「君たち、今何時かな?」
読書に耽っていたマーティンが時間を尋ねてきた。

「夕方5時ぐらいですかな。何か予定でもおありで、殿下」
そうか、と呟きマーティンは立ち上がった。
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「食事の支度をせねばならん」
「食事の支度?誰がですか?」
Burdが神妙な顔で聞き返した。
「私が用意するのだ」

「殿下が?なぜそんなことを」
「驚くほどのことではない、いつもやっていることだぞ」
マーティンはあっけらかんと答える。
「またそんなご冗談を」
「本当だ。見ろ、このように厨房もあるではないか」

マーティンは私たちを寺院の隅に連れてきて、調理器具が揃った厨房を見せた。
「えぇえ!?うお、なんかオーブンまであるし。寺院にこんなもんありました?前はなかったような・・・」
Burdが不審気にキョロキョロと見回していたが、マーティンは構わず側にあった服をとって、それに着替えた。
「友よ、今日の晩御飯は何がいいかな?(^^」

「まーくんが作るものだったらなんでもいいわよ」
「・・・殿下、なんですかその主夫もどきな格好は」
「これはエプロンだ、そんなこともお前は知らんのか」
「知ってますよ!私が言いたいのはそれが恐ろしく殿下に似合っていないということです」
「似合ってなくても良い、要は如何に美味しい物を作るかという心構えが大切なのだ」
マーティンは背中を向け、料理を作り始めた。

「友の好きそうなものを作ってみよう。作るのに少々時間がかかるから、それまで向こうのテーブルで座って待っていてくれ」
「はぁい、どんな料理ができるのかしら、楽しみ~」
「殿下・・・なれない事して包丁で手を切ったりしても知りませんからな」
「何を言うBurd、私は料理はお手の物だぞ。魚の三枚おろしなど目をつぶってでもこなせるのだ。お前の分も用意するから向こうで待っていてくれ」
Burdとテーブルに座って待っていると、料理が次々と運ばれてきた。

ケーキやパン、フルーツなど、色鮮やかな料理が並べられた。
「よ、夜の食事にしてはスイーツばかりですな、殿下」

「今日は新鮮な魚介類や肉が手に入らなかったせいもあるが、うっかり友の好きそうなものだけを作ってしまってな。それで我慢してくれ」
「・・・わざとらしい説明的なセリフですな殿下。以前みたく台本を読みながら演技してませんか?」
Burdが訝しげにマーティンに尋ねる。
「台本などない。さて、友よ、御注文は以上でよろしいかな?(^^」

「うん、ありがと、まーくん」
「君たち、絶対わざと私の前で演技して遊んでますな。私は騙されませんぞ」
「そんなこと無いわよ~、ほら頂きましょう」

「そうですな、お味の方は・・・モグモグ。おお、これは中々いけますな」
「だろう?では私もいただくとするか」
マーティンはエプロン姿のままBurdの横に座って、自分も食事を取り始めた。

「ふう~、この一杯がたまらんな。毎日ブレードたちの食事を用意するのは大変だぞBurd。今度からお前も手伝えよ」
ワインか何かのお酒をグイグイと飲んでいる。
「は?またご冗談を。殿下がブレードの食事係なんて私は聞いた事ありませんよ!」
「失礼な、これくらいいつも世話になっているブレードに対して、私がしてやって当然だと思っているのだよ、Burdちゃんよ・・・ヒック」

「うご、酔っ払っているんですか殿下?下戸っていう話も聞いた事無いんですが。ああああ、そんなにガブ飲みして。飲めないなら無理して飲まなくたっていいんですよ!」
「ヒック・・・何?私の酔拳が見たいだとぉ?そうか、待っていろ・・・後でお披露目してやろうれはないか・・・ああん?」
「いや、結構ですから。そんなこと頼んでないし。どこまで演技なのかわからなくなってきましたよ私。もう殿下が、ただのおっさんに見えてきました(泣)」
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