メイジ大学で構内をブラブラ歩いていると、急に学長から呼び止められた。
「ちょっとキミ、話があるんだがいいかね」
「なんでしょう、学長」
入学後、まともに魔法の修行をしていないので、それで怒られるのではと思ったが違った。
「Skingradの伯爵がある重要な情報を持っているそうなんだが、条件として君に来るようにと言ってきた。なぜ君を指名したのかはわからんが、伯爵は評議会にとっては大事な情報提供者だ。断るわけにもいかん。そういうわけで伯爵の所へ行ってきてくれないか」
ええっ!Hassildor伯爵が私を呼んでいる?!(・∀・)
きゃっほうー!
そうとなればすぐにSkingradに向かいますわっ。

私が二つ返事で承諾すると、学長はこう付け加えた。
「くれぐれも失礼のないようにな。なぜかわからないが君は伯爵の事となると目の色が変わるからそれだけが心配だ。伯爵から情報を聞き出したら、すぐに戻って私に話を聞かせてくれ」
学長から注意付きで用を頼まれ、私はSkingradへ向かった。
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伯爵への取り次ぎを頼み、しばらく待っていると伯爵が現れた。

「よく来たな、エセ魔術師。できれば会いたくないと思っていたんだが、利用出来る対象は君しか思い当たらず、仕方なく呼んだのだ」
人を呼びつけておいて、随分な言い方ね><
伯爵は機嫌が悪そうだった。

友好度が低いのはきっと寝起きの直後のせいなんでしょ。
私には嫌われる覚えなんてなーいしー。
「伯爵、何か重要な情報があるそうだけど、それのことで私を呼んだの?」
そうだ、と伯爵は頷いた。

「評議会の連中にとっては非情に重要な情報だ。ただし、タダでは教えられん。先に、私の為に君にやって貰いたいことがある」
伯爵は、Skingradの町のすぐ近くにバンパイアが住み着き、それを退治する目的でよそ者のバンパイアハンターがSkingradに滞在していると話した。
「やろうと思えば私でも彼らを始末するのは簡単だが、私自身がそんな行動を起こせばハンター共の注意を引くことになる。君なら奴らの両方の始末を任せられるのではないかと思ってね」
ガードなり部下を使って処理するわけにはいかないの?と尋ねると伯爵は呆れた顔をした。
「私がそんな指示をしてみたまえ。誰もが私のことを不審に思うのではないかね」
いつもならおまえはアフォかと言ってくれるのだろうが、今こちらの機嫌を損ねるのはまずいと伯爵も思ったのか、怒る様子はなかった。
「君は、私から見れば魔術師としての素質はまったくない。ゴブリン一匹倒せるような魔力もないのだからな。だが、君の忍びの技はよく鍛えられているようだ。その腕があればバンパイアどもとハンター達を何とか出来るだろう」
褒められてるのかけなされているのかわからないけど、伯爵の言葉はどんな言葉でも私にとっては嬉しいのよね。
伯爵は、洞窟に潜んでいるバンパイアを殲滅させ、ハンター達を町から追い出すようにと言った。
「ハンター達の問題をどう片付けるかは君に任せる。手段を選ばず殺してもかまわん。ただし、その際ガードに気づかれて投獄されたとしてもこの件については、君をかばうことは出来ないから気をつけることだ」
伯爵は、私に洞窟の場所とハンターの名前を教えると、奥の部屋へと戻っていった。
早速、伯爵から教えてもらったハンターがいるという場所に向かった。

町の南側の教会の辺りに行ってみると、そこにはEridorという名の小柄なウッドエルフがいた。

話しかけると、やはりバンパイア退治の為にやって来たらしいハンターのリーダーの様で、仲間はあと3人いるらしい。
見た感じ、あまり強そうには見えない。
それにどこか胡散臭さも感じる。
本当にこの人たちはバンパイアハンターなの?
私は考えた。
先に私が洞窟に入ってバンパイアを退治した方がいいのでは?
獲物がいなくなれば、ハンターたちはここにいる意味が無くなる。
そうなれば、Skingradから出て行くはずだわ。
私は洞窟へ向かった。
もちろんここの場所のことはハンターには話していない。

暗くじめじめとした洞窟に入ると、伯爵が話したとおりバンパイアが住み着いていた。

スニークで背後に近づき、慎重に一人づつ倒していく。

辺りが暗いのと、こちらのスニークレベルが高いのもあり、一撃で倒せなくてもバンパイアは私が見えないのか反撃してこない。

途中、しくじって3人のバンパイアに見つかり、同時に攻撃されたが、何とか倒すことが出来た。

彼らを倒した証拠として、遺灰を持っていくことにした。

予定通り、私の力だけで洞窟内のバンパイアは片付き、いなくなってしまった。

町に戻り、私はハンター達が滞在している宿屋に向かった。

仲間達の動きが怪しい・・・益々、彼らはバンパイアハンターなのか信じられなくなる。
伯爵は「殺してもいい」と躊躇なく言っていたのは、実は一般人ではなく、一癖ある輩達だからなのかもしれない。
私はカウンターで寛いでいたリーダーのEridorに話しかけた。

「貴方たちが捜していたバンパイアはもういなくなったわよ」

「なんだって?どういうことだ。退治したというのなら証拠を見せてくれないか」
私はバンパイアの遺灰を見せた。
「信じるしかないみたいだな。まったく、素人が余計なことをしてくれたもんだ。俺達プロに任せておけばいいのによ」
彼らは怒っていたが、私はこれでよかったと確信した。
獲物を失った彼らはいずれすぐにこの町から出て行くだろう。
私は城に戻り、伯爵との面会を取り次いでもらった。
「町を自ら出るように言いくるめたのか。宜しい、君にしては賢いやり方だ」

現れた伯爵は私の報告を聞いて喜んだ。
「これで私を悩ませていた問題はなくなった。礼として評議会への情報を君に渡そう。意味はわからなくても学長のTravenにそのまま伝えれば何のことかわかるはずだ」
私は伯爵から言付けを受けた。
内容は・・・ネクロマンサーがある計画を立てていて、それによりメイジギルドの尊厳が脅かされるとか・・・なぜか今の私にはそのことが良く理解出来なかった。
きっと伯爵の言うとおり、私に魔術師は向いていないのかもしれない。
そんなことを考えつつ、話を聞いていた。
なんだか頭がぼーっとして重い。
全身がだるく、考えるのも面倒になっていた。
とりあえずこのことを学長に伝えなければならないので、私は伯爵に礼をいい、その場を後にしようとした。
「ちょっと待ちたまえ」
珍しく伯爵が私を呼び止めた。
私はなんだろうと振り返った。

「君にしては随分大人しいと思ったら、顔色が悪いな、どうした?」
実は・・・さっきのバンパイアだらけの洞窟出た時から気分が悪くて・・・。
「それは大変だ、感染したのかもしれんな。折角だからそのまま放置してみたらどうかね?バンパイアになれば想像以上の力が手に入るぞ」
伯爵はなんだか楽しそうに言う。
その言い方は、まるで私にバンパイアになれと勧めているようだった。
でも、それだけはお断りするわ・・・。
(大変な顔になるしtt)
「完全にバンパイア化して戻れなくなった時は、私を訪ねてくるといい。多分力になれるだろう」
伯爵は、早く教会に行って祈って来ることだな、と助言を残し、奥の部屋に姿を消した。

私は、すぐに城を後にした。
いつの間にか周囲は薄暗くなり、誰もいない静かな高架橋を急いで走り抜け、町へと向かった。
夜風が気持ちいい。
このまま闇に溶け込んでしまいたい。
そんな奇妙な感情が自然と湧き出してくる。
だけど、今は闇の血の誘いに乗るわけにはいかない。
教会の扉が見えた。
私は、聖堂に駆け込み、中央の祭壇で一人、祈りを捧げ続けた。
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