「支配人、長い銀髪で黒のドレスを着た女のエルフを見ませんでしたか?部屋を飛び出していったのですが、ホテル内を捜してもどこにもおらんのです」

Miariの姿はホテル内のどこにも見当たらず、心配になったBurdは一階のフロントに居た支配人に行方を尋ねた。
「長い銀髪の?その人ってスイートルームを借りられたお客様のことかしら」
「そうそう、そうです!どこへ行ったか御存知ありませんか」
「彼女なら物凄い勢いで外に飛び出していったわよ。でもなぜお客様が捜してますの?彼女は別のお連れ様と御宿泊されたはずだけど、その方はどうされましたの?」

「連れの男は追いかけられない理由がありましてな。部屋に残らせました。代りに私が捜しているのです」
支配人はあらまあ、なんてこと!と声を上げ興味深々にBurdを見ながら言った。
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「追いかけもしないで他人に彼女の捜索を任せる希薄な関係のお二人には見えませんでしたのに。あ、
もしかしてちゃっかり横取りしようなんてお客様考えておられませんこと?オホホ」

「あれを横取り!?そっ、そんな恐ろしいこと自分は考えたことありませんぞ!では自分は外に出て捜しに行ってきます」
Burdは軽く頭を下げ、急いでホテルの外に出た。
すでに夜になっていて、辺りは闇に包まれていた。

暗い闇の中でBurdは目を凝らし耳を澄ませたが、Miariの姿も気配も感じ取れなかった。
どうやら近くには居ないようだった。
側を通りかかったガードを引き止め、姿を見なかったか訪ねてみた。

ガードは知らないと答えたが、門番をしているガードなら知っているのではないか、と助言をくれた。
「銀髪の女エルフ?見たような見ていないような・・・」

門番に聞くと、あやふやな答えが返ってきた。
「結構目立つ容姿の女だが憶えていないか?服装は黒のドレスでスリットが大きく開いた服を着ていたのだが」
「ああ、もしかしてお前が捜しているのはいいケツした女のことか?その女なら泣きながら物凄い勢いでここを走り抜けていったぞ」

そう言ってガードは顎で門を指した。
「いいケツですと!?どこを見て・・・いや、失礼。多分自分が捜してるのはその女でしょう。情報提供助かりましたぞ、では」
Burdが礼を述べて立ち去ろうとするとガードが冷やかすように言った。
「あんたいい歳して、若い女を泣かすもんじゃないぞ」

「は、はぃ?あれを泣かしたのは自分ではないですぞ!泣かしたのは・・・・」
否定したが、ガードはBurdが泣かして捜していると思っているらしく、いいから旦那、早く追いかけてやれよ、とニヤニヤしながら手振りで追われてしまった。
門をくぐり、隣の区域に入って辺りの様子を伺ったが、まだMiariの姿は見えなかった。
周囲を見回しながら歩いていると、前方から女性がこちらに向かって歩いてきた。

何か知っていないだろうか、とBurdは女性を呼び止めてMiariのことを尋ねた。
「銀髪のエルフ女性?あ・・・もしかしてあの子かしら」
「おお、心当たりがありますか!どこで見ましたか?」
「顔をグシャグシャにして大泣きしながらこの先の植物園の方向に走っていく子を見たのよ。物凄い勢いで走って行ったから引き止めること出来なかったんだけど、その子が捜してる子じゃないの?」

「多分そうです、植物園に走って行きましたか。教えて頂き助かりました、では」
Burdがその場を離れて行こうとすると、女性はフフ、と軽く笑みを浮かべながらBurdを小突いた。
「女にあんな泣き方をさせてしまうなんて、外見は優男なのに酷い男ね。少しは考えて接してあげなさいな」
「じ、自分ではないですぞ、泣かせたのは別の男でして(汗」
「言い訳はいいから早く行って謝って上げなさいって。彼女のことが心配なんでしょ」
「は、はあ、そうですな・・・では、失礼」
Burdはどう言っても誤解されてしまいそうなので、それ以上言うのは止めて礼をすると植物園がある方に走っていった。

植物園区域は多くの人が寛いでいた昼間と違い、誰も居らず静けさに包まれていた。
「一体どこまで物凄い勢いで走って行ったんですか貴公(汗)、おや、今何か聞こえたぞ」
耳を澄ますと、目の前にある中央の建物付近からしゃくり上げる様な泣き声がかすかに聞こえた。
側に駆け寄ると、夜の闇の中で白く細い何かが浮かび上がっていて、それがMiariの髪だということにBurdはすぐに気付いた。

ベンチに座りこんで、肩を震わせながら1人泣きじゃくっていた。
その後姿に憐憫の情を感じたが、ひとまず無事に見つけられてよかった、とBurdは胸を撫で下ろした。
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