Burdは一人、寺院の門の外に出て、虚ろな表情でBrumaの街を眺めていた。

考えてみれば随分と長い間Brumaに戻っていない。
これだけ留守にしていれば皆から忘れられて当然だろう。
なのにCariusから現状を教えられるまで、何も変わることはないと信じ込んでいた自分がなんとも滑稽に思えてきた。

Burdは困惑していた。
マーティンに望まれ、ブレードとして生きる道を選んだのだから、ガード隊長を解任させられるのは仕方ないとしても、信じていた婚約者が一方的に自分を捨てたことはどうしても納得がいかなかった。
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辛い気持ちでいっぱいになりながら街を眺めていると、後ろから声がした。

「どうしたんだ、Burd」
振り返るとマーティンが立っていた。
「殿下・・・」

一人で外に出てくるなんて危なっかしいなと思ったが、注意する気力もなく、Burdは溜息をついて再びBrumaの街に視線を落とした。
「先ほどはすみませんでしたな」
「まあ、誰でも調子が悪い時があるからな、気にするな」
マーティンは笑顔を見せながら言った。
「・・・・」

「なあ、Burdよ。悩み事があるなら話してくれないか、力になりたいのだ」
マーティンはすでにBurdが落ち込んでいる理由をMiariから聞いていたので知っていたが、立ち聞きしていたと知ると気を悪くしかねないので、そのことは黙っていた。
「個人の悩み事を殿下に打ち明けるなんて、そんな不躾な真似は出来ませんよ」
「ならば私を司祭だと思って話さないか?」

「ああ、殿下は元司祭様でしたな・・・そういったことには慣れていらっしゃいますな。ですが非常に個人的な話なので・・・」
Burdは沈黙してしまった。
「いやな、お前が落ち込んでいる理由は、私に原因があるということぐらいはわかっているんだ」
「殿下、その様なことは」
Burdは否定したが、マーティンは首を横に振った。
「ガードだったお前を半強制的にブレードにさせたのは私だ。あの時、お前はブレードになることを受けてくれたが、ガードとして残りたい気持ちもなかったわけではあるまい」

「ええ・・・正直な所、その思いはありました。ブレードになってもいつかまたガードに戻って・・・」
Burdは小さく鼻をすすって想いを打ち明けた。
「殿下、聞いて下さい。以前・・・まだ殿下にお会いする前ですが、自分はBruma防衛戦で殉死するとばかり思っていたんです。その不安な心を紛らわせてくれていたのがYvaraでした。私たちは結婚を約束しました。その想いはお互い変わらないと思っていた・・・だが、変わってしまいました。自分の運命も、彼女の心も」
「・・・歩むべき道を見失うと、どうすればいいのかわからなくなるからな」

「ええ、わからんのです。脅威がなくなったのに自分がなぜここに居るのか、ガードを辞めてブレードになる必要があったのか、わからなくなってきたんです」
マーティンは黙って聞いていたが、しばらくして思い切った表情で口を開いた。
「・・・Burdよ、一度Bruma城に戻れ」

戻れ、という言葉を聞いて、自分はクビになったのだろうかとBurdは驚いて聞き返した。
「で、殿下、それはいったいどういう意味ですか?」
マーティンは寺院に戻るためBurdの側を離れつつ、優しげな声で言った。

「戻って、お前の心を整理して来るんだ。あの時は、やり方が少々強引だった故、伯爵婦人も彼女も本心はお前を手放したくなかったのではないかと私も心配になっていた。話し合った結果、Brumaガードに戻るか、ブレードとして残るかは、お前自身が決めて構わない」
二人は黙ったまま、お互いの目を見ていた。
「・・・お心遣い感謝します、殿下」

Burdは顔を綻ばせ、安堵の表情を浮かべた。
マーティンは一瞬だけ笑みを浮かべて頷くと、寺院へ戻っていった。

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