「どうしたの、なんでそんなとこで突っ立ってるの?」

話が終わってマーティンと書斎を出ると、反対側の部屋の入口の前で立ち尽くしているBurdの姿があった。
「貴公、この家はやはりおかしいですぞ。部屋の中に奇妙な物が沢山あって気味が悪く中に入れなかったのです」

「中に何かあるの?」
「御自分の目で確かめて見てくださいよ」
私はBurdの横を通り抜けて部屋の中をのぞいた。
「きゃあああ~!」
[0回]
「な、なんだ、どうしたのだ」
私の黄色い悲鳴にビックリして、慌ててマーティンも部屋に入ってきた。

「なんだこれは・・・」
部屋の中を見て、マーティンは唖然としていた。
その部屋の床やベッド、棚の上には、かわいらしい熊の縫いぐるみやオモチャが並べられていたのだ。
どうしてこんな物がこの部屋にあるのだろう。

私は縫いぐるみたちに目を奪われていた。
「なんだ、この部屋は・・・誰もいないと思っていたが、この家には誰かいるのか?」
「我々以外の人の気配は感じんのですよ。こんな物が置かれていては気味が悪いですな。貴公もそう思うでしょ?」
「・・・・」
「貴公?なにぼーっとしてるんですか」
「・・・え?あー、そ・・・そうね、気味が悪いわ。なぜこんなのがこんなにたくさんあるのかしらね」
「明らかに不自然ですな。誰かがわざと我々を陥れる為に置いたのかもしれません」
「ほらほら見てっ!こっちにもクマさんと怪獣のおもちゃがあるわっ」

「話聞いているんですか?気をつけてください、何かの罠かも知れませんぞ」
「罠?そうね、気をつけないと・・・よく見ておかないと・・・」

クマの縫いぐるみや積み木のオモチャ、宝石なのかキラキラしたガラス玉も散らばっていて綺麗だ。
・・・・こんなのを家に置けたら心がすっごく和みそうだわ。
かわいいなあ・・・・これ欲しいなー・・・。
でも、誰の物かわからないのに勝手に持ち出すわけにはいかないし、第一「かわいいーこれ欲しいー!」なんて子供っぽく喜んでる姿を彼らには見られたくないTT
私ははしゃぎたくなる気持ちをぐっと堪えて、クマさんの縫いぐるみを眺めていると、後ろからマーティンが気遣うように声を掛けてきた。
「友よ、どうしたのだ?それが欲しいのか?」

「・・・い、いえ、欲しくて見てるわけじゃないのよ、珍しいだけ!子供じゃないんだから、こんなのかわいいとか思ってるわけじゃないのよ><」
「欲しいんでしょ?ほほう、貴公もそういう物を愛でる女らしい心があったんですな」
ニヤニヤしながらBurdが見ている。
「違うってば><」
Burdには特に私のそんな面恥ずかしくて見せられないわ。
「欲しいのなら貰っていったらどうだ?」
「殿下、何を申されてるんですか!人の物を勝手に拝借しようというのですか?」
「Burdよ、どうも先ほどから気になっていたのだが、この家はただの家ではない」

「だからって盗っていいという理由にはならないでしょ」
「最後まで私の話を聞け。むこうの書斎にあった本のことなのだが、不思議なことに私が欲しいと思っていた本ばかり置かれてあったのだ。誰かが私の為に用意して置いてくれていたとしか思えん」
「するとなんですか、この家は我々が欲しいものを提供してくれる夢のような家というわけですか」
「うむ」
「うむって、そんな都合のいい家があるわけないでしょ?偶然ですよ偶然!偶々殿下の趣味に合う本や、貴公が好きそうな物が置かれていただけですっ」
「夢のない奴だな、もうお前には相談せん。私は書斎に戻って本を読んでくる。もう絶版になって手に入らない希少な本を見つけたのだ!意地でも全部読んでやるからな!」

そう言うと、マーティンは肩を怒らせながら部屋を出ていってしまった。
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