「はぁい~どんなご用かしら~あら~?めずらしい~今日は、とらきちクンがお供してるじゃない~」

召喚で呼び出された先生は首を傾げながら珍しそうにとらきちを見た。
「えへっ、スケルたん先生、今日は山にハイキングに行こうと思って、とらきちとここまで来たんです」
[2回]
「へ、山?山って~あら、ここって~どこ~?」

スケルたん先生は目の前に広がる峰々をポカンと見上げた。
私は目的地がある方角を指で指して説明した。
「先生、私達は今からあの山の向こーーーにあるDive Rockに登りまーす」

「・・・・」
先生の固い表情が更に固くなり青ざめた。
「かなり遠い上に、道がないから登るの大変なんですけど、先生も一緒に道を探しながら登りましょう」
「あの~ちょっと聞きたいんだけど~アタシを~山登りに誘う意味あるのかしら~登るなら~とらきちクンと行けばいいんじゃないかしら~」
「とらきちだけだと寂しいんですよ。どうせなら賑やかにお喋りしながら楽しく登りたいじゃないですか」
「お喋りなら~おっさんはどうしたのよ~いつものお喋りなおっさんは~!おっさん連れて行けばいいじゃないの~」
「Burdのことですか?誘ったんですけど、断られたんです。この前登った山で腰痛めたらしくって、Dive Rockなんて付いて来れませんって怒られちゃいました。慣れない発掘作業させたのがいけなかったのかしら」
先生は悲鳴みたいな声を上げて叫んだ。
「キエ~~!わかったわよ~行けばいいんでしょ~いけば~!!」

「先生ありがとー^^」
これで準備は整ったわね。
忘れ物は無し・・・と。
「では早速行きましょう、登りすっごくきついんですけど頑張ってください」

「ヒィ~本気なのね貴方~さらっときついとか言わないで~余計疲れそうだわ~待って~」
私が歩き出すと、先生はヨタヨタ歩きながらついてきた。
出発地点はCheydinhalの東門前。

以前BurdとDive Rockへ行った時は、北側のルートを通ったけど、思いっきり国境越えちゃったのよね。
国境を越えずに徒歩だけで行けるルートを探し出してみたい。
少し遠回りになるけど、東側から回り込むように向かってみようと思う。
「ねえ~頂上はまだなの~ハアハア」

登って20分ぐらいでもう先生が息切れしながら尋ねてきた。
「まだまだですよ先生。中腹ぐらいに来たかなあって感じのとこです」
「ヒィ~まだですってぇ~ねえ~もう目的地に着いてからアタシを呼ぶことにしない~?」
「イヤです、先生と一緒に歩きたいんだから。ほら、いつもの先生節聞かせて下さいな」
「息切れているのにお喋りなんてできないわよ~」
「じゃあ歌でもいいですから、ほら、何か歌ってくださいな」
「ムチャ言わないで~歌詞なんてこんな状況で出てこないわよ~え~何か余興が無いと動きたくないですって~?んも~ヨロレリホ~ハイ!ヨロレリヒ~ハイ!♪アタシは森のフェアリ~♪お喋りなプリティフェアリ~♪」
先生の即興の歌を聞きながら、更に歩き続けた。
高い所まで上がってきて、辺りは寒々とした風景になってきた。

「このへんまで来ると何もないんですけど、こういう景色って私好きなんですよ」
「ホント何もないわねえ~地面と岩と雪と木がポツポツあるだけじゃない~」
「あ・・・、でもちょっとまずいなあ」
「ん~どうしたの~?」
私は地図を見ながら答えた。
「このまま行くとまた国境越えちゃいそうです。結局超えずに歩いて行ける道は無いって事なのかしら」
「とんでもない場所にあるのね~Dive Rockって~ど~してそんな所にまた行きたいなんて思ったのよ~ルート探しの為だけなの~?」
「ごめんなさい、言い忘れてました。もう1つ目的があったんです、Dive Rockから流れ星が見れるそうなんです。流れ星といったら願い事しなくちゃ始まらないでしょ先生!」
「流れ星~?その為に行くの~?アナタもロマンチストちゃんねえ~でも~アタシもお願いしたいこといっぱいあるから~是非流れ星を拝んでみたいわね~」
それからずっと登っていくと、予感通り国境付近まで行ってしまった。

「すっご~い~!アタシここから先の世界って初めて見たけどぉ~どんだけぇ~この世界って広いの~果てしなく真っ白な大地が広がってるわ~ヒェー」
スケルたん先生は眺めの良さに感激し御満悦のようだ。
とらきちは何も言わないが、彼も気分がいいみたい。
彼の白い毛並みの容貌は、真っ白な大地に自然と溶け込んでいた。
地図で確認してみると、国境ギリギリのところまで来ていた。

やっぱりだめね。
完全にボーダー越えてる。
ここは人が本来は易々と来るべきところではないのかもしれない。
そこから北西側へ尾根を伝って歩いていくと、見覚えのあるテントの場所にたどり着いた。
「着いた~ここがDive Roxkなのね~飛び降りたら命はないわ~すっごい高さね~オッソロシ~」

ここはずうっと昔にBurdと来たことがある思い出の場所だった。
前と何も変わっていない。
「スケルたん先生、夜にならないと流れ星見つけ難いからそれまで時間を潰しましょう」
「そうね~、でも~こんなところで時間潰すのって寒すぎない~?アナタそんな格好で寒くないの~?」

「ちょっと寒いですけど大丈夫です。先生は寒いんですか?」
「寒いわよ~冷たい風が骨身にしみるわ~カタカタ」
先生は本当に寒そうだった。
顔色がなんとなく青白い気がする。
「じゃあ夜になったらまた呼びましょうか?それまで私とらきちとこの辺りで遊んでます」
「そうしてちょうだい~カタカタ」
先生には1度帰ってもらって、また夜に来て貰う事にした。
夜になった。

辺りは真っ暗になり、空を見上げていると流れ星がすーっと南の方角へ流れていった。
流れ星はそれだけではなかった。
眺めていると次から次へと天頂から星が降り注いでいく。
「まあ~ステキな眺めね~!たっくさ~ん星が流れていくわ~キャアア~」

夜になって再び来てくれた先生は歓喜の声を上げつつ大喜びで空を見上げていた。
「先生ほら、見てるばかりじゃなくて、願掛けもしなくっちゃ」

「そうね~えっと~何をお願いするんだったかしら~」
赤い光が天に現れ、すっと流れていく。
「どうか~アタシの美肌が崩れることがありませんように~さらに美しくなりますように~家内安全~金運上昇~えっとそれから~」

先生が横でやかましく欲張っていくつも願掛けしている隣で、私もこそっと流れ星に願いをかけた。
「・・・・・・・・・・・・・ますように・・・」
「え?なんですって~!!」スケルたん先生が真っ黒に開いた穴の目をひん剥いて私を見た。
「今あなた、ナントカのお嫁さんになれますようにってお願いしたわね~!?ダレダレ?あのおっさんたちの1人なんでしょ~!誰なのよ~!」
先生は物凄く嬉しそーにしつこーく尋ねてきた。
「ひええ~!私そんなこと言ってませんっ!><せっ世界が平和になりますようにってお願いしただけですっ」
「アナタがそんなクソマジメなお願いするわけないでしょ~!ほらほら~誰なのよ~教えなさいよぉ~私の耳に骨振動でガガガッと聞こえたわよ~」
「だーかーら違いますってーっ!もう止めて下さいスケルたん先生ったら(*ノД)」

「あら~そんなに恥ずかしがっちゃって~変ねえ~確かにそう聞こえたと思ったんだけど~」
お喋りな先生に話したらあっという間に広まってしまうから絶対話せない。
「どこ行くのよ~お願い事は~もうしないの~?」

「もうお願い終わったからいいんです。じゃあ私あっちにテント張ってるんでそっちでもう寝まーす」
「アタシはまだお願い事してるわね~いっぱいあるのよね~えっと~素敵な出会いがありますようにとか~ミス骨密度オーディションに受かりますようにとか~」
先生は1人でペラペラといくつあるんだろうという数の願い事を空に向かって唱え続けていた。
私の願い事は内緒・・・。
人に教えちゃうと叶わなくなってしまうっていうしね。
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