機嫌を損ねたままのマーティンを連れて、私はTalos Plaza Districtに来た。

この区域は高級住宅が建ち並び、帝都内で一番大きな宿泊施設の「Tiber Septim Hotel」がある。
お忍び観光とはいえ、殿下を安い宿に泊まらせる訳にはいかないし、安全を考えると高価な宿を選んだ方がいいと考えていた。
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「まーくん、今日はここに泊まろうと思うんだけど、いいかしら」

「友の好きな所に泊まればいい。私は帝都の事は何も知らないんだ。他の宿の事などわからないから、聞かれても困る」
マーティンの返事は素っ気無かった。
いつもの笑顔もなく、不機嫌そうな顔のままだ。

・・・なぜこんなに機嫌悪くなっちゃったのかしら。
理由が全然わからない。
マーティンの為の宮殿に彼を案内してから様子がずっとおかしい。
何が気に入らなかったのかしら。
頃合を見て理由を聞き出さないと、なんだか落ち着けない気分になりそうだった。
(いたいた、どこに行ったのかと思ったが、今夜はあの宿に泊まるらしいな)

Burdは二人を見つけてホッとした。
(自分としたことが図書館を出た後、二人の行方を見失って慌てたが、見つけることが出来て良かった)

見失っている間、二人はどこへ行っていたのだろうとぼーっと考えていたBurdは、二人が宿に入っていったのに気づいて我に返った。
(いかんいかん、自分も追いかけてどの部屋に泊まるのか押さえておかねば。ここでまた見失ったら末代までの笑いものになるぞ)
えっと、フロントはどこかしら・・・と。
ホテルに入りキョロキョロと辺りを見回すと、ホールの中央付近にカウンターがあって、ここの主人らしい人がいた。

「すみません、一泊したいんですけど、お部屋空いてますか?」
話しかけると、女主人はスマイルで答えた。

「ええ、空いておりますよ。御宿泊される方は何人でございましょうか、お客様」
「二人です」
「お二人様で御座いますね、そうしますと・・・」

女主人はまるで値踏みでもするかのように私達をジロジロと見て、部屋の案内を始めた。
「お客様には、スタンダート、エコノミー、ファーストクラスの3タイプのお部屋をご用意出来ますが」
それを聞いたマーティンが唐突に女主人に尋ねた。

「支配人、このホテルで一番良い部屋はどのような部屋になっている?」
「ファーストクラスで御座いますね」
女主人は満面の笑みを浮かべて説明した。

「こちらの部屋は当ホテルでは最高レベルのお部屋で御座いまして、どなたでも満足頂けるよう、最新の設備を整えたお部屋となっております。主に身分の高い方や要人、新婚さん等がよく御利用されておりますよ」
女主人の説明にマーティンは満足気に頷いて答えた。
「それはいいな。ではその部屋を借りよう」

「えー!ちょっとまって・・・」
私は驚いて割って入ろうとしたが、私は除け者にされたまま女主人とマーティンの間で話が進んでいく。
「有難う御座います。宿泊料金は一泊25,000Gとなっております」

「うむ、妥当な額だ。今夜の宿はその部屋に決めた」
ぎえー!25,000G!?
それって家買える値段じゃないの!!!!
って、なんで勝手にマーティンが決めているのよ!
「まって、どうして勝手に部屋決めちゃうの!?」

私が怒ると、マーティンはすっとぼけた顔をした。
「折角の旅行なのだから多少高価でも良い部屋に泊まりたいと私は思ったのだ。私の考えは間違っているか?友よ」
「間違ってはいないわよ。気持ちはわかるわ。でも、値段が値段じゃない!」
「では友は安い宿をとって、私との夜を窮屈な部屋で過ごして、狭いベッドで私と一緒に寝ると言うのか?」

「う~・・・そ、それは・・・」
私が返事に窮していると、女主人がマーティンに宿泊料の催促をしてきた。
「お客様、宿泊代は前払いとなっておりますが、お支払い頂けますでしょうか」

「ああ、すまないね、25,000Gだったな。待ってくれ・・・」
マーティンは自分の懐から財布を取り出そうとした。
私は慌ててヒソヒソ声でマーティンを止めた。
「まーくん、何安請負してるのよ!><そんなお金持ってないでしょ!!ここは私が出します!」

「いいよ、私のなけなしのお金でファーストクラスに泊まろうじゃないか。ファーストクラスはきっといいぞ?いいに違いない。何が何でも私は泊まるぞ」
なにこの我侭なマーティンは(泣)と心で泣きながら私は言った。
「なけなしって言われたら余計出させるワケいかないじゃない。いいのよ、手持ちのお金でなんとか足りるし、後で銀行に行って下ろせば大丈夫だから」
「そうか、ではこの場は友に甘えさせてもらおう。このツケは出世払いで必ず返すよ」
「気をつかってもらわなくてもいいのよ。大体ここまで連れて来たの私なんだから、私に出させてちょうだい」
自分のお財布からお金を出して女主人に支払うと、ノートに宿泊者の名前と住所を記入してくれと言われたので、ペンを取った。

私の名前はいいけどマーティンの名を書くのはまずいわね。
偽名に・・・Nitramって書いとこ。
Martinの綴りを逆にしただけ。
私がノートに書き込んでいる間、女主人はマーティンに親しげに話しかけていた。
「お二人はもしかして新婚旅行でいらっしゃいますか?」

「いや・・・そうではないのだが、そんなものだと思ってくれ」
(何無駄に意味深な回答してんのよ、まーくん><)
「あら、どうもお二人は深い訳がありそうな関係の様のようですね」

「この歳になると、1つの愉しみに興じるにも心労が絶えなくてね。ご婦人のように美しく歳を重ねられた経験豊富な女性なら、我々の関係は語らずとも察してもらえるだろう」
「まぁ・・・素敵なお声でその様なお世辞を言われては、クラっと来ますわよ、オホホ」
うわー、まーくんがセクスィー殿下になってる><
ここにBurdが居たら、容赦なくガンガンツッコミしてくれて、場を明るくしてくれるのにな、と、少し心細くなっている私がいた。
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