れ、つべこべ言わずに来るんだおっさん」
「フッ・・・・結局こうなるのか・・・やれやれ。だがワシはこれくらいではヘコタレはせんよ・・・」

BABオヤジ・・・彼の名はBAB服の伝道活動師として古今東西、これからも広く長く語り継がれていくのであった。
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