扉を開けた先は、驚いたことにまだ遺跡の中だった。
いや、中というより遺跡の裏手だったと言った方がいい。

あまりに暗いのでまだ洞窟の中かと錯覚したが、上の方を見ると青空が廃墟の隙間から見えていた。
「ようやく外に出られたみたいね」
「空気が新鮮ですな・・・洞窟内のよどんだ空気からようやく開放されてほっとしましたよ。しかし外にも遺跡があったとは」
耳を澄ますと遺跡を吹き抜ける風の音と、小鳥のさえずりが聞こえてきた。

ここはどこなんだろう。
洞窟内では上へと上がっていたみたいだったから、結構な高さまで登ってきたんじゃないかしら。
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「うわぁー・・・」
遺跡跡を抜けた場所は、かなりの高度にある山の上だった。

遥か下方にSkingradとKvatchが望める。
一望千里の大地がそこにはあった。
「こんな所に出るなんて、思いもしなかったわ」
私が見晴らしの良さに感激していると、何気なく辺りを見回していたBurdが言った。
「貴公、下に道がありますよ。もしかしたら洞窟を通ってこなくてもここに来れたのかもしれませんな」
「ちょっと、感激してるのに水を差すようなこと言わないでちょうだい><苦労してきたからこそ感激もひとしおなのよっ」
「ああ、そうですか。それは余計な事を言って失礼しました」
Burdは悪かったと謝ったが、すぐ下を見ると言った通り、道があった。
・・・初心者コースを通っていれば、危険な洞窟は通らなくても済んだわね・・・。
後ろを振り返り、遺跡を観察してみた。
日が差している明るい場所で見る遺跡は、また洞窟内とは違う雰囲気を醸し出している。

「なぜこんな場所にこんな不思議な遺跡があるのかしら」
しげしげと遺跡を見つめる私に横からBurdがまた余計なことをポツリと言った。
「昔、誰かが住んでいたからでは?」

「あたりまえでしょ!どうしてこんな所に家を建てる必要があったのか、それも一個一個重い石を積み上げて・・・水や食料なんかはどうやって調達していたのかしら?もしかしたら敵の侵入を防ぐ為にわざわざ高い場所に・・・って考えるのが楽しいのよ!」
「そうですか?私にはよくわかりませんが」
「え~?こういうのを過去に何があったかとか、いろいろ考えるのって楽しいじゃない」
よおし、ここまできたら・・・。
「掘って徹底的に調べるわっ!」

「結局掘るんですな」
「石ころが多そうだけど、ここなら地面は土で覆われてるから掘れるわよ」
「目星は付いているんですか?その辺適当に掘ったからってお宝は出てきやしませんよ」
私は壁の側に寄って叫んだ。
「目星は付いてるわ、ここよここ。女の勘でここだと感じたわ、ここに何かあるはずよっ」

「あ~、貴公?普通そういうことに女の勘というのは使わないと思いますが。使い方間違ってませんか?大体男女間の隠し事などを根拠も無くピタッとあてるようなことを女の勘とー・・・」
「お宝探しに勘を使ったっていいじゃない!ほら、鍬を持ってきてるからつべこべ言わずにBurdも掘ってちょうだい」
そう言って私はBurdに強引に鍬を押し付けた。
「えぇ!?私もですか!?」
「なんの為に連れて来たと思ってるのよ。ここにくる時、護衛と助手をやってもらうって、言わなかったかしら?」
「ああ、言ったような気がしますな。はいはい、掘ればいいんでしょう掘れば」

Burdは私が指示した壁際の地面の土を鍬で掘り出した。
「私が横から土をスコップでかき出していくから、どんどん掘っちゃってね」
「はいはい」
Burdが鍬を持って地面を掘る?姿は始めて見たが、割と絵になってるなと私は思った。

振ってみたが、出てくるのは石ころばかり。
「何よこれ~><石ばっかりじゃない」
「石で出来た家の周り掘っているんですから石だらけなの当たり前でしょ。あ~腰にきますな、この作業は」
Burdは疲れた顔をして立ち上がり、腰をトントンと軽く拳で叩いた。
「絶対何かあるはずだってば、もう少し掘ってみましょう」
それからまたしばらく発掘作業を進めていると、Burdが何かを見つけ、驚いて叫んだ。
「貴公、見てください!何か奇妙な物が出てきましたぞ!」

「ええっ!?なになに!?」
穴を覗き込むと、赤い色をした奇妙な物が地面からのぞいていた。
????
なんだろう、やけにハデというか、目立つというか・・・。

これはきっと・・・古代の・・・古代のアーティファクトに違いないわっ!
私はその遺物を急いで掘り起こした。
「やっとみつけたーーー!これがアーティファクトよ!!古代の遺物に違いないわ!!」

私はBurdの目の前でそれを持ってみせた。
「おめでとうございます。よかったですねえ、古代の遺物が見つかって。しかし、見た目がかっこいいとはお世辞でも言えないのが残念ですな」
「・・・な、なんで泣いてるんですか?」

「うわーん、苦労してここまで来て、見つけたのがこれだなんて・・・>Д<。」
「え?それも遺物の1つなんでしょ?珍しい物を発見したんだからいいじゃないですか」
「もっと凄いのを期待してたのよーT△T。なのに、見つけたのがこれじゃあ、家に飾る気にもなれないわよっ、うわーん」
「ああ、つまり、貴公としてはもっとかっこいいのを発見したかったということですな?」
「ええ、そうよ・・・えぐえぐ」

Burdは少し考えて、優しげに話し出した。
「発見は無駄にはなりませんぞ。その手のアイテムを非常に気に入ってくれそうな人物の心当たりがあります」
「え・・・誰?」
「殿下です、お見せすればきっと大喜びですよ」
「まーくんが?」
「寺院の外にそれを飾って、眺めている殿下の姿が私には容易に想像できますぞ」

遺物を飾って眺めてる・・・。
なぜか私もその姿が想像できた。
「ええ、物凄く嬉しそうな笑顔で小一時間眺めている殿下の姿がまるでこの眼で見たかのように浮かびます」

マーティンがニコニコしながらこの遺物を・・・。
この発見はちょっとガッカリしたけど、マーティンが喜んでくれるのなら、苦労して見つけた甲斐はあるかもしれない。
「ぐすっ・・・Burd、ありがとう。お陰で開き直れたわ。発見をするという目的は達したんだから、泣く必要なんかなかったわね」

「では、もうこの探検はこれで満足ですかな」
「うん、満足よ。これも珍しい物に変わりはないから、胸を張って帰ることにするわ」
まだ周囲を探索してみたい気持ちもあったが、すっかり疲れてしまったので、今日はこれで終わりにすることにした。
また日を改めて、今度はピクニックで来てみようかな。
私達はその場を後にした。
帰りは、外の道をそのまま下っていった。

・・・すぐに最初の分かれ道の右側の道が、洞窟を通らずこの場所へ直通していたことがわかったのは言うまでもない。
終わり。
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