「貴公、よほどそれが欲しいみたいですな」
「欲しくなんかないわよっ子供じゃあるまいし><」

「だったら座り込んで食い入る様に見つめなくてもいいでしょうが」
「疲れたから座って見てるだけよ><」
[0回]
私が違うと言い張れば言い張るほど、Burdはしつこく突っ込んでくる。
「なぜ意地張るんですか?ははあ・・・わかりましたぞ。女らしい姿を我々に見せたくないから、突っぱねているのですな。普段はモンスター相手に勇ましく戦う男勝りな貴公にも、そういったかわいい面があったとは驚きです、ははは」

私は立ち上がってBurdに食ってかかった。
「うがー!(>皿<)もうほっといてよ!なんで私がこんな子供っぽいおもちゃを欲しがらないといけないのよ!」
「そう意地張らずに、おもちゃをだっこされてみてはいかがですかな?きっとかわいい姿になられると思いますぞ」
Burdは笑いながら私を見ている。
「Burd、貴方いったい私に何をさせたいわけ?」
「たまには剣ではない物を持ってみられてはどうですかなと提案させてもらっただけです」
「いや!絶対こんなのより、剣が私には似合うわ!剣しか私に似合わないったら似合わないのッ!」
あまりにからかわれるので気恥ずかしくなり、私はBurdを置いて部屋を出た。
「どこに行くんですか、貴公。おもちゃは持って行かなくていいんですか~欲しいんでしょ~?」

「いらないったらいらないー。雨が止んだかどーか外の様子を見てくるわ」
「はいはい、そうですか、いってらっしゃい」
外に出ると、すでに雨は止んでいた。

まだ雲っていたが、これでもう濡れずに帰ることが出来るわね。
辺りがなんとなく暗い。
西側の雲の向こうが明るいのを見ると、日が落ちかけているのだろう。
戻って二人に教えてこなくっちゃ。
「ねえ、雨が止んでたから、もうそろそろここを出ましょう。もう遅くなってしまったから、殿下は寺院へ戻った方がいいわ。私も戻って計画練らないといけないし」

「もうそんな時間か?そうだな、戻ろう。Burdよ、友が近日中に必ずお前を貰いにくるから待っていろよ」
「貰いにって・・・私がまるで嫁にでも貰われていくような変な言い方せんで下さい(汗」
3人で外に出て、門の前まで歩いて来ると、Burdが私を呼んだ。

「貴公は殿下とご一緒に寺院の方へ戻られるのですかな」
「そうするわ。寺院に行って、伯爵婦人を説得する仕事の作戦をじっくり考えないといけないし」

「ああ・・・本気なんですな。あの二人は手強いですぞ。頑張ってくださいとしか私は言えませんが、いざと言う時に強い貴公ならやれるかもしれません。逆に殿下はそんな時ほどマジメにやらないイメージがありますがな」
「なんだそれは。どのような些細な事でも真剣に取り組んでいる私に対して失礼だぞ」
「ほう、それでは私をおちょくるのも真剣にやってることの1つなのですかな」
「当たり前だろうが。それこそ真剣にやらずにどうする」
「・・・殿下とマジメな話をすると疲れますぞ。ではもう私は失礼・・・おっといけない、これを貴公に渡すのを忘れる所でした」

「何?」
私が側に寄ると、Burdはいつ持ち出して来たのか、一匹のクマの縫いぐるみを取り出して私の前に差し出した。

「えっ!?これって・・・」
「貴公、欲しかったんでしょ、それ」
「勝手に持ち出してきたの!?Burd、貴方ガードでしょ!?こんなことしたらドロボーじゃない!」

「いいんです。貴公がどう見ても欲しそうなのに、いらないと突っぱねるのを見ていたら、逆に渡したくなりましてな。持ち出したことは気にせんで下さい。家人が戻ってきたら、私が事情を話して勝手に拝借したことを謝罪しておきますから」
「そんなことしなくても良かったのに・・・」
私はまさかこんなことをガードであるBurdがするとは思わなかった。
「・・・いらないんですか?迷惑だったら返してきますが」
「いえ、貰うわ・・・ほんとはこれかわいいからすごく欲しかったのよ・・・ありがとうBurd」

「良かった、喜んでもらえて嬉しいですよ。貴公にもそういう可愛い物が似合うんですな」
Burdはにっこりと笑った。
横から私達のやり取りを見ていたマーティンがBurdに話しかけてきた。
「Burdよ、お前が持ってきたのなら、大丈夫だな」
「は?何がですかな、殿下」
「実はどうしても欲しかった本を一冊拝借してきたのだ。見逃してくれるな(^^」
「殿下ーーっ!!何ちゃっかり持ち出しているんですかーっ!」「急に大声を出すな。家人には借りる旨を手紙に記して残してきたから心配は無用だ」
「そういうことではなくてですな。殿下とあろうお方がそのような事をして、周りの者達に知れたらどうされるのですかっ!あの家の者にだってどう謝って・・・って、おや?」
家の方に振り向いたBurdの言葉が止まった。

「何、どしたの?」
「・・・家が、ない」
「え?」
「なんだと?」
振り向くと、確かにあったはずの場所から丸ごと家が消え去っていた。

しばらく、皆沈黙したままだった。
「・・・ただの家ではなかったのだな」
マーティンが呟いた。
「なんだったんだ、一体・・・貴公、おもちゃは残ってますか?」

「あるわよー、ほら」

私はくまさんをだっこしてBurdに見せた。
「・・・やはり、欲しいものを与えてくれる家だったのかもしれませんな」
「私は本で、友はおもちゃか・・・まて、するとBurdの分はなんだったのだ?お前は何も持ち出してこなかったのか?」
「友人に渡すもの以外は何も持ってきていませんよ。あの家には私自身がが欲しいと思うような物はありませんでしたから」
「何もなかっただと?それは変だぞ、欲しいものがお前には何もないのか?」
そう言われたBurdは意味深な笑みを浮かべてマーティンに答えた。

「欲しい物は、形がある物とは限りませんぞ、殿下」
「なんだと」
「・・・?何ニヤニヤしてるのBurd」
「なんでもありませんよ」
Burdは私に穏やかな笑顔を見せた。
「それでは自分は城に戻ります、また近いうちお会いしましょう」
Burdは一礼して城へと戻っていった。

「・・・絶対何かを手に入れているな」
「ええ・・・一体何をBurdは持ってきたのかしら」
考えたけれど、全然わからなかった。
「友よ、寺院に戻って最終計画を練ろう。Burdは必ずブレードにしなくてはならん。失敗はできんぞ」

「殿下、なんだか私より気合が入ってるみたい」
「彼をブレードにするのは、私が何よりも切望していたことだったからね。絶対に私の・・・」
「殿下?」
いつものように冗談半分で言っているのかと顔を覗きこむと、マーティンの顔は真剣そのものだった。
これは、マーティンを喜ばせるためにも頑張らないといけないわね!
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