「おみゃー、前から聞こうと思ってたんにゃけど、これなんなのにゃ?」
もう寝ようと寝室に向かう階段を上がっていくと、二階にいたネコミミさんに呼び止められた。
どうやら、階段を上がったところに飾ったままになっている絵が気になっていたらしい。
ネコミミさんは絵を指差しながら、尋ねてきた。
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「この絵の真ん中にいるのはおみゃーに似てるにゃ。誰かに描いてもらったのにゃか?」

「えっと、これはね・・・多分私だとは思うけど・・・」
私は説明しようとして、言葉に詰まってしまった。
そもそもこの絵は、なぜここにあったのか、自分でもわからなかったからだ。
「いつの間にかここにあったのよ。誰かが私に送ってくれたんだと思うけど」
ネコミミさんが興味深々な目をして尋ねてきた。
「ミステリーな絵なのにゃ!誰がなんのためにここに置いたにゃ?」
「さあ・・・わかんない。何か意味あるのかしら。この絵を見てたら以前Burdにからかわれたこと思い出して腹が立ってきたわ><」

「にゃ?これとクマおっさんとどう関係あるのにゃ」
「そのことを話すと長くなるんでまた今度話すわね。ネコミミさん、もしここにあるのが邪魔だったら、どこか別の場所に片付けてしまってもいいわよ」
「ありゃ、これはおみゃーにとって大切なものじゃにゃいのけ?」
「大切ってほどでもないわ、ただなんとなくここに置いてただけよ」
「ミーは別にこの絵がここにあってもいいにゃよ。この絵の中のおみゃーらしきおなごはべっぴんさんにゃ。こりゃー飾っておくべきにゃよ」
「あら、お世辞でもそんなこと言われたら嬉しいわね、アリガト。でもこの絵は・・・」

絵を良く見ようと目を凝らした瞬間、絵の表面がユラッと渦巻くように歪んだ気がした。
「あれ?」
ゴシゴシと目を擦ってもう一度見てみたが、それはいつもと変わらない普通の絵だった。
「どうしたにゃ、素っ頓狂な変な顔になってるにゃよ」
「今、絵が歪んで見えたような・・・」
「にゃ、おみゃー疲れているんじゃにゃいのけ?今日はSkingradの町内清掃で、丸1日おみゃーバタバタ張り切って掃除してたからにゃ。もう今日は部屋に行って早く休むといいにゃ」
「そうね、きっと疲れて幻を見たんだわ・・・じゃあ、私はもう上に行って寝るわね。おやすみなさい、ネコミミさん」
「おやすみにゃー」
挨拶を交わした後、ネコミミさんは機嫌よさそうに鼻歌を歌いながら、階段を下りていった。
「ふう・・・」
私はベッドに身体を横たわらせた。

言われたとおり疲れていたのか、目を閉じるとすぐに全身を覆いつくすように睡魔が襲ってきて、そのまま心地よい眠りに落ちていった。
それから2時間ぐらい過ぎた頃。
静けさに包まれた部屋の中で、フォォォン・・・と、何か機械のような物が起動しているような低音が響いた。

音は絵の辺りから漏れている。
音は次第に小さくなり、余韻を残して消え去った後、絵の中からフワリと浮き出すように半透明の人物が現れた。

その人物はボソボソと独り言を呟くと、ゆっくりと左右を見て、周囲の様子を伺った。

そして、天井に目をやり、頷いて上の階段へと歩いていった。
寝室に入り、誰がそこに居るのかすでにわかりきっている様子で、ベッドに真っ直ぐ向かっていった。

Miariは侵入者に気付くことなく、眠ったままだ。

ベッドの脇に立ち、見下ろしながら声をかけた。

「・・・久しいのう、ワシの枢要とする闘士よ」
半透明の人物はMiariの側に寄り、身をかがめて顔を近づけそっと優しげに囁いた。
「Sheogorath・・・憶えておるかね?その名の主が・・・ワシが尋ねてくるのをお前は待ち望んでおったはずじゃ。待たせたのう、今日、ようやく現れてやったぞ」

Miariは眠りこんだまま、側に居る人物にまったく気が付かない。
「お前は何を望み、何を得たい?その願いを叶える為にワシが力を貸してやろう。どちらにせよ、ワシが成さねばならん目的はすでに決まっておるから、そのついでになるがの・・・」
Sheogorath、と名乗った人物はMiariに手を翳した。
すると、Sheogorathの半透明の体は、煙の様に形を成さない物質になり、それはMiariの体に吸い込まれていった。
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