「殿下がDaedra関係の知識に詳しいという事も私には初耳だが、なぜあんな物に殿下は興味をもたれたのだ?」

Burdはお腹が空いていたのか、懐から携帯食を取り出しパクパクと食べながら私に聞いてきた。
「聖職者になる前はDaedric魔法の魅力に取り付かれて相当傾倒していたみたい。何かあってそれっきり離れたそうだけど、今になってその時の知識が役に立ってるから良かったって」

「そうですか、それで殿下が少々変わっている理由がわかった気がします。教養の懐が深い方は何かしら特異な対象を趣きにする傾向がありますからな」
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「じゃあBurdも教養あるのね。変わってるもの」
「は?自分のどこが変わってるんですか。いたって普通ですが」
「あら、変ねえ。自覚してると思ってたんだけど。気がついてないのなら言わない方が良いわね」
「・・・言って下さいよ、気になるじゃないですか」

「ホントにぜんっぜんたいしたことじゃないわよ~。あ、でも、さっき殿下に話したら笑われちゃった。よほど面白かったのね、ぷぷっ」
「な、何を話したんですか貴公はっ(汗)」
案の定Burdが慌てだした。
「さあ?殿下に聞いてみたら?教えてくれるかどうかはわからないけど」
イライラした様子でBurdは私を睨んでいたが、決意をしたらしく、私に言った。
「わかりました。貴公が教えてくれないなら殿下から聞き出してきます」
「あら、殿下とは話したくなかったんじゃないの?それにいくら喋り慣れてるBurdでも殿下から聞き出すのってすっごく無理なんじゃないかな~?」
「侮らないでください。意味不明な言動の多い貴公より、話し方は私の方が明らかに数段上です。待ってなさい、必ず聞き出してきますからな!」
Burdは私を置いて立ち上がり、マーティンの方につかつかと近づいた。
「殿下、少々お話があるのですが」

マーティンはBurdが自分に話しかけてきたことに少し驚いたようだったが、状況をすぐに理解して、笑顔になって返事を返した。
「ん、どのような話かな」
「殿下、ここでは周囲の目がありますので、あちらの方に私と御足労願えますか」
そう言ってBurdは神像の向こう側の少し広くなった場所の辺りを指で示した。
「もちろん構わない、行こう」
マーティンはBurdを連れ添って、二人は階段近くの方へ歩いて行ってしまった。
「こんな所で話とは、何か他の者に聞かれると困るような事なのか?」

「ええ?まあ、そうですな。あまり人には知られたくないことでして」
あら・・・ここからだと遠すぎて二人の会話が聞けないわね。
私は残念に思った。
二人がどういう会話するのか聞いてみたかったんだけど。
まあいっか、Burdから話しかけさせるのは上手くいったし、後は殿下に任せておけばなんとかなるはず。

私はその辺で遊んでおこっと。
なーんにもないんだけど眺めだけはいいのよね。
「殿下、先ほど何かを同胞と話しておられたようですが、何を話されていたのですか?」
「何を話していたか?Burd、なぜそんなことを君が聞くのだ」
「いえ、ただ、あれが失礼な事を言っていないか非常に気になりましてな」
「失礼な?どんな事かな。友の言葉で失礼に当たるような憶えの言葉などないのだが」
「ああ、もう、じれった・・・ゴホン、殿下、単刀直入に申しますが、私のことでおかしなことをあれが言っていませんでしたか?殿下が笑ってしまわれるような」
「私が笑うようなこと・・・ああ、あの事かな」
「なんですか?それを話してくれませんか」

「いや、違うな。あれではない。だとするとあの話・・・いや、それでもないな。すると・・・」
「殿下、何をブツブツともったいぶられておられるのですか。早く言って下さいよ」
「まあ、そう焦らすな。なぜ知りたいのだ?気になるようなことなのか?」
「なぜと言われてもですな。ああ、もう、そうですよ、気になって知りたいから聞いておるのです」
「ふむ、そんなに友の言ったことが気になるのか、そうかそうか」
マーティンは嬉しそうにBurdを見た。
「・・・殿下?何をそんなにニコニコされているのですか。頼みますから、早く教えて下さいよ」
「待ってくれ、思い出すから」
それからしばらくマーティンは考えていたが、思い出せずBurdが知りたい事を中々言おうとしない。
「もしかして私をワザと焦らしてます?殿下」
「いや?そのような事はない。ただ、近ごろ物忘れが激しくてね、待っててくれ、今・・・」
「物忘れって、さっきしたばかりの会話でしょ!?っとゴホン、失礼。早く思い出して下さいよ」
「ああ、わかったぞ」
マーティンはやっと思い出した。
「なんですか?言って下さい」
「あれはやはりDaedricの魔法がなければ成す事が出来ない訳だ。ふむ、なるほど、悩んでいた謎が1つ解けた。これで解析が進むな、よかった」
「よ、よくありませんっ!なぜそこでDaedricが出てくるんですっ。殿下、それは今と全然関係ないことでしょうが!そんなことは後で思い付いて下さい!」
「すまないな、もうずっとそれのことが頭から離れなくて困っているのだ。どうにかしてくれ」
「どうにかしてくれ言われましても、無茶ですよ。私にそんなお願いせんで下さい。頭から離れなくて困るなら、どうしてDaedra教とかDaedric魔法とかそんなダークな物学んでしまったんですか」
「なぜだろうな。それらにかつて異常なほど私は傾倒させられていたのだが、手を出しさえしなければ、私の過去に影を落とすような酷い過ちを招くことなどなかった・・・」

「・・・殿下?過ちって、陛下の御子息であられる貴方が何か間違いを犯したことがあるのですか?まさか、ご冗談を。とても考えられないし、想像もできませんよ」
「Burd、私は人だぞ?完璧ではない。人には話せないような過去などいくらでもある」
「それは意外ですな。殿下の楽天的な御様子を見ていると、私はもっとこう明るい過去しかないのかと思っておりました」
「楽天的?ははは、そうか、君には私がそういう風に見えていたのか。では、少々見方が変わるような話を君にしてあげよう」
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