「あ~、殿下?ちょっとお待ちいただけますかな」
なぜか私まで部屋に連れて行こうとしていたマーティンをBurdが後ろから呼び止めた。
「なんだ、私は疲れているんだから、話の続きは明日にしてくれ」

「私だって、殿下をお引止めしたくはありませんよ。でも、御休みになられるなら、なぜご友人を寝所に同伴させる必要があるのかお尋ねしたくてですな」
「同伴だと?何を言っている。友には一緒に私の部屋に来てもらうだけだ」
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「それって『同伴』をわかりやすく言っただけじゃありませんか。お疲れなら1人で戻られて下さいよ」

「いや、友には私の側に居てもらわないと困る」
マーティンは顔をしかめた。
「なぜです」
Burdが問い返すと、マーティンは渋々事情を話した。
「1人だと見たくも無い嫌な夢を見るから寝るに寝れんのだ。友が側に付いて居てくれれば悪夢を見なくて済む」
「悪夢を見たくないですと?殿下、そんな子供な言い訳でご友人を連れて行くのは私としては納得いきません」
「お前が納得しなくても私は納得している、ではおやすみ」

「殿下、待ちなさいって!」
慌ててBurdが再度マーティンを引き止めた。
マーティンは振り返り、Burdを睨みつけると苛立った様子で文句を言った。
「なんだ、お前もしつこいな!そんなに私が友を連れて行くのが気に喰わないのか!?いくら温和な私でも終いには怒るぞ!」

「もう怒っているじゃありませんか!そんなことしてご友人に何かされたらどうするんですかっ!なんて命知らずな!」
「何かって、私が何するのよ><まーくんはただ悪夢を見たくないから私に居てくれって言ってるだけじゃない」
私が抗議すると、Burdは怒鳴り返してきた。
「まーくんまーくんって殿下を馴れ馴れしく呼ぶ、厚かましいおバカさんはすっこんでなさいっ」
「何よ!><別にそう呼んだってまーくん怒らないからいいじゃない!まーくんすっごく疲れてるのよ!」
「同伴されるのは結構ですよ、ええ、それだけならね。でも、今のおかしな殿下に貴公が同伴するのはお止め下さい」

「まーくんのどこがおかしいのよ、おかしいのは怒ってばっかりのBurdじゃない!」
「元から変な貴公に変と言われたくございません。ダメったらダメです!殿下は子供じゃないんだから1人で寝かせなさいっ!」
私とBurdが言い争っていると、マーティンがボソッと呟いた。
「・・・そうか、わかったぞ」

マーティンが何かを悟った顔でBurdを見た。
「殿下、わかったって何がです」
「Burdは私のことが好きなのだな」
「は?」呆気にとられたBurdを前に、マーティンはフッと不敵な笑みを浮かべた。
「だから私が友と仲良くするのが気に喰わなかったのか。友を過剰に罵倒するのは私を取られたくないという嫉妬心からだったのだな、ふむ」

「何をどう考えればそういうことになるんですか?」
「恥ずかしがらなくていい。今まで気が付かなくてすまなかったな。共に居るのは別に友でなくても構わんのだ。よし、決めた。友はもういいからBurdよ、お前が付き添え」
「殿下、ご冗談はお止め下さい」
「冗談ではない、この駄々っ子めが。ほら、手を繋いでやるから一緒に来い(^^」

「・・・嫌です」
「友の場合は何もないだろうが、お前は知らん。何かあっても責任は取らないから覚悟して私に付いて来い。嫌とか言うな」
「で、殿下、目が本気になってますぞ(汗」
「Burdよ、付いてくるのかこないのかどっちなのだ。お前が来ないなら、私は友を連れて行くぞ」
「さりげなく究極の選択をぶつけてきましたな(泣)。ご友人であれば本当に付き添ってもらうだけですか?」

「そうだ、後は何もない。友はあくまで側に居てもらうだけだ、約束しよう」
マーティンのその言葉で根負けしてしまったのか、Burdの顔に諦めの表情が浮かんだ。
「・・・では、どうぞご友人をお連れして下さい」
「そうか、残念だな。次の機会の際は是非頼むぞ」

「次の機会はございません。あろうものなら、即座に私は実家に帰らせていただきます」
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