「お早うございます」
朝、ホテルを出発するためフロントでチェックアウトの手続きをしていると、横から声がした。

振り向くと、Burdだった。
先に身支度を調え、ホールで私たちを待っていたようだ。
「おはようBurd、昨日は追い出しちゃってごめんね・・・ゆっくり休めなかったんじゃない?」
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私が尋ねるとBurdは照れながら答えた。

「それがですな、気になって眠れないだろうと思っていたのですが、疲れていたのか横になったらすぐに朝になってまして。それで、貴公大丈夫でしたか」
「何が?」
「何がって、貴方ね、言わんでも察してくださいよ」
もどかしそうに、Burdは言った。
「別に何もなかったわ。それよりマーティンのことを心配した方がいいわよ。大丈夫じゃないから」

「なんですと!殿下に何かあったのですか?」
私はBurdにマーティンがすぐ側に居ることを教えた。
「そうなるんじゃないかなーって予想はしていたのよね」
彼は頭を手で押さえ、辛そうにしていた。

「朝起きてからずっとあの調子なのよ」
「ああ・・・なんだ、二日酔いですか。あれだけ飲めば当たり前ですな」
私たちはマーティンの側に寄って、声をかけた。
「殿下、大丈夫ですか」
Burdが尋ねると、マーティンは苦しそうな声で答えた。

「・・・大丈夫じゃない。頭は痛いし、なぜか体も全身が痛いのだ。私はきっと病に冒されたのだ。もうダメだ、皇位はお前が継いでくれ」
「殿下、それは病じゃなくてただの二日酔いと筋肉痛です。飲みすぎと、Akatosh神拳がなんだ道師がどうだといい歳してはしゃぐから体に堪えたんですよ」
「ん?」
マーティンは不思議な顔をしてBurdを見上げた。

「なぜお前がAkatosh神拳を知っている。あれは最強ゆえ門外不出の武術とされていて、Kvacth以外では存在を明かすべからず、と師匠から念を押されていた代物だぞ」
「は、師匠ですと?まだ酔ってるんですか?敢えてノリでツッコミさせて頂きますがね、貴方、自分を魔陳道師と名乗ってAkatosh神拳を諸国に知らしめようとしてましたよ」
マーティンはきょとんとした。
「魔陳道師?なんだそれは。生真面目な私がそんなふざけたことを言うはずがなかろうが。まあ、昨夜のことはあまりよく憶えておらんのだ、無礼があったら許してくれ」
「貴方の話はウソなのか本当なのかわからなくなってきますよ、まったくもう・・・」

マーティンはBurdに小言を言われても気にならないようで、私をちらりと見て目配せした。
「友も昨夜のことはあまり覚えていないそうだからな。では3人揃ったことだし、ここを出ようか」
外に出ると眩しい太陽の光が目に飛び込んできた。

人影はまだまばらで、時折通るのはガードぐらいしかいない。
「これからどうするんですか?」
Burdに尋ねられ、私はうーん、と考え込んだ。
「寄りたい所がまだまだあるのよ。昨日のお店に謝りにも行かないといけないしね。まーくんどこか行きたいトコある?」

「私は頭痛薬をどこかで買いたいのだが売っている店はあるかな。後は図書館に用があるからそれも予定に入れておいてくれ」
マーティンは図書館で本を借りていたが、読む時間が取れなさそうなので、それの延長を頼みたいと言った。
Burdもこれから一緒なので、どこか行きたいところがあるか尋ねると、首を横に振って答えた。
「自分は護衛の立場ですから、あなた方の行きたい場所にお供するだけです。で、こちらにはいつまで滞在する予定ですかな?」
「私はまだ2,3日はエンジョイするぞ。寺院への土産もまだ買ってないから、どこかで買わないとなー友よ(^^」

「そうそう、御土産買わないとね!いいお店があるからそこで買いましょうよー☆」
「2人だけで楽しそうにして・・・」
Burdは私たちのやり取りをみてふて腐れた様子だったが、その目は優しく、見守ってくれているのがわかった。
マーティンと私は、どことなくぎこちなく、喧嘩したりすれ違ったりしたけれど、それを乗り越えたことで、お互いをより分かり合えるようになった気がした。
これからはお互いをもっと知りたい、認めてもらいたいという想いが強くなり、また喧嘩してしまうかもしれない。
でも、もう私は逃げない。
この人と幸せを掴むために・・・。
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