扉を開けて外へ出た私の目の前には、町の外へ続く道を阻む、重々しい鉄の門があった。

ここから脱出できないだろうか。
私は門を押してみたが、頑丈な鍵がかかった門は、びくともしなかった。
安全な外がすぐ目の前にあるというのに、出ることが出来ないなんて、なんてもどかしいの・・・。
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ここはちょうど町の裏手に当たるようだ。
私は裏庭を通って、礼拝堂がある方に向かうことにした。

周囲の様子を伺いながら進んでいく。
裏手の道には数体のゾンビがうろついていた。

襲ってきたが、この銃さえあればもう怖くはない。
私は彼らをすぐに蹴散らし、Juliettaの元へ急いだ。

「よかった、無事だったのね!もう戻ってこないかと思ってた」

私が戻ってくると、彼女はパッと明るい顔になって駆け寄ってきた。
「この銃があれば町から出られるわ、もう安心よ」
私は銃をJuliettaに見せた。

「すごい、見つけたのね!でも、それで大丈夫なの?怖いわ・・・」
不安そうに銃を見ていたが、私はこれでゾンビを余裕で倒して戻って来た事を教えてあげた。
「さあ、ついてきて、これで必ず外に出られるわ!」
私は彼女に後を付いてくるよう指示し、外へ飛び出した。

広場に続く階段の手前で私は立ち止まった。

町の様子がなにかおかしい。
私は耳を澄ませた。
「どうしたのかしら・・・さっきまであれほどいたゾンビの声が全然聞こえないわ」
ゾンビの呻き声がまったく聞こえない。
それどころか、町は普段の夜の静けさに包まれていた。
「ええっ?奴らが夜に居なくなるなんて、そんなこと今までなかったわ!」
Juliettaは怯えながら私を見た。
私達はゆっくりと階段を上がった。
町の広場にゾンビの姿は一体もいなかった。
しかし、巨大なモンスターが門の前に立ち、出口を塞いでいた。

「どういうこと・・・?どうしてあいつがいるの!?」
私はたじろいだ。
あんなのが居座ってるとは思ってもみなかった。
「きっとやつらのボスだわ!私達が出られないようあの場所で待ち伏せてるのよ!・・・もうお終いよ!!」
「行くしかないわね」

私は覚悟を決めた。
「貴方はここで待ってて、私がヤツを倒してくる」
「倒すって、勝てるの!?」
「一か八か、これに掛けるしかないわ」
私は銃をJuliettaに見せて言った。
「もしダメだったら・・・隙を見て逃げてちょうだい。今なら出口を塞いでいたゾンビの大群もいないし、逃げられるはずよ」
「イヤよ、お願い、そんなこと言わないで、1人で逃げるなんて出来ないわ!必ず勝ってちょうだい!!」
私はJuliettaをその場に残し、モンスター目指して走り出した。

近くに寄ると、その巨大さに驚かされた。

なんなのこのモンスターは!?
こんなのに攻撃喰らったらひとたまりもないわ!
巨大なモンスターは唸り声を上げて私を叩き潰そうと両腕を振り上げた。

今だわ!!
私はモンスターに向かって銃の引き金を引いた。
ドギューーーン!!!町中の静けさを引き裂くような銃声が響き渡り、炎弾はモンスターの頭に命中した。

モンスターはその巨体さが信じられないほど軽々と吹っ飛んだ。

なんて威力・・・!!
私は地面に叩きつけられるモンスターを呆気に取られながら見ていた。
どうしてこんな武器があの家に・・・

倒れたモンスターを棒立ちのまま見据えている私の耳に、遠くからまたあのゾンビの呻き声が聞こえた。
やつらが戻ってきた?
早く逃げないと!
私はJuliettaを大声で呼び、二人で一目散に町の外へと走った。

町の外へ出ると、近くの小高い丘の上まで一気に駆け上がった。
・・・もうここまでくれば大丈夫だろう。

私達は丘から町を見下ろした。
外に脱出できたことで、張り詰めていた緊張がじわじわと解けていった。
「ありがとう、貴方のおかげで助かったわ」

彼女は安堵の表情を浮かべて私に話しかけてきた。
私はいいえ、と頭を振った、
「貴方のおかげよ。あの武器を見つける事が出来なかったら、脱出するのは不可能だったわ」
「それを取りにいったのは貴方じゃない。私は怖がってばかりで何もしてないんだから、素直に感謝させてちょうだい」
Juliettaは頭を軽く下げて感謝の意を示してくれた。
なんだか私は照れくさかった。
いつの間にか辺りはうっすらと白み始め、明るくなってきていた。
「これからどうするの?」

私はJuliettaに訪ねた。
「組織に戻ってこのことを報告しなくてはならないわね。生き延びたのは私だけだし・・・それで、貴方は?」
「私は、旅を続けるわ。いろんな場所を巡るのが好きなの」
「そう、どこへでもいけるんだ、羨ましいな・・・。では私達はここでお別れね・・っと、1つ貴方にお願いがあるの」
Juliettaは言い難そうに、私が持っている銃を見ながら言った。
「その銃を私に預けさせてもらえないかしら」
「え、どうして?」
私は思わず聞き返した。
「組織に報告する為に、なるべくここの情報と物証が必要なの。その銃は珍しい物の様だし、それがあの町に置かれていたってことは、町の謎を解く重要な手がかりになるわ」

・・・渡していいのだろうか。
この銃はとても強力だ。
もし間違ったことに利用されたら、とんでもないことになる。
私がためらっていると、Juliettaは私の不安な心を察したのか、遠慮がちに言った。
「信用し難いのも無理はないわね。貴方には私が所属している組織のことを話すことは出来ないし、見つけ出したのは貴方なんだから、どうしても無理なら貴方が持っていてもいいのよ」
「・・・いえ、これは貴方に預けるわ」
助かったのは彼女のおかげだ。
町の謎を解く鍵になるのなら、渡さない訳にもいかない。
それに、私がこれを持っていても宝の持ち腐れになるだけだ。
私は銃をJuliettaに手渡した。
「有難う・・・信用してくれるのね。安心して、これは私が責任を持って預かるわ」

Juliettaは銃を渡したことの後悔はさせないと、固く約束してくれた。
それがある限り、この事件を思い出してしまうのだから、手放して正解だろう。
「じゃあ、私は行くわ。Julietta、元気でね」

「本当にありがとう・・・貴方もお元気で」
さあ、旅に戻ろう。
空の闇は知らぬ間に消え、ようやく朝が戻ってきたようだ。

・・・長い夜だった。
私はシャドウメアの背中で揺られながら考えていた。
あの町はいったいなんだったのだろうか。
よく考えてみると、以前ここを通った時はあんな場所に町など無かった気がする。
それにあの大量のゾンビやモンスター・・・
誰かが統制をとらなければ、あのような行動は出来ないのでは。
それに、広大な屋敷も長い間、人がいなかったとはとても思えなかった。
・・・やめよう、いくら考えても答えは出ない。
すごく疲れてしまった。
早く安全なところで一息つきたい。
今日はこのまま都市に向かって、そこで休もう。
あの中なら、モンスターに襲われることも無いしね。
THE ENDPR