「女将、部屋を借りたいのだが空いてるかな」
Burdは二人の姿がホールから消えたことを確認してから、受付の女主人に尋ねた。

「いらっしゃいませ。一泊の御宿泊、一名様御利用で御座いますね。お客様に当ホテルがお勧めできるお部屋はー・・・」
女主人はじっとBurdを品定めするように眺めて言った。

「素泊まりシングルタイプ、朝食付きシングルタイプ、朝夕食付きシングルタイプの3プランをご用意出来ますが」
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「シングルに食事が付いているかいないかの差しかないのか。食事は部屋で取れますかな?」

「御宿泊のお客様のお食事は、二階中央のレストランでご用意させていただいております」
「(それだと二人と鉢合わせする可能性が高くてまずいな。だが、腹が減っては何もできん・・・)食事のメニューはどんな物ですかな」
「ご朝食はパンにベーコンエッグ、コーヒー。ご夕食メニューは日替わりとなっておりまして、今日のメニューは豆腐と海鮮のヘルシーあんかけ、シーフードブラックカレー、茶碗蒸し、後はデザートをお付け致します」

「おお、それはなんという魅力的なメニュー!部屋は朝夕食付きプランで頼む!」
「承知いたしました。宿泊料に食事代込みで250Gとなります」
「それだけの内容で250Gとは中々リーズナブルですな」
Burdが代金を支払うと、女主人は名前と住所の記入をお願いします、とノートを手渡した。
書こうとすると、先にMiariの名とNitramという名が書かれているのが目に入った。
(Nitram?ああ、殿下の名をそのまま書くのはまずいと思って偽名にしたのか。逆さにしただけとはなんと安直なっ。んなもん見る人が見ればすぐバレますぞ貴公!・・・ん?)

二人の名前の横に、女主人が書き込んだらしい部屋の名前があった。
『スイート/ダブル 25000-領収済』
「女将、このスイートというのはなんだ?この二人はその部屋に泊まったのか?」

「ええ、そうでいらっしゃいます。そちらのお部屋は、当ホテルのトップランクスイートルームで御座いまして、充実した設備に広々とした空間でお客様をおもてなししております。このお部屋は御利用人数二人以上となっておりますので、お客様も大事なお連れ様との御旅行の際はどうぞ御利用下さいませ」
「こんな高価な部屋に泊まるとはなんと贅沢なっ(悔)。女の方は随分はしゃいでいたんでしょうな」

「いいえ?どちらかというとご一緒されていた殿方が楽しそうにしていらっしゃいましたが」
「で・・・いや、男の方がか?」
「女性の方は不安そうにしていらっしゃいましたね。お支払いも全額そちら持ちでしたし。でも嫌そうではありませんでしたから、今夜はきっとお楽しみですよ、オホホ・・・」
「お楽しみですと!?」「あら、お知り合いの方ですか?」
「いやいやいや違います、赤の他人です。自分は部屋に行って休みたいので、部屋の鍵を早くくれないだろうか」

「承知しました、お客様のお部屋は二階に上がったところの廊下の奥側になります。どうぞごゆっくり」
鍵を受け取って二階に上がったBurdは、借りた部屋のドアを開けた。

「さすがシングル!悲しいほど何もない」

部屋は一人用のベッドと明り、貴重品を入れておくコンテナぐらいしかないという質素さだった。
「まあ個室な分、Brumaガード宿舎やブレードの雑魚寝部屋に比べればマシか・・・」

Burdはフウと一息ついて手袋を外し、剣と共にベッドの上に置いた。
(休む前にスイートルームとやらがどこにあるか調べておこう)
部屋を出てすぐ右に食事が出来るホールがあった。

ホールの壁側の真ん中あたりに他の部屋とは違う様相の扉があるのを見つけた。
前まで行って、じっと扉を凝視する。
耳を澄ますと、中から二人が楽しく笑いあう声が聞こえた気がした。

(この先に二人がいるのか・・・)
扉を開けなければ、中の様子を伺う方法がない。
しかし開ければすぐに自分が居ることが二人にバレてしまいかねない。
・・・こんなことに頭を悩ませられるのなら、初めから二人と強引に同行しておけばよかったとちょっとBurdは後悔した。
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